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IoT時代のものづくり 「NEC Industrial IoT」

NECは、現在9工場の基幹システムを標準化し、更なるQCD強化を目的にIoT実装を推し進めています。製造現場のリアルな情報をデジタル化し、サイバーにある標準化された基幹システムにデータを上げ、その結果を見える化したうえで分析、製造現場にフィードバックします。このNECの取り組みが、成果を上げリファレンスとなり、製造業のクライアントに対してその知見を価値として提供でき、日本の製造業の更なる発展に貢献していきたいと考えています。

本稿では、まずNECが自社の強みをソリューションとして体系化した「NEC Industrial IoT」を概説したうえで、NECが自らIoT実装に取り組んだ事例とその成果について、紹介します。

1. 「NEC Industrial IoT」とは

「NEC Industrial IoT」は、「現場・現物・現状のデジタル化」「見えない・隠れた世界を見通す」「ITとOT(Operational Technology)の連携」「製品・サービスのスマート化」の4つのIoT活用ポイントに対して、NECが強みを有する画像認識・ビッグデータ分析・SDN(Software-Defined Networking)などの諸技術を活用した各種ソリューションを体系化したものです。

NECでは、「IoT時代のものづくり」において、2つのイノベーションがポイントとなると考えています。

1つは、製造工程へのイノベーション「プロセス・イノベーション」です。ものづくりのプロセスを、スマート化・ネットワーク化するという意味で「つながる工場」ともいえます。

もう1つは、提供する製品・サービスそのもののイノベーション「プロダクト・イノベーション」です。

プロセス・イノベーションでは、製造工程において、各工場の生産ラインにて収集・分析したデータを自律的制御につなげ、世界中の工場で最適な生産を実現する概念です。昨今では、データがつながる範囲が、製造工程のみならずその前工程である開発・設計、及び後工程である物流、設置・工事、保守・サービス、すなわちバリューチェーン全体に拡大しつつあります。

プロダクト・イノベーションでは、IoTを製品に埋め込むことで、製品の新たな使い方やサービスを提供し、付加価値を高めます。これによって、製品の高機能化とビジネスモデルの革新をもたらします。

次章では、IoT時代のものづくりの具体例として、「プロセス・イノベーション」、そのなかでも製造工程に焦点を当てたうえで、NECがどのようにIoTを活用してものづくりの高度化を進めているかについて、紹介します。

2.NECの取り組み

ここでは、NECが実践してきた生産革新の流れについて、概説します。

NECは、1990年代より「生産革新」「サプライヤ改革」、2003年より「デリバリ改革」をすすめ、「三位一体」の改革を実施しました。生産革新は「受注した分だけ、短いリードタイムで、出荷日・出荷時期に合わせて製造」、デリバリ改革は「複数の工場が同期・品揃えをしてお客様に納品」、サプライヤ改革は「使った分だけ後補充で調達」することです。これにより、モノと情報の流れを最適化しました。

2000年代に入ると、基幹システムを段階的に標準化・統合化する取り組みを、実施しました。まず調達・販売・会計のシステムを、次に生産システム、更には開発基盤とその領域を、順次拡大していきました。これにより、ITシステム・業務プロセスの効率化が、促進されました。

そして、2015年からは、「IoTを生産現場に実装して現場の情報をデジタル化する」こと、現場に製造指示を出しその結果を収集して基幹システムに上げる「製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)の標準化」をすすめています。これらの取り組みを連携させて、「ものづくりの高度化」の実現を図っています。本章では、この取り組みについて2点紹介いたします。

2.1 IoTを生産現場に実装、現場の情報をデジタル化することで、見える化・分析・PDCA高度化を実現

NECの関係会社であるNECプラットフォームズの福島事業所(旧NECネットワークプロダクツ本社工場)では、携帯電話の基地局装置、携帯電話の基地局間を結ぶ無線装置(PASOLINK)、デジタルTV送信機、放送スタジオ機器、産業用パソコン、衛星搭載機器、情報通信機器、アンテナなど、社会インフラ製品を生産しています。 同事業所では、2015年10月より、IoTの実装を推進しています。IoTを活用することにより、「KPIの管理と改善推進」「異常の早期発見と対応推進」「効率化・最適化」を高い次元で実現し、“ものづくりQCD”の更なる強化を目指しています(図1)。

図1 IoTの提供価値と実現ステップ

具体的には、「KPIの管理と改善推進」では、 品質や稼働状況など人・設備・製品に関する情報をリアルタイムに見える化を行い、経営層・工場のマネジメント層・現場の実務層の各階層で必要な情報を必要な時に把握することで、改善サイクルを高速で回せるようになってきました。

「異常の早期発見と対応推進」では、製造工程の異常や品質悪化の兆候などを早期にとらえることで、不具合の未然防止対応が容易となりました。例えば、設備異常では、生産後にしか分からなかった不具合を早期発見で素早い改善を実現できた事例や、品質不良につながるトラブルを事前に検出することで、未然に防いだ事例も出てきました。

「効率化・最適化」では、設備の稼働状況や人の作業の情報を、生産計画などのMESの情報とつなぎ分析することで、作業手順や段取り、リソースの配置などを最適化し、作業工数の削減と生産の効率化を可能としました。例えば、組立検査工程では、作業指示書と作業動作の内容を、音声ガイドと音声認識に置き換えることで、ハンズフリー化を実現し、品質を担保しながら作業の効率化を実現しました。また、作業実績を自動収集することで、作業動作時間のばらつき改善に応用し、QCD向上に活用できるようになりました。

表面実装部品を搭載する表面実装技術(SMT:Surface Mount Technology)工程では、物体指紋認証技術を活用することで、プリント基板にバーコードやRFID(Radio Frequency Identification)を貼付することなく、個体を識別、生産実績や品質情報を紐付けて、工程内のトレーサビリティや品質分析を行うことも進めています。

IoTの実装により、例えば、SMTラインでは2016年11月時点で20%の生産性向上を実現しました。今後は、IoTに加え、NECのAI技術「NEC the WISE」も活用し、収集したデータの分析と生産ラインの自動化・最適化を進め、2017年には30%の生産性向上を目指します。更に、高いレベルの成果創出に向け、同事業所は、今後も「KPIの管理と改善推進」「異常の早期発見と推進対応」「効率化・最適化」に対し、その価値を向上する活動に、積極的に取り組んでいきます。

NECでは、このシステムを「IoT活用標準システム」として、NECプラットフォームズ掛川事業所(ルータ・車載機器などを生産)の他、NECグループの各工場への展開を随時進めており、拠点間のノウハウ・リソースの有効活用、拠点間の生産調整の容易化など、グローバルでのQCDの競争力を強化し、より細かい顧客ニーズに迅速に対応していきます。また、本活動をパートナー企業やサプライチェーン全体へも展開し、経営者・工場管理者・現場の各層のタイムリーかつ適切な意思決定を支援していきます。

2.2 製造実行システムを標準化することで、QCDの向上を実現

NECグループでは、生産拠点ごとに最適化されていた製造実行管理システム(MES)を、統合・標準化する動きを進めています(MESの位置付けについては、図2参照)。

図2 MESの位置づけ(枠線内)

2016年5月より、NECプラットフォームズ掛川事業所と白石・米沢事業所の2つの工場で稼働しています。

ここでNECがMESの統合・標準化するうえでの狙いについて、以下6点述べます。

1点目は、「生産活動にかかわる5M*情報の一元管理」です。5Mに関する各種マスタの管理及び指示・実績情報を一元管理することで、各管理レベルに紐付く予実の情報について、経営層・工場のマネジメント層・現場の実務層といったさまざまな階層ごとに必要な情報を見える化し、問題の早期把握・解決に向けた分析を容易にします。

2点目は、「IoTと連動した製造管理の実現」です。生産設備から取得可能なさまざまな製造実績情報を、現在の状況やアラームとして見える化をすることで、問題に対するリアルタイムな解決策を見出せるようになります。また、RFID・タブレット端末・ハンディターミナルなどさまざまな現場実績収集端末の利用による、効率的な実績収集を実現します。

3点目は、「プッシュ型・プル型、いずれの生産の流れにもハイブリッドに対応する」ことです。製番・MRP(Materials Requirements Planning)と連動したプッシュ型、かんばんを利用した後補充生産(プル型)のいずれにも対応します。また、見込み生産・受注生産のいずれの生産形態にも対応します。

4点目は、「グローバル対応・マルチサイト対応」です。各国のマルチサイトの現場情報を一元化し、現場の可視化及び改善支援を実現します。

5点目は、「生産革新支援ツールとして、業務改善に追随可能とする」ことです。BOM(Bill of Materials)・工程・保管場所といったマスタを、上位の基幹システムと連携するのみならず、MESのみでも追加・変更を可能とします。また、現場革新によって工程や在庫ストックポイントが変更になっても、追随を可能とします。ストックポイント設計における、適正在庫分析などに利用可能とします。

そして6点目は、「ステップアップ導入」です。一工程(設備)に導入後、複数工程(複数設備)、工場全体、他工場展開など、ステップアップをしていきます。

本活動はまだ途上ですが、2工場で稼働した結果、「QCD担保の標準化」「生産の見える化」「トレーサビリティ基準の標準化」を実現しています。また、業務プロセスとシステムの標準化により、社内リソースを有効活用、拠点間の生産調整を容易に行うことができるなど、グローバルでのQCDの競争力強化を行い、より迅速に顧客ニーズに対応可能となりました。

  • *

    Man(人)、Machine(設備・治工具)、Material(製品・部品)、Method(作業手順)、Mesurement(測定・検査項目)。これにEnvironment(環境)を加え、「5M1E」とすることもある。

3. NECの目指す姿

以上、ここまで2つのユースケースを紹介しました。ものづくり革新、経営、SCMの業務・システムの標準化に加え、MESとIoTを連携することにより、情報の一元化を行い、サプライチェーンを強化し、スループットの向上、品質・トレーサビリティの実現を目指します。そして、ものづくりの更なる高度化につなげていきます。

参考文献

執筆者プロフィール

岡野 美樹
第一製造業ソリューション事業部 バリュークリエイション部 部長

小梁川 秀樹
第一製造業ソリューション事業部 バリュークリエイション部 主任

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