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ウェアラブルデバイスを用いた安全・安心・便利な見守りサービス

近年、IoTを活用したソリューションに注目が集まっています。IoTソリューションでは、品質/稼働管理やHEMSやホームセキュリティ分野にとどまらず、ライフケア・ヘルスケアや自動走行・運転支援システムなどへの適用も急速に広がりを見せています。また、セキュリティ対策に関してもますます重要になってきています。本稿では、これらの流れを背景としたNECのウェアラブルデバイスを活用したIoTソリューション(見守りソリューション)の取り組み状況と将来の展望を紹介します。

1. はじめに

近年、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を活用したソリューションに注目が集まっています。モノの状態を把握するためのセンサー部品の小型化・低コスト化が進んだことや、通信回線の高速/大容量化・データ量あたりの通信単価が安価になったこと、更にはAIの活用などにより分析技術が高度化したことなど、IoTを支える技術の発達がその背景にあります。

IoTソリューションでは、品質/稼働管理、製造ラインの制御やエネルギー需要予測など、製造・エネルギー分野を対象にしたものや、HEMS(Home Energy Management System)やホームセキュリティなどの家庭を対象としたものが先行しており、IoT市場の大きな割合を占めています。その一方で、ライフケア(未病/健康増進)・ヘルスケア(予防/早期発見)を対象としたものや、自動走行・運転支援システムなどへの適用も急速に広がりを見せています。産学官が連携してIoTを活用した健康・医療サービスや無人自動走行を含む自動走行の実現などに取り組んでおり、今後もさまざまなIoTソリューションが展開されていくと思われます。

金融分野においても、保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)の融合として“インシュアテック”という言葉が注目され、IoTを活用した保険商品の開発が積極的に行われています。健康増進保険やテレマティクス保険などは、被保険者の行動に合わせて低リスクの被保険者の保険料が割引になるだけでなく、健康増進や安全運転に関する被保険者の意識変革を促すような機能を有しています。また、生体情報を更に活用することで、リスクの予防・回避や発生時の負担軽減が行えるようにする取り組みも進んでいます。

IoTソリューションを導入する際のセキュリティ対策はますます重要になってきています。2017年5月30日から改正個人情報保護法が全面施行されますが、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した「匿名加工情報」の取扱規程が新設されるなど、IoTセンサーデータをビッグデータとして利活用するためには、あらかじめしっかりとした対策を講じておく必要があります。

本稿では、これらの流れを背景として現在NECが取り組んでいる、ウェアラブルデバイスを活用したIoTソリューション(見守りソリューション)について紹介します。

2. ウェアラブルデバイスを用いたIoTソリューション例

2.1 見守りソリューションで採用を予定しているNEC製ウェアラブルデバイスの機能

ウェアラブルデバイスとは、頭部・腕・身体・足などに装着して持ち運びができるICTデバイスの総称です。ヘッドマウントディスプレイ型、スマートグラス型、スマートウォッチ型、アクセサリ型、ウェア型、シューズ型など、多種多様な形状のデバイスが開発されていますが、見守りソリューションでは、そのなかでもスマートウォッチ型を用いて開発・検証を実施しています。

見守りソリューションで採用を予定しているウェアラブルデバイスは、搭載されるセンサーを通じて、脈拍・加速度・温度・湿度・位置情報など、装着する人やその周囲の状態を取得・測定することができます(図1)。

図1 ウェアラブルデバイスで取得できる情報の例

取得・測定したデータは、Wi-FiやBluetoothなどの無線を使い、スマートフォン経由でクラウド上のサーバに送信されます。また、取得・測定されたデータを、他のセンサーデータやシステム情報などと組み合わせて分析することにより、ヒトのさまざまな状態を推測することが可能となります。

また、取得・測定されたデータを分析した結果から、あらかじめ定めたルールに基づいてスマートウォッチ型デバイスを振動させることが可能です。振動機能のON/OFF、振動パターン・振動時間・振動間隔の調整機能なども有しているため、それらを組み合わせることにより、装着者に複数の情報を通知することが可能となります。これにより、作業により手が離せない状況や、第三者には通知内容を知られたくないような状況においても利用することが可能となります。

2.2 見守りソリューションを支えるNECのIoT基盤

見守りソリューションは、NECが確立したIoT基盤『NEC the WISE IoT Platform』上で提供されます(図2)。

図2 「NEC the WISE IoT Platform」の構成

『NEC the WISE IoT Platform』は、(1)効率的なデータ収集基盤とAIなどの先進の分析エンジンの活用、(2)ビルディングブロック構造による素早いシステム構築、(3)セキュアで堅牢性の高いシステム構築を可能とするものです。NECは、本IoT基盤を用いて、企業や社会インフラなど幅広い業種・業態に活用できるIoTソリューション群を拡充しており、見守りソリューションもその内の一つとして開発を行っています。

2.3 見守りソリューションの具体例

現在、NECは次のような見守りソリューションについて、お客様との実証実験や社内検証を実施しています。

(1) 運転者見守りソリューション

タクシー・バス・トラックなど、業務として運転をする方を対象とし、運転中の疲労度(眠気)を検知・通知するものです。あらかじめ定めた疲労度(眠気)しきい値を超過した際に、運転者が装着しているスマートウォッチ型デバイスへ通知(振動)を行います(図3)。運転者は通知を受けた際、軽いストレッチをしたり休憩を取ったりすることでリフレッシュすることができ、安全な運転を継続することが可能となります。また、管理者はWeb画面から運転者の疲労度(眠気)の通知履歴を確認することができるため、ドライブレコーダーやGPS情報などと組み合わせることで、運行コース上の注意喚起・見直しなど、事故を未然に防ぐための運行管理・指導に生かすことが可能となります。

図3 運転者見守りソリューションイメージ

(2) 高齢者・要介護者見守りソリューション

高齢者や要介護状態の方を対象に、「いつもと違う」状態を検出し、家族や介護者の方へ通知するものです(図4)。睡眠の状態や体表温度・心拍などを計測することができるため、通常時の平均的な値と比較することで、本人が不調を自覚していない場合などにおいても、早期に状態の変化に気付くことが可能になると考えています。家族や介護者にはメールなどで通知を行うとともに、現在の状態と過去の履歴データとの比較から類推される状態情報を、PCやスマートフォン経由で参照することが可能となります。家族が離れた場所にいても、簡易に高齢者や要介護者の状態確認をすることができます。

図4 高齢者・要介護者見守りソリューションイメージ

3. 見守りソリューションにおける考慮点と今後の展望

見守りソリューションは、人の生活行動とともに提供される付加価値サービスであり、“場所”や“時間”にかかわらず、利用者に“不快・負担”とならない提供方法が求められます。また、利用者個人の生体情報を取り扱うため、十分なセキュリティ対策を行い、“安全・安心”なサービスを提供する必要があります。

本項では、見守りソリューションを提供するうえで考慮している点と、今後の展望について述べます。

3.1 見守りソリューションの考慮点

(1) リスク予兆をタイミングよく検知・通知する

運転者の疲労度(眠気)や、高齢者・要介護者の無自覚の不調の見守りにおいては、クラウド上のサーバとの通信状況に左右されない仕組みが必要であると考えています。

見守りソリューションは医療サービスではないため、あくまで状態の推測でしかありませんが、リスク予兆をタイミングよく検出・通知できる必要があります。

(2) 日常生活上の不快・負担とならないこと

見守りソリューションはウェアラブルデバイスを毎日利用することを想定しているため、利用者が不快にならないような装着感だけでなく、使用方法に関しても極力負担にならないようにする必要があります。また、個人差や嗜好などを考慮し、複数の選択肢があることやカスタマイズできることがより望ましいです。

(3)セキュリティ対策

ウェアラブルデバイスで取得・測定される生体情報は、個人情報に紐づく重要な情報であり、慎重な取り扱いが求められます。見守りソリューションが使用するスマートフォンやウェアラブルデバイスは、紛失・盗難などの危険性も高く、万が一の場合にも悪用されることがないようにする必要があります。また、収集されたセンサーデータやその他情報を分析する際には、個人が特定されないようデータにマスキングをするなどの配慮が求められます。

3.2 NECの見守りソリューションの今後の展望

(1) リスク予兆の検知・通知は極力エッジで処理

リスク検知のリアルタイム性や通知の確実性が要求されるソリューションでは、極力エッジやデバイス上に機能を配置すべきと考えます(図5)。リスクの予兆検知・通知といった機能をクラウド上でのみ提供した場合、利用者の活動エリアによっては通信が不安定になり、機能が利用できない可能性があります。また、クラウド上のサーバに障害が発生した際や負荷が集中したような場合も、一時的な処理遅延が発生する可能性もあります。そのため実証実験では、エッジとして利用しているスマートフォン上にリスク検知・通知機能を配置することで、どのような場所でも利用できるようにしました。

図5 エッジ・デバイスへの機能配置

一方、エッジ側で高度・高速な分析を必要とするような処理には限界があります。提供する機能に応じてクラウド上のサーバで提供すべきか、柔軟に配置を見直せることが重要となります。

現在、NECでは分散処理によるリアルタイムな制御を実現するためのエッジゲートウェイの開発や、柔軟かつ迅速なポータビリティを実現するためのコンテナ技術の採用を推進しています。これらの取り組みを進めることで、“場所”、“時間”などの制約を受けない見守りソリューションを提供できると考えています。

(2) 利用可能なウェアラブルデバイスの拡充

現在、NECでは生体情報の採取と音声を届けるウェアラブルデバイスとして、ヒアラブルデバイスを研究開発しています(図6)。

図6 ヒアラブルデバイスの特徴

耳にデバイスをつけることで、「ユーザーの情報をとらえ続ける」ことと、「UIを意識せず情報取得・操作する」ことの両立を可能とするものです。また、耳の音響特性を利用した生体認証や、GPSが有効とならない地下・ビル内などでもAIを活用した地磁気による屋内位置推定が可能となるなど、ヒアラブルデバイスによって新たな見守りソリューションを提供できると考えています。

(3)生体認証を用いて利便性を確保しつつ、セキュリティ対策を強化

従来のIDとパスワードを利用した認証技術に代わり、生体情報などを用いたパスワードレスの認証技術として、FIDO(Fast IDentity Online)が注目されています。FIDOでは、生体情報がクライアント(見守りソリューションではスマートフォン)側のみにセキュアな状態で格納されており、認証の際にネットワーク上やクラウド上のサーバへ生体情報が送信されることはありません。これにより、プライバシーを保ちつつ安全なオンライン認証を行うことが可能となります。また、スマートフォンやデバイスの紛失などに備えて、暗号化対策・難読化対策やモバイルデバイス管理機能(MDM)を組み合わせて提供することで、安心して利用することが可能となります。

利用者にとってはIDとパスワードを入力する必要がなく、簡単な操作だけで認証が行えるようになるため、利便性が向上します。また、パスワードの失念や漏えいといったリスクも軽減されます。

NECは、指紋認証と顔認証では世界最高レベル1)の技術力を有しています。また、指静脈、掌紋、DNA解析、虹彩、声紋、耳の音響特性などさまざまな生体認証技術の研究開発に取り組んでおり、見守りソリューションの利用シーンに最適なものを組み合わせて利用できるよう準備していきたいと考えています。

4. 最後に

NECは、ウェアラブルデバイスを用いた見守りソリューション適用領域の拡充を引き続き推進していきます。バイタルデータを用いて従業員の健康管理やメンタルヘルスケアなどの日常生活をサポートするものや、ヒアラブルデバイスを活用して高齢者のコミュニケーション支援を行ったりするものなどを検討しています。

ウェアラブルデバイスを積極的に活用することにより、私たちの身の回りで現在起きていることをリアルタイムに把握することが可能となるだけでなく、より早く・より正確に将来起きることを予測することが可能になります。そして、それら予測を基に再び私たちの行動へフィードバックすることができるような仕組み作りを進めていきます。これら活動を通じて、人々の「安全・安心」な暮らしに貢献できるソリューションを提供していきたいと考えています。

  • *Wi-Fiは、Wi-Fi Allianceの登録商標です。
  • *Bluetoothは、Bluetooth SIG,Inc.の登録商標です。
  • *FIDOは、FIDO Allianceの商標です。
  • *その他記述された社名、製品名などは、該当する各社の商標または登録商標です。

参考文献

執筆者プロフィール

下村 純一
金融システム開発本部 プロジェクトマネージャー

後藤 文宏
金融システム開発本部 プロジェクトディレクター

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