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ロボットとAIの組み合わせによる顧客コミュニケーションの高度化

近年、人間の生活を支援するために、さまざまな場所でロボットを活用しようとする機運が高まっています。

日本では、少子高齢化に伴う労働人口の減少などから、接客や介護の現場で活用されるサービスロボットに注目が集まっています。

本稿では、サービスロボットの活用方法として、顔認証に代表されるNECの各種認証技術との連携を提案します。更に、認証技術との連携によって実現される、高度な顧客コミュニケーションについて紹介します。

1. はじめに

現在、国内のロボット市場は工場などで活用される産業用ロボットがその大部分を占めています。一方、経済産業省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の市場予測1)では、サービスロボット市場の拡大を指摘しています。予測では、サービスロボットの市場が2020年には産業用ロボットに匹敵する1兆円規模になるとしています。サービスロボットとは、人間の生活により密着し、接客・警備・福祉などで活用されることを目的としたロボットを指します。少子高齢化に伴う労働人口の減少などから、近年ではこのサービスロボットの活用範囲が広がりつつあります。

なお、昨今、ソフトウェアロボットまたはRPA(Robotic Process Automation)と呼ばれる、業務自動化を支援する仕組みの導入が広がりを見せつつあります。本稿では、こういった流れを注視しつつ、あくまでもハードウェアを伴うロボットにそのテーマを絞っていきたいと思います。

こうしたなか、2016年度にNECはサービスロボットの活用方法を検討・推進するためのタスクフォースを社内で立ち上げました。とりわけ、接客や介護で活用される人型のサービスロボットと、NECの高精度なAI技術群NEC the WISEとの連携、そのなかでも特に認証技術との連携に焦点をあて、開発・研究を進めてきました。

顔認証に代表されるNECの認証技術とサービスロボットを組み合わせることで、ロボット単体では成しえない高度な顧客コミュニケーションを実現します。これにより、今までになかったサービスや顧客チャネルといった価値を創出することができると考えています。

2. サービスロボットと外部サービスの連携

本項では、サービスロボットに高度な機能を提供する方法として、外部サービスとの連携について紹介します。サービスロボットの活用には、ロボット自身が内蔵する機能だけでなく、ネットワークを介して外部のサービスと連携させることが重要です。外部のサービスと連携させることで、ロボットが提供できるサービスの質と量を高めることができるようになります。

ロボットと外部サービスの接続には、外部サービスにより提供されるAPI(Application Programming Interface)に接続することでその機能を利用する方法が一般的です(図1)。

図1 外部サービスによって拡張される機能例

APIとはソフトウェア間の機能連携に用いられるインタフェースの呼称です。

APIは必要な時に必要な分だけ利用することができるので、複数のAPIを組み合わせて一つのサービスとして提供したり、既存のサービスに取り込みやすいのがその特徴です。

私達タスクフォースは、NECの認証技術とロボットの接続検証のため、認証技術ごとにAPIを試作しました。そして、ロボットとAPIを連携させるロボットアプリケーションを開発し、既にさまざまなロボットでの実動試験を終えています。

以降では、NECの認証技術とロボットの連携により、どのような顧客コミュニケーションが実現されるか紹介し、それらによってもたらされる価値について確認していきます。

なお、以降に記載がある各認証技術のAPIのすべてまたは一部はタスクフォースによって試作されたものであり、NECとして将来的な提供を約束するものではありません。

2.1 顔認証技術との連携

NECの顔認証エンジンであるNeoFaceとロボットの連携について説明します。顔認証技術により、人の顔の画像からそれが誰であるかを識別することが可能です。NECは1989年からこの顔認証技術の研究開発を開始しており、世界的に著名な米国国立標準技術研究所(NIST)が主催する顔認証技術ベンチマークテストにおいて4回連続で1位を取得するなど、高い評価を得ています2)

(1) 顔認証連携の店頭での活用例

金融機関の店頭に来た顧客をロボットが顔画像で特定し、1人ひとりに応じた個別の接客をすることができます(図2)。

図2 顔認証技術と連携するロボットアプリケーション

アプリケーションの動作について説明します。まず、ロボットはカメラで撮影した顔を顔認証エンジンのAPIに送信します。顔認証エンジン側では、顔画像があらかじめデータベースに登録されているものであるか照合を行います。照合は画像そのものを使用するのではなく、画像から抽出した顔の特徴を用いて行うため、高速に処理を行うことができます。こういった抽出された特徴の集まりを特徴量と呼びます。

ロボットはデータベースから顔が見つかった場合、顔に紐づけられたIDを用いてCRM(Customer Relationship Management)から顧客情報を取得します。CRM上には、NECのAI技術を用いて作成された顧客ごとの購入見込商品の一覧があらかじめ用意されています。ロボットはこれらの情報を接客に活用することができます。

また、顔画像はロボットのカメラを使用して、その場で登録することも可能です。

(2) 顔認証連携による提供価値

このように、ロボットによって顧客が誰かということを特定させると、パーソナライズされたリコメンデーションを行うことができます。また、CRM上に登録されていない顧客には顔登録を促すことで、新たな販売機会(チャネル)の獲得につなげていくことができます。

また、ロボットによる接客は、「何か購入させられるのでは」という顧客の心理的なハードルを下げる効果が期待できます。人による接客と比べ、ロボットによる接客にはこういった優位な面も存在します。

2.2 画像認識技術とロボットの連携

NECの画像認識サービスであるGAZIRUとロボットの連携について説明します。画像認識とは、認識対象のモノをカメラで撮影して、画像から何であるかを特定する技術です。

GAZIRUでは、雑誌やチラシといった静止画に加え、テレビやデジタルサイネージ上に表示される動画が認識可能です。更にこれら平面物に加え、自動車などの形が決まっている工業製品、花や料理などの形が決まっていない自然物の認識まで可能です(図3)。

図3 GAZIRUで認識可能なモノの例

また個々の製品には、人間の指紋と同じように、物体指紋と呼ばれる固有の模様があります。物体指紋を識別することで、そのモノのトレーサビリティを管理することが可能となり、個々の物品の正規品判定や個体管理に活用することができます。

GAZIRUのコア技術は海外の著名なコンテストで優れた結果を残しています。国内では2016年に、物体指紋認証技術が先端技術大賞として経済産業大臣賞を受賞しました3)

(1) 画像認識連携の活用例

GAZIRUとの連携により、ロボットのカメラに商品のパンフレットなどをかざすことで、ロボットが商品の説明を行うことができます(図4)。

図4 画像認識技術と連携するロボットアプリケーション

ロボットはカメラで撮影した画像をGAZIRUに送信します。GAZIRUではあらかじめデータベースに登録されている物体と一致するものがあるか照合を行います。照合は顔認証と同様、画像そのものを使用するのではなく、画像から抽出した特徴量で行うため、高速に処理することができます。

また、商品情報のデータベースと突合せることで、商品の詳細な情報を取得し、接客に活用することができます。

(2) 画像認識連携による提供価値

このようにロボットは、現実世界のモノを識別することにより、動的な情報を加味して顧客に説明することができます。動的な情報とは、パンフレットなどには記載されていない情報、例えば価格や在庫数などです。

顧客は、こうしたロボットから得られた最新情報を商品選択に役立てることができます。

2.3 話者照合技術とロボットの連携

NECの話者照合ソリューションでは、あらかじめ登録された音声のデータベースと、録音した非定型の音声を照合することで、誰が話しているのかを高い精度で特定することができます。

(1) 話者照合連携の活用例

話者照合連携により、ロボットはマイクで録音した音声を話者照合エンジンのAPIに送信し、誰であるかを特定することができます。

こうした音声による人の特定は、顔認証などの認証方法が使用できないようなシーン、例えば、カメラの設置環境が悪い状況などでも活用することができます。また、録音時とは異なる台詞でも照合が可能なため、自然に会話する中で照合することができます。

(2) 話者照合連携による提供価値

このように、音声から人を特定できることにより、VIPのお客様やクレーマーなどを利用者に意識させずに検知することができます。これにより、VIPのお客様には余計な手続きを省いた特別厚遇を提供するなどして、顧客満足度の向上が見込めます。また、クレーマーにはベテランの対応者を割り当てることで、問題発生を未然に防ぐことができます。

話者照合は、他の認証技術と比べ、このような特別な用途で有効な技術であると考えています。

3. 本格展開に向けた課題と対応策

ここまで紹介したように、NECのさまざまな認証技術とロボットの組み合わせにより、

1) 誰であるかを認識して最適な商品をリコメンドする

2) 現実のモノを認識して商品選択に役立つ情報を提供する

3) 利用者に意識させることなくサービスの質を向上させ、問題の発生を未然に防止する

といった新しい価値を多くのシーンで提供することができます。

一方、ロボットの本格的な展開を考えた場合、このような外部サービスとの連携にはいくつか課題があります。

(1) 認証処理の待ち時間について

例えば、第2章1節で紹介した顔認証を外部サービスとして利用した場合を例に考えます。

精度の高い認証を行うためには、顔がはっきり映ったブレの少ない画像が必要です。そのため、ロボットは利用者の顔を連続で撮影して、照合可能なレベルの鮮明な顔画像が取得できるまで外部サービスに画像を繰り返し送信します。利用者に待ち時間を感じさせないためには、遅延の少ない高速な処理が必要ですが、これら画像の転送に掛かる待ち時間は無視できません。

(2) 待ち時間の短縮方法

このような課題を解決するための方法を検討します。

まず、Wi-Fiなどの、遅延が少なく高速なローカルネットワークでロボットと接続されたコンピュータを用意します。次に、特徴量の抽出までをこのコンピュータで実施する方式を考えます(図5)。

図5 待ち時間の短縮方法

画像データと比較すると、特徴量のデータは数KB程度と、カメラ画像の1,000分の1程度となります。サイズを小さくした特徴量データのみを外部サービスに送信することで、転送処理に掛かる待ち時間が大幅に短縮され、処理全体の高速化が期待できます。

なお、このような事前処理はロボット単体で実現する方式も考えられます。

しかしながら、ロボットのハードウェア及びソフトウェアは汎用化が進んでいるとはいえ、さまざまな制約があることもまた事実です。そのため、NECでは複雑な処理はロボットの外で行う方式が適切であると考えます。

更に、ロボットは次の二つの機能を提供するデバイスとして考えます。

1) カメラやマイクなどのインプット

2) モーションやLED、スピーカーのアウトプット

その他、外部サービスとロボットを連携させるうえで念頭に置かなければならない点として、セキュリティの確保があります。有効な対策としては、通信経路の暗号化やデータの分散配置、また、各認証技術のなりすまし防止機能の拡充などが考えられます。

私達タスクフォースは、こういった解決方法を具体化するため、日々開発・研究に取り組んでいます。

4. むすび

日本が直面する労働人口の減少に対する代替労働力として、今後想定されるサービスロボットの活用例は枚挙にいとまがありません。

例えば、高齢者の介護施設における見守りやレクリエーションなどの支援は、多くの企業や自治体でその取り組みが本格化しています。

また、今後日本で開催される国際的なビッグイベントでは、インバウンド旅行者への多言語対応などが必要となってくることが予想されます。

こうしたニーズに迅速にこたえていくには、NECの技術を活用するだけでなく、さまざまな外部サービスとシームレスに連携し、取り込みが必要となります。また、お客様の保有する基幹システムとの連携も欠かせません。NECタスクフォースは、このような取り組みを実現するため、今後も活動を続けていきたいと考えています。

参考文献

執筆者プロフィール

山田 靖博
金融システム開発本部 主任

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