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第5章 グローバルITマスタープン実行のためのチームづくり

1. 業務部門とどう連携していくのか

ドメスティックにITをマネジメントする場合は、業務部門に対して縦軸で要望をかなえるスタイルでも良かったのですが、グローバルをスコープにすることで、シェアードサービスセンターとして全社横断の機能強化がITには求められます。【図12】

  • 事業モデルの明確化
  • グループシナジーの最大化
  • IT以外の要素を結びつけてビジネスの価値を語る

これらのために、業務部門と連携していくことが求められます。どのように業務部門と連携していけばいいのでしょうか。

【図12】グローバルITに必要な横串の機能【図12】グローバルITに必要な横串の機能

ラウンドテーブルに参加していたある企業では、ホールディングス会社にBRM(Business Relationship Manager)という人員を置き、各事業会社との連携を強化しています。BRM は各事業会社が実現したいビジネスをITで支援するとともに、各事業会社のビジネス要求をグループ最適の視点で見ることで、グループで共通化すべき案については、BRM自身が逆に各事業会社に調整を図っています。
事業に近い立場のスタッフが、事業に密着することで、ボトムアップで全社最適が見え、同じく事業に近い立場で調整をするのです。

2. 改革を実行するチームづくり

業務部門を巻き込んで、全社横断でプロジェクトを進める場合、プロジェクトの主体となるプロセスオーナーの存在が重要です。しかし、ラウンドテーブルの議論では、このプロセスオーナーが不明確になっている実態が多くあることがわかりました。

「ボトムアップで案件を上げて、トップや事業部門長が承認するが、実際に誰が責任を持って推進するかという、核になる部門が決まりにくい。映画で言えばまさにプロデューサーが不在の状態。」(ラウンドテーブル参加者)

経営会議で承認され、予算も執行されているが、プロジェクト完遂に必要なあらゆるリソースの投入に際して責任を持って意思決定する存在がいない。IT部門が各部門にその都度意思決定を図り、根回し型でプロジェクトを進める。
グローバルITにおけるIT部門の役割は、プロセスオーナー不在の状態でも全社横断機能を進められるためのチームビルディングにあると言えるかも知れません。
ガバナンスの権限はなく、表だって旗を振るのは似合わないが、誰よりも横串視点での明確なビジョンを持ち、ときにはプロセスオーナーをリクルーティングし、全社横断改革を引っ張っていく。そんな影のプロデューサー的なチームづくりのリーダーシップが求められます。【図13】

【図13】グローバルIT改革を実行するうえでの必要なチームづくり【図13】グローバルIT改革を実行するうえでの必要なチームづくり

3. IT部門リーダーの後継者育成

オモテの主役となるプロセスオーナーを立て、制度的なリーダーシップではなく、同志的共鳴者をチームの核にしていくことが、必要です。
そして、IT部門の中での核は次世代のIT部門トップとなる後継者です。
全社横断改革という大きなプロジェクトは人材育成の大きなチャンスでもあります。グローバルITマスタープランの人材面のロードマップにおいては、後継者育成の観点も盛り込まれている必要があります。
ラウンドテーブル参加者に自身の後継者候補が明確になっているかをお聞きしました。【図14】

【図14】IT部門トップの後継者育成について【図14】IT部門トップの後継者育成について

ほどんどの参加者が、自身の後継者が明確になっており、グローバルITマスタープランで予定されるプロジェクトの中で育成していくイメージがついていると回答していました。
また、後継者育成に必要な経験もお聞きしています。ここでは、ほぼ全員が「海外現地法人でのゼネラルマネージャー経験 <グローバル・経営体験>」を挙げていました。
海外現地法人でのゼネラルマネージャー経験は必須の経験ですが、IT部門内だけの人事では難しい部分もあります。
プロジェクト配置という形や、人事制度に影響しない範囲での社内留学的な形でグローバルでのローテーションを試みている企業が多くありました。【図15】

【図15】IT部門トップの後継者育成について【図15】IT部門トップの後継者育成について

一般にゼネラルマネージャーとしての部長層の育成は、さまざまな部門を横断した人事ローテーションが育成計画の一つになりますが、グローバルでのITマネジメントには高い専門性が求められるため、IT部門のリーダー育成には、部門を横断したローテーションが難しい場合があります。
IT部門としての専門性を高めたその先にどのようなキャリアを描くのかも議論しました。これまでの実績は必ずしもそうはなっていませんが、IT部門トップが全社横断でイノベーションを起こす立場と考えると、それは経営トップに求められる資質そのものとも言えます。

IT部長出身の社長が将来大量に輩出される時代をめざして

今年度のラウンドテーブルでは、IT部門としてのリーダーシップのあり方、チームづくりのあり方を議論してきました。業務改革の絵を描け、権限はないものの、巻き込み型で実質的なリーダーシップをとらなければならない。これは社長に求められる要素そのものと言えます。では、将来的にIT部門のトップが社長への登竜門となり得るのか。社長を輩出したIT部門がどれだけあるかを数えると、少し悲観的になります。しかし、ラウンドテーブル参加者の一人の「イノベーションを起こすもの、変革を起こすものが最後はトップに上りつめている」という発言を聞いて、IT部長出身の社長が将来大量に輩出される時代に少し明るい期待感を持ちました。

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)