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第4章 経営へITの価値をいかに説明するか

1. 欠けているのは経営の理解力かIT部門の説明力か

経営から全社横断機能の強化は求められているが、ガバナンスの権限はない。とても不安定なポジションで全社横断改革を影から仕掛けていかなければならないIT部門ですが、そもそもそうなってしまうのはどうしてでしょうか。ラウンドテーブル参加者にお聞きした結果が【図8】です。

【図8】全社横断機能の強化を期待されるが、ガバナンスの権限がない理由【図8】全社横断機能の強化を期待されるが、ガバナンスの権限がない理由

一番の理由は、「IT部門が、経営トップにわかる言葉で ITの価値を説明できていない」ですが、「経営トップが、ITを経営や業務の革新に 活用する価値がわかっていない 」という声もあります。
経営の理解力が問題なのか、IT部門の説明力が問題なのか。たしかに前者の要因も大きいと思います。しかし、コントローラブルなのは、IT部門の説明力です。IT部門の説明力を高めるためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
これを、経営への提案のアプローチと考えると、「提案の持って行き方」と「説明の仕方」の2通りがあります。【図9】
「提案の持って行き方」という点では、まずは組織的な位置づけが重要になります。IT部門の中に業務改革部門を置き、業務改革の機能を明確に持たせる方法があります。ラウンドテーブルの参加企業の中にも、IT部門と業務改革部門を一体化させて、経営戦略部としている企業がありました。
また、「情報システム政策会議」のような経営ボードも入る会議体で、IT案件を経営マターとして取り扱うのも有効です。
各事業部門と連携し、共同で提案するのも重要なアプローチです。経営に対して事業の意思として改革案を示すことになります。明確なプロセスオーナー制度がない場合でも、グローバルの経理システムの提案に対して、経理部門と共同で提案することで、本社の経理部門が実質的にグループの経理におけるプロセスオーナーと位置づけることができます。

【図9】経営への提案のアプローチ【図9】経営への提案のアプローチ

「説明の仕方」としては、ベンチマークやKPI化などさまざまありますが、どうしても定性的な説明になってしまう部分があります。これについては、各会社の経営者とIT部門との相性によって結果が異なります。

「最後は『なんとなく良くなりそうだ』という形で合意を得るしかない。経営との信頼関係を築けていれば、定性的な説明だけで承認を得られる」(ラウンドテーブル参加者)

「たとえば、内部統制の強化、決算の早期化、業務標準化が本来の経営課題としての共通認識がないため、『一般論で具体性が無い』と言われる。経営課題が明確化されていない中でのITの価値の説明は困難。」(ラウンドテーブル参加者)

という対照的な声があります。

2. IT投資のビジネス上のKPIとは

やはり定性的な部分をできるだけ定量的に説明する必要があるでしょう。この定量的ですが、ITの投資価値としてどのようなKPIを設定するかが重要になります。ITの場合、コストの削減や、スピードの短縮が主なKPIになりますが、よりビジネスに即したKPIの設定方法はあるのでしょうか。

「IT投資のKPIを、販売的な視点でブレイクダウンしていく必要がある。たとえば、ITによる営業支援で見積りの件数や訪問件数が伸びる、あるいは囲い込みとしての顧客の会員数を増やし、その会員数増加から売上が何%伸びたか、など、リアルに数値化させるべきである。」(ラウンドテーブル参加者)

と言ったように、ビジネスに直結したKPIを設定しようとしている企業もありました。
一方で、ITによる売上・利益への貢献はプロセスとして意識する必要はあるが、ITそのもののKPIについては、スピードや効率、コスト削減という観点以外では設定できないという考え方もありました。
いずれにしても、ITの導入が、どのようなプロセスで価値を生むのか、プロセスにおける価値をKPIとして具体化することは重要です。
NECでは、グローバル共通のコミュニケーショインフラとしてのグループウェアを導入しようとしていますが、目的とするワークスタイル変革で、具体的にどのようなワークスタイル変革をめざすのか、13の項目で具体的に定義し、どのようなステップでワークスタイル変革を実現するのか、ロードマップも描いています。コミュニケーショインフラの導入がもたらすワークスタイル変革の具体的な価値をKPI化しているのです。

【図10】ITのKPIがビジネスのKPIにどう結びつくか【図10】ITのKPIがビジネスのKPIにどう結びつくか

コストの削減や、スピードの短縮は、IT投資に対する直接的な効果と言えます。一方で、すべての投資は最終的にはビジネスの価値をもたらすためのものであり、ビジネスとしてのKPIが達成したかどうかが、最終的な当投資対効果と言えます。
IT面におけるKPIの達成がビジネス上のKPIにどう結びついたかが重要です。【図10】

3. 経営にITの価値を説明するシナリオづくり

IT部門の説明力としては、そのような、ITのKPIがビジネスのKPIにつながっていくシナリオの説明が求められます。
ITは、ビジネスの価値を生むためのさまざまな要素のうちの1つです。ITの要素だけで価値を生むことはできません。あるビジネス価値を生むためには、どのような要素が必要なのか、すべてを洗い出し、ITの要素とどう結びつくことで価値を生むのか、シナリオを見せなくてはなりません。

「バランススコアカードで考えた場合、内部統制を強化するという目的に対して必要な要素が4つあるとして、ITはその4分の1。これだけではダメで、他にやらなければいけないすべての要素を満たすことで目的を果たせる。我々はその4分の1の話をし、経営者は全体を見ている。IT以外のすべてのファンクションを解決しないとそこには至らない。」(ラウンドテーブル参加者)

「事業部がなんとか決算の締めを早くしたいと考えるなら、ITとして必要な部分、事業部が努力する部分、両方のファンクションを備えて経営に提案しなければならない」(ラウンドテーブル参加者)

「コミュニケーションインフラによるワークスタイル変革はITだけで成立するわけではない。総務部や人事部、法務部の施策と組み合わせていかなければ成功しない。」(ラウンドテーブル参加者)

【図11】経営にITの価値を説明する為の必要な要素【図11】経営にITの価値を説明する為の必要な要素

経営にITの価値を説明するためには、【図11】にあるように、5つの要素を備えたシナリオが必要になります。

「事業がビジネス価値を生み出すためには、さまざまなプロセスがあり、ITはその一部。そのプロセスのボトルネックをいかにつぶすかがITの役割。ボトルネックが見えるためには、プロセスすべてが見えていないといけない。そうすることで、すべてのプロセスを通してビジネス価値をもたらすシナリオが語れる」(ラウンドテーブル参加者)

ITの価値が経営価値を生むプロセスのシナリオを考える

IT投資のKPIは最終的にはビジネスのKPIに結びつくはずです。しかし、そこまでの距離が遠い、あるいは道のりが見えにくい。または、ビジネスの価値を生むまでに他の要素がボトルネックになってしまいます。
IT投資の価値を説明することは、IT投資の価値が経営価値を生むプロセスのシナリオを描くことです。価値が連鎖していくシナリオを描くことで全体のプロセスが見え、相手とも共有できます。改革のためにはマインドの共有も必要ですが、思い描くプロセスの共有も大事です。めざすゴールにどんな道筋で向かおうとしているのか。自分に見えているものを相手とも共有する。プロセスのイメージを共有できることがチームづくりにもつながります。

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)