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第4章 他部門を巻き込んだIT中期計画づくり

1. IT中期計画実行の難所

優れたIT中期計画が出来上がっているが、机の中で眠っているまま未だに実行されていない、という話を良く聞きます。優れたプランを実行させるべき、イグニッションプランとも言うべきものが必要です。
実行のポイントは以下の2つです。

  • ロードマップの中でもっとも実行難易度が高い取り組みに対する“難所越え”の対策が練られていること
  • 経営に対してIT中期計画実行の価値をいかに説明し、ステークホルダーの協力をどのように取り付けるのか、対策が練られていること

ラウンドテーブルでは、ロードマップ上の難所対策について議論しました。経営戦略の異なる各社において、実際にグローバルで取り組むIT施策として共通していたのが、グローバルコミュニケーションインフラの構築です。
具体的には、メール、スケジュール、情報共有、Web会議などを包括したグローバル統一のグループウェアを導入することです。事業間のビジネスプロセスの違いに関わらず共通化しやすいインフラ機能なのですが、実際にこれらをグローバルに展開していく場合、ユーザーへの教育、場合によっては説得などに難所があるようです。

「現場の抵抗にもっとも関係してくるのが、ツールが変わるだけなのか、ツールの変更によって仕事のやり方が変わるのか。」(ラウンドテーブル参加者)

先述したように、グループウェアのツールが変わるだけで、ワークスタイルの変革がなければ経営価値がありません。当然現場の反発も受けながら進めていかざるを得ません。
ある企業では、グループワークの導入を、これまでのシステムと比較して、大幅なコスト削減になることをインセンティブとしてグローバルの各事業会社に提示していました。

IT中期計画では、このようなインフラに関わるシステムだけではなく、基幹のシステムを標準化していくようなプロジェクトが盛り込まれます。基幹システムでは、インフラの展開の場合以上に強力なガバナンスが必要です。
グローバルで標準の基幹システムを展開しようとするプロジェクトの場合、プロジェクト全体がグループの経営トップから承認されたものであるにも関わらず、実際に展開していく際に事業会社の抵抗に会い、なかなか展開が進まないケースが多くあります。
プラン承認の際に、実行フェーズにおいて経営トップがどれだけのガバナンス支援をしてくれるのかを明確にしておく必要があるでしょう。
たとえば、プロセスオーナー制度を導入し、各業務プロセスについては、事業や地域単位ではなく、業務プロセス単位でプロセスオーナーに権限を集中させるなど、ガバナンスが働くしくみを制度として導入することをあらかじめプランの中に盛り込み、経営トップの承認を得る必要もあるでしょう。

2. 業務部門をどう巻き込んでいくのか

事業モデルの変革を考える。現場にこれまでのやり方を変更してもらうプロセスを受け入れてもらう。計画を描く時も実行する時も同様に業務部門と連携していかなくてはなりません。
ラウンドテーブルに参加する各社とも、IT中期計画策定において、業務部門を巻き込むことを重要なステップと位置づけています。

「物流部が自身でやりたいこと、経営企画へ提案したこと、経理部が言い出したこと、ものによって違うが、話し合いの場を作って仲介しているのがIT部門である。」(ラウンドテーブル参加者)

「バリューチェーンを描き、その中で物流部や、需給部、経営企画部などの各部門がそれぞれで立てているシステム案件の中期計画がマッピングされている。複数の部門が関係している部分はIT部門がまとめ役になっている。」(ラウンドテーブル参加者)

「グローバルにバリューチェーンを考える部門は需給、物流、購買と、それをまとめる経営企画部門に限られている。中期計画の中に各部門のIT案件をバリューチェーンの図で埋めたいが、特に物流はあまり考えてないので、ITからの提案をした。」(ラウンドテーブル参加者)

「ITで横串を通す機能としてはSCM委員会が別組織としてあり、こことタイアップして横串を通すようにしている。そうしないで縦に御用聞きをすると、やりたいことで部分最適のかたまりになってしまう。」(ラウンドテーブル参加者)

ドメスティックにITをマネジメントする場合は、業務部門に対して縦軸で要望をかなえるスタイルでも良かったのですが、グローバルをスコープにすることで、シェアードサービスセンターとして全社横断の機能強化がITには求められます。【図9】
現場に近いところで業務部門の要望をかなえながら、ボトムアップで見えてきた全社最適の姿を、同じく現場に近い立場で調整をすることが必要です。
ある企業では、IT部門を開発と運用に分け、運用部門は業務部門に貼りつけて、ダブルのレポートラインとしていました。運用の中で見つかった個別の問題を現場で改善するとともに、ITの全社最適の視点から業務部門に提案することを両立させているのです。

【図9】グローバルITに必要な横串の機能【図9】グローバルITに必要な横串の機能

3. 業務部門を巻き込みながらのIT中期計画策定

ラウンドテーブルでは、業務部門の中期計画づくりと連携しながらグローバルITマスタープランを策定した企業の事例が紹介されました。

【図10】業務部門の中期計画策定と連動したグローバルITマスタープラン策定【図10】業務部門の中期計画策定と連動したグローバルITマスタープラン策定

この企業では、まず経営企画と全社の中期経営計画の基本方針を確認します。それをベースに、ITとして各部門に要望する全社視点での基本方針を固めます。
たとえば「グローバル全体で管理レベルを一定にする」と言ったITの基本方針を定め、各部門の中期計画に盛り込まれるITの要素が、この基本方針と整合性があるか、という視点で、調整していくのです。
各部門の中期計画の内容をヒアリングし、IT戦略をすり合わせし、最終的に各部門の中期計画には、ITの中期計画と連動したものが盛り込まれます。
つまり、ITとしての提案はすべて各業務部門の意思として表現される形になるのです。

グローバルITにおいて全社横串で業務改革的なアプローチが必要になりますが、IT部門自身がトップダウンで進めることはできません。業務部門をうまく巻き込んでIT中期計画を策定することで、ボトムアップでの全社最適が実現すると言えます。