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第3章 グループシナジーの最大化

1. グループシナジーの生み出す価値とは何か

ITが支援すべき経営課題について少しフォーカスして見てみたいと思います。ラウンドテーブル参加企業の多くに共通していたキーワードが、「グループシナジーの最大化」というものでした。
グループ連結ではさまざまなビジネスモデルの事業体があります。すべてを横串で統一することは無理にしても、グループ全体で効率化し、あるいはシナジーを効かせることで価値を最大化することが必要になります。
それでは、「グループシナジーの最大化」によって生み出される価値とは、具体的にどのようなものでしょうか。参加者にアンケートでお聞きしてみました【図6】。

【図6】グループシナジーの生み出す価値とは何か【図6】グループシナジーの生み出す価値とは何か

もっとも多い回答は、「グローバルでの協働の促進」で、その次に多い回答が、「業務の集約化/シェアード化」でした。
ただ、これらの回答は、実際に経営から明確に言葉として示されているわけではなく、IT部門なりに、どのようなシナジーが可能かを考えた結果の回答ということでした。

「当社の場合は、グループシナジーの価値を指す具体的なキーワードは挙がっておらず、明確な意思は示されていません。『グローバル経営の推進』や『グローバルなグループ間での協働の促進』といった抽象的な言い方はされますが、具体的な形では聞いたことがありません。」(ラウンドテーブル参加者)

経営トップは、「グループシナジーの最大化」について、シナジーが何を指すのか、具体的にブレイクダウンはしないまま、IT部門に対して「グループシナジーの最大化」の実現をミッションとして求めることが多いようです。したがってIT部門のミッションは、そのシナジーが何を指すのか、定義することろからスタートします。
ただ、「製品開発など技術の転用」、「サプライチェーンの共通化」、「業務の集約化/シェアード化」、「集中購買など交渉力の集中化」という項目は、シナジーの結果としての具体的な価値を示しますが、それ以外の項目、「ノウハウの共有化」、「グローバルでの協働の促進」、などは、価値を生み出すプロセスと言えます。
「グローバルでの協働の促進」は、受注確度の向上であり、新製品投入のスピードアップにつながることで、価値を生むとラウンドテーブル参加者は考えています。【図7】

「当社では、製品開発の際に、ベースは日本で開発するものの、各国のマーケットや法制度に合わせて、素材や仕様を変えていく必要がある。その際に国をまたがって開発技術者同士が協働する必要がある。グループウェアなどを導入し、グローバルでの協働を促進することは経営価値につながる」(ラウンドテーブル参加者)

【図7】グループシナジーの価値を生み出すプロセス【図7】グループシナジーの価値を生み出すプロセス

2. 全社横断機能を強化させる役割は誰か

これらグループシナジーの最大化を実現するために、コミュニケーションインフラを共通化し、グループ全体のコミュニケーションスタルを変革する、あるいは集中購買などのしくみやシェアードサービス化を導入するなど、全社横断改革的な要素が必要になります。これらの全社横断機能を強化させるのは、誰の役割となるのでしょうか。

「経営企画部門があり、公式的には経営企画が全社横断機能を強化する役割だが、実際には機能していない」(ラウンドテーブル参加者)

「経営トップからは非公式にIT部門の役割と託されている」(ラウンドテーブル参加者)

「当社は4つの大きな事業会社を統合したが、各事業会社のトップが事業面ではシナジーを考える役割になっている。スタッフ部門に関しては、4つの事業会社のスタッフ部門を1か所に集めた。そこから自然と全社横断のシナジーを生みだそうとしている」(ラウンドテーブル参加者)

このように、結果的には全社横断機能を強化するのは、IT部門の役割となっているようです。しかし、前述したように、IT部門が表に立って業務改革的な取組みのリーダーシップをとろうとするとうまくいきません。

「経営は、IT部門に実施的に全社横断改革のリーダーシップをとることを求めている。しかし、IT部門には、全社横断でガバナンスを効かせるための権限がない。権限がなければこれ以上全社横断機能の強化は難しい。」(ラウンドテーブル参加者)

経営からはある意味全社横断改革の旗振り役を求められているが、ガバナンスの権限はない。板ばさみのような状態でIT部門が苦慮しながら、グループシナジーの最大化に努力しています。

3. プロセスオーナー不在の中でどう全社横断改革を実行するのか

ガバナンスとは言っても、たとえばメール、スケジュール管理、Web会議などのコミュニケーション機能などのグループウェアやセキュリティ、ネットワークなどの標準化は、純粋にITガバンスの問題です。
しかし、会計システムの標準化、シェアード化など業務プロセスに関わる部分、販売・購買の標準化などサプライチェーンに関わる部分は、プロセスオーナーが明確でなければ全社横断改革は進みません。
このような全社横断の改革に対して、プロセスオーナー制度をひいている企業では、たとえば会計や販売の業務プロセス標準化では、グローバルのプロセスオーナー、国内のプロセスオーナー、事業ユニットのプロセスオーナーと、各オーナーが、ガバナンスの責任を持ってプロジェクトを進めます。しかし、ラウンドテーブルに参加する多くの企業では、プロセスオーナーの制度がありませんでした。

「当社の場合、経営の合議制でプロジェクトが決まる。決裁上のプロジェクトのオーナーは一応決まっているが、実質的にはオーナー不在になっている」(ラウンドテーブル参加者)

「建前上プロセスオーナーのような制度は作り、経理、購買、品質は明確に責任部署があるが、販売については、事業部がたくさんあるので、誰がプロセスオーナーなのかはっきりしない。結局システム部がオーナーとなりました。また、会社単位ではなく、グループで見たときに誰がオーナーになるのかが難しい。」(ラウンドテーブル参加者)

プロセスオーナー不在の中で、いかにして全社横断改革を進めるか。何らかのトリガーを利用してプロセスオーナーを仕掛ける考え方も必要になってきます。
ある企業では、経理や人事・購買業務部門にITサービスを提供するために、業務部門からIT部門に人材をアサインしてもらい兼務にしていますが、その人材リソースが不足してきたことによってシェアード化の拍車がかかりました。

「経理については、中国で関係会社が多くなり、コーポレートガバナンスを効かせるために、中国に派遣する要員が必要になったことで、ITに人材を回せなくなった。そこで、経理がプロセスオーナーとしてシェアードサービス化の重い腰が上がった。」(ラウンドテーブル参加者)

IT部門が表に立った旗振り役ではありませんが、プロセスオーナーを担ぎあげる。プロセスオーナーをプロデュースするという役割が、全社横断機能強化としてのIT部門の重要な役割のようです。

グループシナジーの最大化が、集合知としてビジネスの価値を生むためには

「グループシナジーの最大化」というキーワードはとても重要で魅力的に見えますが、抽象的な概念でもあります。「サプライチェーンの共通化」、「業務の集約化/シェアード化」、「集中購買など交渉力の集中化」などは、リソースの効率活用という観点で経営価値がわかりやすくなります。ただ、シナジーと言えば1+1が3以上になるという、事業価値そのものの増大を期待します。そういう意味では、前述したように「グローバルでの協働の促進」によって、製品開発のクオリティが向上するといったシナリオは、事業価値そのものの向上を強くイメージさせます。
一方で、シナジーの最大化は集合知による価値であるとも言え、主体がわかりにくくなり、プロセスオーナーが明確に絞り込まれない、という状況も生みます。これがIT部門の苦労するところです。縦軸でのオーナーの顔が見えない中で、「全社横断の総意」というオーナーをつくり出すIT部門のコーディネート力が求められます。

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)