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第2章 ITの役割を具体化する事業戦略とは

1. 経営モデルから事業モデルへのブレイクダウン

実際にグローバルでの成長戦略を実行していくためには、事業戦略が重要です。事業戦略によっては、オペレーションやマネジメント、場合によってはビジネスモデルさえ変わることがあります。
特に日本のグローバル企業は皆、5年間で海外売上高比率を2倍にするなどと言ったドラスティックな目標を掲げています。オペレーションやビジネスモデルにも大きな変革が予想されます。オペレーションを支援するITも大きな変革が必要でしょう。
グローバルITマスタープランのフレームワークでは、経営モデルとITモデルの間に、事業モデルを置いており、ますは事業モデルを明確にしようとしています。【図3】

【図3】グローバルITマスタープランのフレームワーク【図3】グローバルITマスタープランのフレームワーク

事業モデルは「ビジネスモデル」、「オペレーションモデル」、「マネジメントモデル」の3つの視点でとらえ、これらの3つの具体的な姿がITモデルのインプットと考えています。
本来事業モデルは、事業側が考えることです。事業モデルを明確にするためには、事業側で将来的に事業モデルがどのように変革すると考えているのか確認する必要があります。
ラウンドテーブル参加者もまずは事業に事業戦略を確認するところから始めています。

「当社のITは、経営戦略と事業戦略を実現するものである。経営戦略は漠然としているため、各事業本部で実現したいことをIT部門としてはターゲットとして絞っている。IT中期計画では、経営戦略と事業戦略を併記している。」(ラウンドテーブル参加者)

「当社の場合、経営戦略と事業戦略が一致している部署もあれば、少し離れている部署もある。IT部門からすると、我々は事業戦略を支援していくので、経営戦略との繋がりは事業本部で担保してくださいと多少言い訳にするところがある。」(ラウンドテーブル参加者)

しかし、実際には事業側でも事業モデルの変革の姿は明確になっていないようです。

「事業側では正直言って、将来的なビジネスモデル、オペレーションモデルの変革を考えられていない。」(ラウンドテーブル参加者)

「中期計画の中ではオペレーションモデルやビジネスモデルまで事業部は具体的に落としてこない。そのため事前に話をして、ITに何をして欲しいのかを引き出しそうとしているが、これで本当に経営に貢献できているのか、非常に不安である。」(ラウンドテーブル参加者)

大胆な経営目標の実現が、今のビジネスモデル、オペレーションモデルの延長線上で実現するとは思えません。少なくとも、ビジネスモデル、オペレーションモデルの変革を想定しながら、ITモデルを考えなければなりません。

【図4】事業モデルの変革がITモデルを決定する【図4】事業モデルの変革がITモデルを決定する


2. IT部門が事業モデル変革を描くことができるのか

IT部門として事業モデルの変革について考える場合、アプローチは3種類あります。

  • IT部門が事業モデルの変革を描き、仕掛ける
  • 事業モデルの変革を想定し、仕掛ける
  • 事業モデルの変革を想定して準備しておく

IT部門が事業モデルの変革を描けるかですが、本ラウンドテーブルの議論でも、これまでITの果たす役割の1つとしてITによる事業価値の向上というテーマで議論してきましたが、事業モデルまでも創造するのはなかなか難しいというのが参加者の正直な感想です。

「今のビジネスモデルやオペレーションをする中で、無駄やおかしい点に気づくのはIT部門である。だが、新しいビジネスモデルをIT部門が提案するのは難しい。」(ラウンドテーブル参加者)

「IT部門として本当にビジネスモデルを描けるかには、いささか疑問がある。たとえばサービスや商品を差別化するためにITが使われるのであれば良いが、それはビジネスモデルそのものの改革である。」(ラウンドテーブル参加者)

「素材、化学、製薬などでは、ITを導入すれば確実に売り上げが上がるというものはない。ただ、売り上げを上げるであろうIT施策はある。」(ラウンドテーブル参加者)

「BtoCの場合、ビッグデータで不具合情報のつぶやきや書き込みから、将来の様々なクレーム処理などを先に予測し、上手く対処できるかもしれない。」(ラウンドテーブル参加者)

では、事業モデルの変革を想定することはできるのでしょうか。環境の変化によって迫られるビジネスモデルの変革、大胆な成長のために必要なオペレーションモデルの変革、成長を推進する組織のマネジメントモデルの変革、経営目標達成の過程で必然的に起こり得ることは想定できそうな気がします。
ラウンドテーブル参加者に、想定される事業モデルの変革と、それに伴うITモデルについてお聞きしました。【図5】
大きくは、「市場の変化」、「サプライチェーンの変化」、「ワークスタイルの変化」が想定されます。これらに対して、ITモデルとして、「アプリケーションの標準化」、「コードの標準化」、「オンプレミスの排除/クラウド化」、「グローバルセキュリティ」、「グローバルでのIT統制」という要素が必要になってくると思われます。

【図5】想定されるビジネスモデル、オペレーションモデルの変革【図5】想定されるビジネスモデル、オペレーションモデルの変革

3. IT部門が事業モデル変革の旗振り役となれるのか

前述のように、ビジネスモデルやオペレーションモデルがどのように変革していくのかは、想定できています。想定できるものに対する準備は可能ですが、想定通りのことがいつ起こるのか、時間軸がはっきりしないと正確な準備はできません。もっとも確実な方法は、想定できていることに対しての実行のスケジュールを描くことです。
せっかく事業モデルの変革が想定できているのであれば、IT部門が、旗振り役となって、事業モデルの変革を仕掛けてもいいのではないでしょうか。

「本来、単一事業部の中ではできなかったことを、IT部門が調達や物流などに横串を指すことによってコストダウンや物流経費の削減につながる。」(ラウンドテーブル参加者)

「IT部門は、横串を指す部分は見えているが、なかなか旗振りはできない。誰が旗振り役をやるかがポイントである。」(ラウンドテーブル参加者)

このように、事業モデルをどう変革すべきかは見えているものの、表に立った旗振り役は難しいと皆考えています。それはなぜでしょうか。

「旗振り役は、トップダウンでやらなければ無理だと思う。経営にビジネスモデル、オペレーションモデル変革の価値を説明するのが IT 部門の役割である。」(ラウンドテーブル参加者)

「経営企画部が改革と言うとみんなついて来るが、IT企画部がそれを言っても誰もついて来ない。ITの貢献は、業務部門がそのシステムを使って効果を出してもらうことであり、そうしないと、本当の業務改革はできない。」(ラウンドテーブル参加者)

「今、グローバルのIT戦略を作っているが、IT部門だけでまとめると誰も聞いてくれないので、海外事業本部や経営企画部と共同でIT戦略を作り、経営企画部の名前で仕掛けていくことで統制が可能になる。」(ラウンドテーブル参加者)

ひと言で言うと、IT部門が表に立って旗を振るには役不足ということのようです。少し寂しいですが、経営企画部門など、変革を語るにふさわしい役者に表の主人公になってもらうのが現実的には効果的なようです。

「5年後、10年後にIT部門のステイタスを上げていきたいが、今は正直まだまだという現実がある。ネームバリューがある部門の力を借りながら、うまく巻き込んで、IT戦略を周知、徹底させていく戦術を取っている。」(ラウンドテーブル参加者)

IT部門は、言ってみれば影のプロデューサー。そうやって変革の実績を積み重ねることで、いつかは影から表舞台に出たいものです。