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第1章 グローバルITへの経営の期待

グローバル企業としての経営課題

グローバルITは、グローバルのビジネスに貢献するためのものです。昨年度公開したCIOラウンドテーブルのレポートでも、ITのモデルを考えるインプットとして、経営モデルを置き、経営目標、経営戦略がどのように描かれているのかをまずは明確にしようとしました。
経営モデルは1社1社違います。参加者に、経営の中期計画で重点方針とされているものは何かをお聞きしました。【図1】

【図1】中期経営計画の中で重点方針となっているもの(複数回答)【図1】中期経営計画の中で重点方針となっているもの(複数回答)

「先進国市場から新興国市場へのシフト」、「生産効率の向上によるコスト競争力の強化」、「グローバルでの業績管理徹底によるグローバルマネジメントの強化」がグローバル企業共通の課題となっているようです。

「昨年に策定した中期計画では、成熟した商品を新興国にどうシフトしていくか、伝統的な生産プロセスを効率化し、いかにコストを下げられるか、この2つが大きな柱になっている」(ラウンドテーブル参加者)

「2013年からスタートする3ヶ年の中期計画では、グローバルレベルでの経営情報の迅速な収集と高度活用が重要なテーマになっている」(ラウンドテーブル参加者)

新興国市場へシフトするということは、単純に新市場の開拓という意味だけでなく、先進国でのビジネスとは異なったオペレーションが求められます。競争の激しい市場に対して素早い拠点の立ち上げを実現し、しかも低コストでのオペレーションが必要となります。
当然、ITとしての要素にも大きく影響します。グローバルITマスタープランでは、これらの経営モデルに対して最適なITモデルを考えなければなりません。事業構造の変化、オペレーションモデルの変化に対応していかなければならないのです。

2. 経営はITに期待しているのか

それでは、そのような経営モデルに対して、経営はITにどのような期待をしているのでしょうか。具体的な要望が経営から出されているのでしょうか。

「アジア市場が伸びていく中で、現状10%台の海外比率を倍以上に伸ばすことが経営の目標。それを実現するためにITによる貢献を期待されている。」(ラウンドテーブル参加者)

「グローバルでの業績管理徹底によるグローバルマネジメントの強化という点では、まだ経営の数値情報をある程度タイムリーに得られれば良いというレベルだ。今後経営の戦略にITがどう貢献できるか検討している段階。」(ラウンドテーブル参加者)

「外国人のトップマネジメントはITに対してかなり具体的な要望を出してくるが、それと比較して日本人のトップマネジメントは、ITに対する要望は曖昧なことが多い」(ラウンドテーブル参加者)

このように、中期経営計画の中で重点方針となっているものに対して、ITの貢献を経営は求めていますが、具体的にITによるどのような貢献が必要なのか、そこまで噛み砕いた要望は出ていないようです。
一方で、抽象的なキーワードではありますが、ITに対して経営側から明確なミッションを明示する企業もあります。その場合も、キーワードの意味を咀嚼して、ITの役割を具体的にブレイクダウンする必要があります。

「当社では『経営情報の高度活用』がITに対するミッションになっている。ただ、何を持って『経営情報の高度活用』なのかまでは明示されていない」(ラウンドテーブル参加者)

「グループシナジーの最大化が経営の重要なキーワード。ITのミッションは、コミュニケーションのインフラづくりなどでこれに応えることであると解釈している」(ラウンドテーブル参加者)

3. グローバルITとしての取組み事項

経営の期待は具体的なITサービスの要求ではありません。経営目標を達成するための重要成功要因として経営が示している「経営情報の高度活用」、「グループシナジーの最大化」と言った状況を具体的に定義し、それを実現するためのITサービスを提示しなければなりません。
各社個別の戦略に合わせたIT施策は当然必要ですが、グローバル企業に共通の経営課題に対するITの備えも必要です。
グローバルITでの支援が必要となるであろう経営課題に対して、各社がどのように取り組もうとしているのかお聞きしました。【図2】

【図2】共通の経営課題に対するグローバルIT施策の取組み状況【図2】共通の経営課題に対するグローバルIT施策の取組み状況

「コミュニケーションインフラの整備」、「見える化」といった項目では取組み状況が進んでいるようです。これらは支援すべきIT施策がフォーカスされます。一方で、M&Aというテーマは日本企業にとって重要な経営テーマですが、ITとしての施策は具体的にはどのようなものになるのでしょうか。
PMI(Post Merger Integration)にどれだけのコスト、工数がかかるかを想定しておくだけではなく、買収した直後にスムーズに事業継続させるために、ITサービスを切れ目なく供給していく体制をつくっておかなければなりません。
たとえば、事業部門買収の場合、ITサービスが買収先企業の親会社からシェアードサービスで提供されている場合、自社システムへ移行するまでの期間、引き続きシェアードサービスの提供を受けざるを得ないことがあります。そのときに交渉次第では、膨大なランニングコストを抱え込むことになり、M&Aが高い買い物になりかねません。これを適正な価格に抑えることは、M&Aの買収価格そのものに影響を与えることになります。

「新体制に移行した時点からITをどうするのか、契約書の中に明記しておかなくてはいけない。たとえば、事業部を切り離して買収する場合、引き続き元のシェアードサービスを利用しようとすると、今までは3,000万円だったシェアードサービス費用が、年間3億円に吹っかけられることもある。」(ラウンドテーブル参加者)

「デューデリジェンスの段階でコミットし、現場のビジネスを継続しながら、シナジーを創出できるよう、相手の戦力・資産・方針を見極め、M&Aチームに対して、IT領域での見るべきポイントを指示するのが我々の役目。」(ラウンドテーブル参加者)

M&Aに積極的な企業は、さまざま経験を通して、M&Aのデューデリジェンスに必要な手順のノウハウを蓄積してきています。これこそは、M&Aというグローバルビジネスの重要なテーマへの貢献にほかなりません。

重点方針をITの貢献にブレイクダウンすることがIT部門の役割

中期計画における経営の重点方針は、いずれもオペレーションの大きな変革を伴うものです。経営者は、結果だけを求め、プロセスを細かく指示することはありません。その結果を導き出すプロセスをいかに描くかがIT部門の役割です。
また、経営価値を抽象的なキーワードで示すこともあります。「経営情報の高度活用」といったキーワードは、無限の可能性としての経営価値を示しているものですが、具体的な要件が示されているわけではありません。経営者がイメージする経営価値を具現化して見せることもIT部門の役割です。この役割を認識することが、グローバルITマスタープラン策定の第一歩と言えるでしょう

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)