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第5章 めざすべきグローバルITの経営価値は


1. 考慮すべきグローバル経営課題の新しい要素

各社のグローバルITマスタープランを通して見えた「日本発グローバルITのめざす経営価値」とは、以下のような要素であると考えます。

  • 急激に成長する新興国でのビジネス(オーガニック、M&A)をITで支える
  • 経営インフラ整備により先進国・新興国の各事業や買収企業の経営を見える化する
  • 先進国(日本、M&A企業)の強みを競わせ、チャンピオンのベストプラクティスをグループ・グローバルに展開する
  • マーケティング、商品開発、販売物流、サービスなど地域固有性、事業固有性が高い業務は敢えて標準化せず各国の自律性を許容する一方、ダントツ化しない業務はグループ内シェアード化・外部BPO化を促進し、間接費を下げる
  • クラウド、ブロードバンドモバイル、スマートデバイス等、各国で社会インフラ化した外部ITを取込み、多様なワークスタイルと協働を可能にする
  • 業務・ITの標準化により迅速なM&A、組織再編を可能にする


一方、ラウンドテーブルの議論を通して、グローバルITマスタープラン策定において考慮すべき、今後のグローバル経営のキーとなる要素が新しく見えてきました。

  • コングロマリットの日本型経営では各事業のアセット(パテント・技術情報、人材、顧客のニーズなどの無形資産も含む)をシナジーで使いきるグループ経営が重要になる
  • 現場での地産地消の考えが強く、非標準化、現地化が鍵になる一方で、個人技を組織能力に転換するための業務プロセス可視化が必要になる
  • IT部門から治外法権であったR&D領域で、ITを活用した、グループ技術経営や企業を超えたオープンイノベーションへの期待が高まっている
  • ITによるビジネスモデル変革、コマツのKOMTRAXのような、情報自体による本業価値の向上が期待される
  • 見える化の前提としてマスタ標準化とKPIの定義が課題となり、非構造化BigDataも期待される

激化するグローバル競争に打ち勝つためには、M&Aなどを活用し、グローバルな経営基盤を急速に強化することが必要になります。そのような中、アセットの統合や標準化はいっそうハードルが高くなります。統合するよりも、シナジーを考えることが必要です。

一方で、個別分散されている知を組織の知へと結びつけるしくみが必要になります。

オープンイノベーションのしくみは、ITによる事業価値の向上の具体的機能として位置づけられるでしょう。

2. 必要とされるITモデル

このような要素に対して、価値を提供するためのグローバルでのITモデルでは、以下のような点が盛り込まれていなければならないと考えます。

ビジネスモデル、オペレーションモデルが明確にされている

経営モデルで示したToBeにITモデルがリンクするためには、経営モデルを実現するビジネスモデル、オペレーションモデルを明確にしなければなりません。たとえば、新興国のビジネスにおいて、先進国と同じような販管費比率のオペレーションでいくのか、販管費比率を50%ダウンで考えるのかによって、ビジネスモデルもオペレーションも異なり、ITが支援する領域も異なってきます。

事業戦略に沿った、ビジネスモデル、オペレーションモデルがまず明確にされている必要があります。そして、グローバルITマスタープランのフレームワークもそれらの要素を盛り込み、経営モデルとITモデルが、どうリンクするのかが説明されものになるべきでしょう。【図10】

【図10】ビジネスモデル、オペレーションモデルも盛り込んだグローバルITマスタープランのフレームワーク【図10】ビジネスモデル、オペレーションモデルも盛り込んだグローバルITマスタープランのフレームワーク

グローバルで何を「見える化」するのかが定義されている

経営データの見える化の対象をどうとらえるのかによってITモデルは異なってきます。どの階層が、どのような意思決定のために経営データを見て、どのようなアクションを取るのか。それによって見える化の対象となる経営データと、見える化の粒度が定義されます。ITモデルでここが定義される必要があります。

新興国に対するITサービスメニューが明確にされている

新興国での事業展開をスピード化するために、ITの新興国スターターキットのような概念が必要であると議論されました。ITモデルでは、この内容を具体的にITサービスメニューとして落とし込む必要があります。ネットワークやサーバ・インフラだけを対象にするのか、アプリケーション・レイヤーでは、どの地域のどのアプリケーション・レイヤーまでサポートするのか、これらをメニュー化する必要があります。

 

PMI(Post Merger Integration)へのITの対応が明確にされている

企業のM&A戦略はITの標準化を待ちません。ビジネススピード優先で次々と発生するM&A案件に対して、ITがどこまで支援をするのか、方針が明確に定義されてなければなりません。ITが制約条件にならないためには、M&A案件に対するITの支援方法をいくつかのオプションに分類して定義しておく必要があります。

組織知を有効に活用する非ITのしくみが明確にされている

組織知を活用するしくみや、オープンイノベーションの概念は過去からありました。そして、それらを実現するITツールも既にあります。必要なのは、組織知を有効に活用するノウハウなど、非ITのしくみです。ITツールがSNSに変わっただけでは解決になりません。

組織知を有効に活用する非ITのしくみがセットになっていなければなりません。

 

グローバルITはスピードとの戦い

今回、「共に創る”日本発”グローバルITマスタープラン」をテーマに議論してきました。ラウンドテーブルの中で実際にグローバルITマスタープランを策定するという試みも実施し、参加各社に形ある成果を残すことができました。

しかし、グローバルITマスタープラン自体は目的ではありません。何度も言うように、グローバルITによってもたらす経営価値こそが目的です。

グローバルでの競争は激しさを増すばかりです。今こうしている間にも、グローバルでの市場シェアは移り変わり、より速い、ドラスティックな戦略によってのみ、生き残った企業がグローバル市場を制します。

この競争のスピードとともに、求められる経営価値もどんどん変わっていくのです。

今回、2017年~2020年をゴールにToBeとロードマップを描いてみました。経営の中期目標は大きくは変わらないかも知れませんが、それまでの間に、確実に市場環境は変わり、ITの技術も進化するでしょう。2012年現在で求められる経営価値と来年以降で求められる経営価値がどう変化するのか、またそれを実現するITの技術がどう進化していくのか、すべて予測の範疇にあるとは言い切れません。「新興国」という概念もまた、2017年には変わっている可能性は高いことでしょう。

いずれにしても、グローバルITはスピードとの戦いです。今現在思い描いたプランを、いかに速いスピードで実現するか。そして変化する環境に合わせて、いかに最新のプランに常に描き変えていくか。

変化するグローバル市場の中での経営モデルの変化を敏感に察知し、常に最新のグローバルITを描ける企業だけが、グローバルで生き残っていくのだと思います。

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)