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第3章 グローバルITマスタープラン策定の取組み


1. グローバルITマスタープランのフレームワークはどうあるべきか

前述したようなモデルをベースに、実際に各社のグローバルITマスタープランづくりに取り組むことに議論は発展していきました。

各社、グローバルをスコープにしたITの中長期の計画は当然のことながらつくっています。しかし、経営モデルを定義し、その経営モデルにリンクさせてITモデルのToBeと具体的なロードマップを描いている企業は少数のようでした。

 

「当社では、イベントドリブンで、グローバルにITを今後どう整備していくかを描いた計画はあるが、経営の中期目標に照らし合わせて、ITのToBeとロードマップを具体化したプランはない。」(ラウンドテーブル参加者)

 

「グローバルITマスタープランの標準的なフレームワークなど見たことがない」(ラウンドテーブル参加者)

 

グローバルITマスタープランを策定するうえでは、マスタープランのフレームワークが必要になります。しかし、各社との議論の中で、標準的なフレームワークというものがないこともわかってきました。そこで、主催者側でフレームワーク作成に取組み、下記のように、マスタープランのフレームワークを作成しました。【図9】

【図9】グローバルITマスタープランのフレームワーク【図9】グローバルITマスタープランのフレームワーク

2. 経営モデルとITモデルをリンクさせたフレームワーク

本フレームワークでは、2017~2020年をToBeのゴール地点とし、現状の姿、ゴール地点のありたい姿、そこに至るロードマップを、経営モデル、ITモデルという軸で落とし込もうとしています。

グローバルITが提供する経営価値とは、グローバル経営の中期目標を実現する重要成功要因そのものであるべきです。したがって、本フレームワークでは、まず、経営の中期目標とグローバル経営のテーマを確認し、経営モデルとしてのありたい姿を明確にします。そして、経営モデルを実現するためのITモデルを要素ごとに明確にしていきます。

 

各社のグローバルITマスタープラン策定では、まず経営の中期目標とロードマップを確認する作業から始まりました。

実は、経営の中期目標に沿った事業戦略のロードマップは、必ずしも明確にはなっていません。そのため、IT側としては、経営がToBeで描いた姿を実現するためには、どのようなIT環境が整備されていないといけないのか、また、その過程で、ITが深くコミットすべきどのような経営イベントが発生するのか、さまざまにシミュレーションしながら、ITモデルを模索していくことになりました。

 

また、ITの果たす役割という項目を設け、以下の3つに定義しました。

Level 1   ITのデリバリー

Level 2   ITによる業務プロセス変革

Level 3   ITによる事業価値の向上

 

ITの役割は、業務部門から要求のあるシステムの構築と安定運用だけではありません。基幹業務システム開発に際して業務プロセス改革に踏み込む、あるいは、ITによって競争優位を生みだすしくみを提供し、事業価値向上に貢献する、という領域まで期待されるべきです。

これらは、時間の経過とともにLevel1からLevel3へと役割が自然に変化していく、というものではありません。IT部門自身が今後どこに軸足を置いていくのかを明確に定め、それにもとづいてIT部門のミッション、ビジョン、バリューを定義して宣言することで、ITが提供する経営価値のあり方が変わり、IT部門の存在意義も変わってきます。

めざすIT部門の姿への羅針盤とも言えます。

 

3. グローバルITマスタープラン策定における気づき

ラウンドテーブルでは、このフレームワークに沿って、各社に実際にグローバルITマスタープランを策定していただきました。

グローバルITマスタープラン策定に際しては、NECのスタッフが、直接参加企業のもとを訪問し、計3回のワークショップを通じて、グローバルITマスタープラン策定を支援させていただきました。

 

この作業は、参加企業にとっても大きな気づきを与えたようです。

 

「Mission, Vision, Valueを再定義する良いきっかけになった。年始に、国内外の関連会社のIT関係者に向け、この新しくつくったMission, Vision, Valueを盛り込んだニュースレターを送信した。」(ラウンドテーブル参加者)

 

「およそ2年前に、外部コンサルタントを使い、膨大な時間と工数をかけてIT中期計画を作成したが、今回のマスタープラン作成に伴い、以前作成したIT中期計画の中で曖昧なままになっていた領域に再度取り掛かろうという機運が高まった。」(ラウンドテーブル参加者)

 

「実は、当社はグローバルOne型をめざしていたが、今回のマスタープラン策定を機に、連邦型へ路線を切り替えた。以前より、連邦型へ舵を切る必要を感じていたが、マスタープラン策定が良いきっかけになった。」(ラウンドテーブル参加者)

 

「当社では2017年に向けた長期の情報化戦略を作成しており、それをこのフレームワークに落とし込んでみた。落とし込み作業を行うことで、全体像の把握が可能となった。今回作成したマスタープランは現在欠けている領域を把握するために利用できる。経営層に説明するためには、今回作成したマスタープランの方が説明しやすいだろう。」(ラウンドテーブル参加者)

 

「マスタープランの策定には、若手も参加させ、彼ら自身も良い整理ができたことは、大きな成果だった。」(ラウンドテーブル参加者)


経営モデルとITモデルをいかにリンクさせるか

標準のフレームワークというものがない中で、共通のフレームワークをもとに各社がグローバルITマスタープランを策定するという、試みを今回初めて実施しました。

既になんらかの形でITに関する中長期の計画は各社作成しています。しかし、そこに不足していた要素は、経営目標実現のためのITという要素です。システムライフサイクルの観点から想定されるITイベントを時間軸に並べることはできますが、それは必ずしも事業戦略上の経営イベントとリンクしたものではありません。

経営がめざす姿、経営目標実現のロードマップに合わせてITをいかに整備するか。実は、そのようなフレームワークが存在しないことが新鮮な驚きでした。グローバルでのITマスタープランを策定する、という作業自体がIT部門の進化に結びつくことを実感しました。

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)