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第2章 日本発グローバル企業がめざすグローバルITの姿とは


1. ITモデルを考える基本的なフレーム

これまでの議論を通して、各社にとってのグローバルITのToBeを描くうえで、以下のようなキーワードが共通の課題として見えてきました。

 

  1. 自社にとってのグローバルITの目指す姿を明確に描けている企業は少数
  2. グローバルITのスタイルはグローバルOneでの「中央集権型」か?「連邦経営型」か?
  3. 新興国へのビジネス展開支援のために、早く、安くスモールスタートでき、撤退可能なITをワンセットで揃えたい
  4. M&Aへの対応を通常イベントとして対処できる準備が必要
  5. 製品・事業の競争優位を高める本業+ICTを検討していきたい
  6. 新たにやるべきことは多いが、現状の権限・リソース・スキルにギャップが大きく、新たな領域に踏み込みきれずにいる
  7. 経営にリソースを要求したいが、大義名分を描ききれていない

前述のように、グローバルITのToBeは決して一つのものではありません。しかし上記のキーワードが、日本発のグローバル企業に共通するグローバルIT経営の課題であるとすれば、この課題に応えたグローバルITの共通モデルを考えられるかもしれません。

ラウンドテーブルでは、日本発のグローバル企業に共通する、グローバルIT のToBeモデルを考察してみました。

ITモデルを検討する際に、ITガバナンス、IT組織、ITアーキテクチャという3つの視点でどのようにマネジメントしているかを以下のように分類した、基本的なフレームを考えました。【図5】

 

【図5】ITモデル検討の基本的なフレーム【図5】ITモデル検討の基本的なフレーム

欧米の先進的なグローバル企業をベンチマークに考えると、

  • AAAモデル(中央集権型×グローバル統合組織×Oneモデル)

のグローバルOne型が主流となります。

 

2. 分権型からグローバルOneと連邦型へのITモデルの発展

欧米の先進的グローバル企業をベンチマークしてとらえた場合、売上規模が大きく、海外の売上高比率が高くなるほど、グローバル規模での集約の動きが強まると考えられます。

この分析をラウンドテーブル参加企業にあてはめ、【図6】のようにITモデルの推移の仮説を描いてみました。多くの企業は、分権型のCCC/CBCモデルに該当します。

 

【図6】海外売上高/海外売上比率におけるITモデルの推移の仮説【図6】海外売上高/海外売上比率におけるITモデルの推移の仮説

今後海外売上高比率を高めていく方法として、欧米を中心とした大規模M&Aなどでコングロマリット的に規模を拡大してこうとしている傾向が強いのが日本のグローバル企業の一つの特徴と言えます。その場合、グローバルOne型への発展よりもむしろ連邦型への発展の方が自然な流れです。そして、現在、そのような日本発グローバル企業が多く現れています。

 

「P&Gのように共通したビジネスを展開するのか、多様なビジネスを展開するのかで、目指すモデルも変わる。日本企業がP&Gのようなスタイルを目指すことは難しい。経営戦略にIT戦略をどのようにマッチングさせるかで仮定の姿が明らかになる」(ラウンドテーブル参加者)

 

「セキュリティやインフラはリージョンで統一した方が良いが、アプリケーションは、事業ごとにビジネスモデルが異なるため、地域を横断して事業で区分している。どのような単位でまとめるかが難しいところ」(ラウンドテーブル参加者)

 

3. 連邦型2.0とは

分権型のITモデルでは、既に事業展開が進んでいる先進国においては、ITも固有性の高いものになっています。また、M&Aを積極的に手がける過程で、買収先の固有のITも抱えることになります。

一方、事業展開がこれから本格化する新興国では、ITの規模も小さく、スピードの面からもシェアードサービス化が求められます。そこで、先進国においては、現地の自立性を尊重し、新興国ではスピードを重視して中央集権的にマネジメントするモデルが、「連邦型モデル2.0」です。【図7】

 

【図7】連邦型モデル2.0の具体的なイメージ【図7】連邦型モデル2.0の具体的なイメージ

「連邦型モデル2.0」では、先進国と新興国を区別したマネジメントを考えています。先進国については、基幹業務の標準化は重視しません。ただ、データやプロセスをHUBおよびマスタの統合により連携させ、グローバルでの経営データの「見える化」を実現します。ガバナンスを強化するというよりも、IT活用の効率性と戦略性を高めます。逆に、これまでITが整備されていない、あるいはガバナンスが効いていない新興国にリソースを集中させます。

新興国では、インフラからアプリケーションまでがパッケージ化された「新興国スターターキット」のようなサービスを、クラウド型でシェアードサービスとして提供することで、中央集権型でITサービスを迅速にデリバリーします。【図8】

 

【図8】新興国スターターキットの具体的なイメージ【図8】新興国スターターキットの具体的なイメージ

「海外戦略の中で、新興国のITが重要なポイントになる。グローバルOneのしくみで新興国のITも含めるのか、ヘッドクォーターや特定の連邦で使用しているシステムを間借りするのか、新興国連邦という新たな連邦を作るのか、考える必要がある」(ラウンドテーブル参加者)

 

必要なビジネスプロセスのデータを本社で握り、アプリケーションやインフラで多様性を許容することで、世界の人々が働きやすい環境を実現するとともに、先進国の強みを競わせ、ベストプラクティスをグループ・グローバルに展開する。

一方で、ダントツ化しない業務・ITはシェアード化・外部化し、間接費を下げ、業務・ITの標準化による迅速なM&A、組織再編を可能にする。

これらが、連邦型モデル2.0で目指す経営価値です。

 

「事業別に経営の担当がおり、事業の括りでグローバルに経営情報を見たいという要望がある。その切り口でマスタやデータベースの統合を検討している」(ラウンドテーブル参加者)

 

「最終的には日本がすべてのヘッドクォーターの機能を握るのではなく、欧州やアメリカに権限を移譲させることもできる。リージョンの統括だけでなく、機能チャンピオンを与えて現場の自立性を高め、それぞれの会社でグローバルに責任と権限を持たせるのが理想的」(ラウンドテーブル参加者)

分権型/連邦型はグローバルOneというゴールの過渡期ではない

昨年のラウンドテーブルの議論では、NECの経営システム改革をモデルにグローバルITのあるべき姿を議論してきました。そこで、NECの経営システム改革は、「ユーザー企業にとってはモデルとするにはハードルが高い」という声が挙がっていました。それは、グローバルなIT改革に必要な技術とリソースを持つITベンダーとの比較の議論と解釈していましたが、実際には、グローバルOne型というモデルそのものへのハードルだったようです。

分権型/連邦型は、あくまでグローバルOneというゴールの過渡期であり、将来的にグローバルOneをめざすことが、グローバルITのToBeととらえてきましたが、決してそうではないことに気づきました。かつては日本流を世界に展開することで、グローバルに成長してきた日本企業も、昨今は激しいM&Aを繰り広げるなど、グローバル戦略が大きく様変わりしてきています。

日本流が通じた時代のガバナンスは欧米流のグローバルOneでした。そして、グローバルに変化する経営を選択する現在、逆に欧米流のガバナンスが難しくなっているのです。

アジアの台頭が激しいグローバル市場で再びグローバル競争力を取り戻そうとする日本発グローバル企業にとっては、ITも「日本発」らしい、グローバルITの姿を模索する必要があります。

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)