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第1章 なんのためのグローバルITか 「グローバルITの経営にとっての価値」


1. グループ・グローバルのマネジメントスタイルはさまざま

これまでもラウンドテーブルでは、「グローバルIT」をテーマに議論をしてきました。これまでの議論では、グローバルで要求する経営品質に応じて、グローバルITをどのように整備するかについて、成熟度モデルのような考え方で議論をしてきました。【図1】

【図1】グローバルIT整備のステップ【図1】グローバルIT整備のステップ

このモデルでは、グローバルで要求する経営品質が高くなるに従い、ITのガバナンスはより中央集権化し、ITを標準化する対象もアプリケーションから業務プロセスへと拡大していくことが求められるという考え方でした。

しかし、「なんのためのグローバルITか」を問い直した場合、ガバナンスは手段であり、目的ではありません。中央集権的なITガバナンスが理想的な姿とは言い切れません。

グループ・グローバル経営を強化しようとする企業が、必ずしも中央集権的なマネジメントスタイルをめざしているわけではありません。

 

「当社は連邦型経営のスタイルをとっている。グループ会社個々の独自性を尊重し、現地の文化に合わせた経営が基本。システム開発と運用は現地中心で行っていて、彼らをサポートするために日本から各国に出向している」(ラウンドテーブル参加者)

 

「同じ国に事業が異なる会社があるが、これらを統合する理由が思いつかない。」(ラウンドテーブル参加者)


実際に、ラウンドテーブルに参加する企業に聞いたところ、経営マネジメントのスタイルはさまざまでした。むしろ、中央集権、ローカル主導をバランスよく共存させたマネジメントスタイルがもっと多いスタイルでした。【図2】

 

【図2】グループ・グローバルの経営マネジメントスタイルの分布【図2】グループ・グローバルの経営マネジメントスタイルの分布

2. 求められるのはグローバルな意思決定とアクションのスピード向上

それでは、このようなマネジメントスタイルの中で、「なんのためのグローバルITなのか」。マネジメントスタイルが違えば、グローバルITに求める経営価値も異なるのか。

ラウンドテーブルでは、グローバルITがもたらす経営価値とは何かを議論してきました。ビジネスモデルも戦略も、マネジメントスタイルも異なる各企業ですが、グローバルITにおける経営価値で共通するキーワードがいくつか出てきました。

共通する大きなキーワードは以下の2つです。

  • 経営データの見える化
  • 新興国ビジネス展開のスピード化

「IT部門として、売上拡大と効率化によるコストダウンへの貢献ができる。この2つを達成するために必要な条件は、業務の標準化による効率化であり、KPI整備による経営数字の見える化、つまり経営スピードへの寄与がIT部門の役割となり、それが売上拡大とコストダウンに繋がる」(ラウンドテーブル参加者)

 

「グループ全体で、事業性も地域性も多様であるため、ERPでサプライチェーンを統合するのは難しい。ITでできることは、情報を連携して、『見える化』で経営を支援することだと考えている」(ラウンドテーブル参加者)

 

「たとえば中国での事業拡大を考える際、既存の会社に製造ラインを増やすこともあれば、新しく会社を作ることもある。早く安くシステムを立ち上げるためのモデルを作ることができれば、新しく会社を設立する際、ITも貢献できるだろう。」(ラウンドテーブル参加者)

 

「新興国への進出については、いつでも撤退できる柔軟性も求められる。そのため、現地にモノを置かずにネットワーク環境によるクラウドを利用するよう経営から要求されている」(ラウンドテーブル参加者)

 

経営数値を見える化し、迅速で適切な意思決定をしていくことと、グローバル市場として成長著しい新興国でのビジネスのスピード展開は、グローバル企業に共通した経営課題です。これをITで支援することが、グローバルITにおけるもっとも重要な経営価値と言えます。

 

【図3】ラウンドテーブル参加企業が考えるグローバルITの経営価値【図3】ラウンドテーブル参加企業が考えるグローバルITの経営価値

3. グローバルITのToBeは何によって決まるか

めざす経営価値は共通するものの、グローバルITのめざす姿(ToBe)は各社さまざまです。これは、グローバルITの成熟度の違いではなく、グローバル経営の戦略の違いと言えるでしょう。

ラウンドテーブルでは、グローバルITの整備が必要となるグローバル経営のテーマを各社に挙げていただきました。その中で、共通するテーマが以下の7項目です。

  1. 見える化
  2. 内部統制強化
  3. 業務の集約化
  4. 法人統合
  5. グローバル調達
  6. グローバルSCM
  7. M & A

一方、それぞれのテーマについてITの整備をどのような時間軸で取り組もうとしているのかについては、各社で大きく異なります。【図4】

 

【図4】共通する経営テーマに対してどのような時間軸でグローバルITを整備するか【図4】共通する経営テーマに対してどのような時間軸でグローバルITを整備するか

時間軸が比較的一致する「内部統制強化」や「見える化」に対し、「業務の集約化」は、各社共通でスコープにしていますが、時間軸はさまざまです。また、「法人統合」、「グローバル調達」、「グローバルSCM」といった項目は、スコープしている企業とそうでない企業があります。

さらに、「M&A」に関しては、ITをどう整備するか、各社でとらえ方が異なります。

 

「当社では、M&Aに伴うデューデリジェンスの段階で、ITの領域で把握すべきマニュアルを10年ほど前から作成している。当社にとってのM&Aに対するITの整備は、そのようなデューデリジェンス・マニュアルの整備にあたる」(ラウンドテーブル参加者)

 

このように、全体を通し見ると、

・経営データの見える化

・新興国ビジネス展開のスピード化

といった、「グローバルな意思決定とアクションのスピード向上」を経営価値としながら、企業のマネジメントスタイルや戦略によってさまざまなグローバルITのToBeがあることがわかってきました。

 

 

グローバルITのスタイルは重要ではない

昨年までのラウンドテーブルの議論では、グローバルITの理想の姿を、グローバルでの中央集権が進んだ姿と考え、各社のマネジメントスタイルの違いは成熟度の違いであると、少々一元論的に考えていました。しかし、実際には、経営のマネジメントスタイルも決して中央集権をめざしているわけではなく、経営とITのマネジメントスタイルがまったく異なるのも矛盾する話です。

特に、昨今M&Aを中心として、コングロマリット的に成長している日本のグローバル企業にとって、中央集権を強化することは、逆に経営のスピードを阻害しかねません。

重要なことは、グローバルITがめざす経営価値にこだわりながら、グローバルITのスタイルにはこだわらず、何が最適の効果をもたらすかを考えることだと思います。

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)