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第1章 IT部門は何をコアとすべきか

そもそもITはビジネスのコアなのか

本ラウンドテーブルでは、クラウドやアウトソーシングなどIT調達の手段が進化し、“持たざるIT”が現実化する中、「経営に貢献するIT部門とは」という問いかけをスタートに議論をしてまいりました。

まず、参加者と「経営に貢献しているIT部門の姿」を議論しました。その中で出てきたキーワードは、以下のようなものです。【図1】

図:経営に貢献するIT部門の姿とは【図1】

業務部門の要求するITサービスを、要求に忠実に低コストで提供するだけでなく、すべての業務プロセスにコミットしているという立場から、業務部門に対するBPRを仕掛け、全社最適な視点で業務部門や経営に対して提言していく機能を「経営に貢献するIT部門」とイメージしているようです。

IT部門のミッションをより高度な次元に進化させようとする思いが汲み取れますが、一方で、「ITはそもそもビジネスのコアではない」という思いが、IT部門トップに共通していることがわかりました。

「金融などサービス業では、ITはビジネスが武器となるが、製造業では、IT部門はコストセンターである。」(ラウンドテーブル参加者)

「インフルエンザが流行した際に、BCPに本格的に取り組んだ。事業継続において、重要な部分を司るのは全てITの領域だと気づいた。しかし、それを実感できるのは緊急時だけ。」(ラウンドテーブル参加者)

「当社は情報を扱っているわけではなく、材料を加工して売る業務がコア。ITが製品をつくっているわけではない。コア業務が、ITによってスピードアップが図れるなど、サポートに役立てれば良い。ITの使命は空気になること。絶対に止めてはいけない。とは言え、ITをコアにしましょうと言うのは少しおこがましいように感じる。その気持ちを抑えて、空気になれれば良いと思う。」(ラウンドテーブル参加者)


すべての業務プロセスにITがコミットしている限り、IT部門は経営に直接的に貢献していると言えるはずですが、IT部門トップ、IT部員ともにその強い実感が持てていないのが実状です。

IT部門の上流シフトは本当に必要なのか

現状では経営への貢献を実感できない中、【図1】のキーワードに見るように、IT部門の機能を高度化させることによって、経営への貢献度を高めようとする姿が窺えます。

【図2】で描くような階層でIT部門のミッションを切り分けた場合の上流シフトです。

図:IT部門のミッションを切り分けたピラミッド階層【図2】

ただ、ラウンドテーブル参加者のすべてが、このような上流シフトをIT部門のめざすべき姿と、とらえているわけではありませんでした。

「IT部門のミッションを上流にシフトさせ、経営にコミットできなければならないという考え方に、個人的には反対だ。経営への提言は経営企画部が行えばいい。IT部門はインフラ整備などがコアミッション。経営への貢献は考えているが、提言はあまり考えていない。業務部門にコストダウンの価値を提供することがもっとも喜ばれる。」(ラウンドテーブル参加者)

「コア業務の工程のサポートがIT部門の仕事。ITはコスト面で貢献できるが、ITによって、爆発的に売上が上がるわけではない。コスト削減が限界である。」(ラウンドテーブル参加者)

「経営からビジネスのニーズが出てきた時に、そのソリューションに対するベストな案を出す役割であるよう言われるため、経営に対する提案やBPRを仕掛けるのは少し荷が重い。」(ラウンドテーブル参加者)


過去のラウンドテーブルの議論でも、IT部門トップの多くが、将来的に経営企画的な機能を担うことが、IT部門がめざすべき進化の姿であると考えていました。

一方で、そのようなIT部門の姿をゴールに描くのは、リソースの点でも、また、経営からの期待という点でも適切ではない、という発想にも説得力があります。現状のITサービスが経営に貢献しているという実感がないところに、さらに高い機能を求めることは、IT部門のめざすべき領域ではないのかもしれません。

IT部門がコアとして守るべきものとは

それでは、IT部門がコアとして守るべき領域は何でしょうか。それには以下の2種類があるでしょう。

  • 現在その機能を果たしており、機能強化のためリソースを集中すべきもの
  • 新しくその機能を果たすために変革を要するもの

前者はリソースの集中によって強化が可能ですが、後者は変革が必要になります。IT部門の上流シフトは、後者の方であり、シフトとは言っても、正確にはリソースの集中ではなく、変革が必要な領域です。

ラウンドテーブル参加者の考え方も2通りあります。タスク領域を完全に上流に移行してしまうことに積極的な企業もあれば、現在もその機能を果たしている領域、【図2】における中間階層の部分をコア業務と位置づけ、そこにリソースを集中しながら、段階的に上流へとタスク領域を広げることが現実的ととらえている企業もありました。

「経営への提言・企画・BPR機能・IT投資の評価機能・ガバナンスに取り組まなければ、会社に貢献するどころか、IT部門の存在意義もない。」(ラウンドテーブル参加者)

「データを利活用する環境面を整えるだけでなく、そのデータを使える形に加工することもIT部門では可能である。顧客戦略部や販売企画部で行っている機能の一部をIT部門に取り込みたい。」(ラウンドテーブル参加者)

「情報システム部の重要な役割の一つはプログラムを構築すること。そのためには、業務部門が何をしたいのか、正確な表現で聞き出すスキルを強化することが最優先である。」(ラウンドテーブル参加者)

「上流に目が行きがちだが、ユーザ部門に対して環境を整えて教育することこそがコア業務だと位置付けている。」(ラウンドテーブル参加者)


ラウンドテーブル参加者の中には、開発をアウトソーシングして、企画業務にシフトしている企業もありますが、その場合も、QCDを担保するために、一定の技術領域は引き続きIT部門が担うべきであると位置づけていました。

「QCDを守るにためは、全部をアウトソーシングベンダーに『お願いします』ではダメで、リスク責任を持ってやらなければならない。アウトソーシングの管理機能という形でプロジェクトマネジメントなどの技術領域は必要としている。」(ラウンドテーブル参加者)

経営に貢献するITのためには、本当に上流シフトが必要なのか

IT部門の将来像について議論する際に、「IT部門の機能をさらに上流へと発展させるためには」というテーマが常に議題に上ります。すべての業務プロセスにコミットしているIT部門が、経営企画的な役割を有効に果たせるようになれば、企業の経営は強化されるでしょう。一方で、経営企画的な領域に踏み込まなければIT部門が経営に貢献しているとは言えないのでしょうか。

ラウンドテーブル参加者が指摘するように、経営企画機能は企業組織の中でどこかの部門が果たしていればいいのです。IT部門が担う必然性はありません。ITが企業活動において空気のような存在になっている昨今、改めてITの存在価値を認識させることは難しいかもしれませんが、今現在ITが果たしている機能についての経営的価値を示すことなしに、上流へのシフトを志向しても、IT部門が有効な役割を果たせるとは思えません。「経営に貢献するIT」を経営課題ととらえるのか、IT部門の課題ととらえるのか、議論の出発点としてはそこが重要になります。

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)