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第4章 次世代IT部門に向けた取り組み

次世代のIT部門を目指した人材のスキル面での取組みは、第3 章で述べましたが、本章 ではその他の取り組みについて一部をご紹介します。

経営とのビジョンの共有と意識変革

トップのビジョンや業務部門の考え方をIT部門として正確に理解することはまず何より重要です。ラウンドテーブルに参加するある企業では、そのためにCIO と事業部トップとで定期的に会議を実施している例が報告されました。
このようなコミュニケーションを通じて、事業部の動きがわかり、互いのビジョンが共有できます。

また、ITに対する理解という意味では、部門長クラスを集めて、システム企画会議を実施し、システム化の是非を組織横断的に考える議論を定期的に実施している企業がありました。

「年に2回、システム企画協議会を実施し、システム化する企画そのものが良いかどうかを話し合う。ボトムアップの要求だけではなく、経営の要望も聞くようにしている。」(ラウンドテーブル参加者)

またこの企業では、社内で使われている各システムを出展し、どのようなITインフラ、業務システムが各部門で使われているかを見せる、IT部門による社内フェアを実施していました。ここでは、経営トップはじめ、役員、一般社員まですべてを対象にして、社内のすべてのシステムを公開しています。
こうすることで、会社の中で実際にどのような業務でどのようなシステムが使われているのかを理解させ、ITに対する意識を高めているのです。

グローバルをスコープとしたITガバナンスの強化

先に述べたように、グローバルレベルでの経営品質の標準化が重要なテーマになっています。IT部門として、グローバルをスコープとしてITガバナンスを強化していく考えは、各社一致していました。
1つは、基幹システムの共通化によって業務を標準化していくこと。グローバルに事業を展開している企業にとって、プラットフォーム、アプリケーションの統合を図っていく方向性はある程度共通しています。

「データの取得を容易にし、経営品質を維持しやすい方向に持っていくためにも、ある程度の標準化は必要だと考えている。」(ラウンドテーブル参加者)

ただ、各社が目的としてもっとも重視しているのは、管理の粒度を統一するということです。具体的には、大半の企業がグローバルマスターの整備に取り組み始めていました。
勘定コード、製品コード、顧客コードなどコード体系を整備し、グローバルで統一していく。実際には、部門間、地域間での調整が難しく、非常に時間のかかる作業のようです
ポイントとしては管理粒度を粗くすることにあると、ある参加者は指摘していました。

「管理粒度が細かいとどうしようもありません。事業部門や地域によって管理粒度が異なるので、本部が細かく設定すると、それ以上に細かくなってしまいます。どこまで粗くできるかを議論しています。」(ラウンドテーブル参加者)

ナレッジマネジメント領域でのビジネスへの貢献

業務プロセスを改善して質の高い業務システムを提供することがプロセスマネジメントとしてのビジネスへの貢献とすれば、意思決定に直接貢献する知恵を提供するナレッジマネジメントとしてのビジネスの貢献もIT部門の役割になるでしょう。
ある企業では、IT部門が、在庫管理のデータにもとづき、適正在庫数を設計することでビジネスへの直接的な貢献をしている例が報告されました。国内のすべての倉庫の過去の膨大な在庫データを解析し、将来の需要を予測し、余剰や欠品を発生させない適正在庫数を計算し、販売部門に提示するのです。
このデータ解析チームは、マーケティング部門ではなく、IT部門に置かれています。IT部門に明確にナレッジマネジメントとしての役割を位置づけている例です。

IT 部門、システム子会社、ベンダーすべてを包括してITリソース調達を考える

次世代のIT部門の役割が変革し、コアとなる業務が経営視点でのBPR とIT化の企画という上位のレイヤーに移行していった場合、これまでのコアであった、ITの構築・運用・維持という業務はノンコア業務となります。
ラウンドテーブルでは、今後、ノンコアとなっていくかもしれない、システムの構築・運用・維持を誰が担うのか、についても議論しました。
ラウンドテーブルに参加する企業の多くはシステム子会社を持ち、現在でも一部の運用を担っています。まずは、システム子会社の担う領域が拡大することになるでしょう。しかし、IT部門、システム子会社、外部のベンダーを縦の関係でとらえ、上位レイヤーから純粋で役割を分担しいていくという考えではなく、IT部門、システム子会社、外部のベンダーを全体で1つのリソースととらえ、得意分野でリソースを提供し、補完し合う関係が次世代のIT部門の体制であると、参加者の多くは考えていました。

その場合、システム子会社に対しては、ビジョンを共有するグループの一員として、IT部門と協力しながらコア業務を担うことや、先述した、オーバーラップして保持すべき技術を維持し続ける役割が期待されていました。

「情報システム子会社が持っている業務のワークフロー図や、工学的アプローチに基づいたデータは残しておく必要がある。」(ラウンドテーブル参加者)

また、外部ベンダーにアウトソースするメリットとして、事業継続性を挙げる参加者もいました。

「国内全体で従業員の離職率が上昇している。社員が突然辞めてしまってITの運用がストップしてしまうリスクに比べると、SLAで品質を保証されているアウトソース先の方が、事業継続性が高いことが考えられる。コストダウンのためではなく、事業継続性のためのアウトソースという選択肢もある。」(ラウンドテーブル参加者)

IT部門、システム子会社、外部のベンダーを包括して考え、どうリソース配分していくかが、次世代のIT部門を構想する際には必要な考え方となるでしょう。

IT調達リソース全体の中でナレッジの提供に集中する

「ITによってコアビジネスに貢献するが、IT自体はノンコアである」というある参加者の発言が印象的でした。そういう意味では、ITを使って業務プロセスを支援する役割はノンコア業務としてアウトソースされていき、ITによってビジネス価値を提供する役割だけがコアとして残っていくのかもしれません。
IT部門自身がITの企画部門かつエンドユーザーとなり、工学的アプローチでITを活用したナレッジを各業務部門に提供していく。シェアードサービスとしてのシステム子会社やベンダーまでをもIT部門のリソースと考えると、そんな将来像も可能であるような気がします。

(ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)