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モノづくりIoTコラム

中村敏

第9回「現場と本社の壁」(2017年5月10日公開)

中村 敏 (なかむら さとし)プロフィール
【所属】NECソリューションイノベータ株式会社
      イノベーション戦略本部 兼 IoE事業推進グループ 主席プロフェッショナル

【略歴】NECで主に中堅製造業向けのシステム提案、コンサルティングに従事
      現在、中堅製造業向け モノづくりIoTソリューション事業責任者
      日本マーケティング学会、一般社団法人 日本生産管理学会
      日本TOC推進協議会、NPO法人ものづくりAPS推進機構
      一般社団法人 持続可能なモノづくり・人づくり支援協会 会員

【第9回】 現場と本社の壁

今まで、現場力の重要性、リードタイム短縮のアプローチについて紹介してきました。現場の方は納得して取り組んで頂けると思います。しかし、具体的に取り組んでいくと、思わぬ壁にぶつかります。それは、本社の壁です。驚かれるかもしれませんが、リードタイム短縮によって一時的に利益が悪化します。
なぜ、このようなことが起きるのか説明していきます。

まず、財務上の原価と利益について整理します。

在庫 増 = 利益 増

イメージ:在庫 増 = 利益 増

原価は、財務会計上、次のように定義されています。

  売上原価 = 当期の売上に対応する原価
  製造原価 = 当期に完成した製品に対応する原価

製造原価と売上原価の関係は、次のようになっています。(実は製造と販売を区分した原価計算に大きな問題があります)

  当期製造原価 = 期首仕掛品棚卸高 + 当期製造費用 ー 期末仕掛品棚卸高  ・・・ (1)
  当期売上原価 = 期首製品棚卸高 + 当期製造原価 ー 期末製品棚卸高    ・・・ (2)

(2)より、当期製造原価を抑えつつ、期末製品棚卸高を増やせば、当期売上原価が低くなります。すなわち利益が増えることになります。つまり、期末に製品の完成を急げば、利益が増えるという一種の操作が可能になります。利益を増やせば、粉飾決算、利益を減らせば、脱税目的の調整となります。

勿論、意識的に操作することはありませんが、『製品在庫 増=利益 増=悪ではない』という意識が刷り込まれていることが多いと思います。見た目の生産性を上げるために在庫を作って暇つぶしをすることが普通になっていないでしょうか。いつ売れるか分からない、売れないかもしれない在庫を作ることによって、見た目の利益は増えますが、キャッシュは減ります。まさに黒字倒産に陥る可能性が高まります。

では、ムダを削除し、リードタイムを短縮すると何が起きるでしょうか?
リードタイムを短縮することにより在庫は減ります。在庫が減ることにより、売上原価は増えます。結果として利益は減ります。勿論、キャッシュは増えますが、見た目の利益は減ることになります。本社の経理からは、「工場は何をやっているんだ。原価が悪化してるじゃないか」と怒鳴られます。実はこのことが、TPS(Toyota Production System)が定着しない理由の一つになっています。

勿論、利益は一時的に減りますが、徐々に回復していきます。その間、どんどんキャッシュは増えていきますので、借入金の返済に充てることができます。銀行からは、「いったい、どうやって繰り上げ返済しているんですか」と質問されます。更に利益を増やすためには、リードタイム短縮による余剰のリソースを使って新たな売上を創出していかなければなりません。現場改善と経営改革は同時に行う必要があります。

次に製品在庫の価値について考えてみます。

製品在庫の価値

イメージ:製品在庫の価値

同じ製品が、次の3つの方法で作られた時、どれが一番価値があるでしょうか?(=原価が安いか?)

  (1) 1人日の工数を、その日のうちに使って、翌日に出荷した。
  (2) 1人日の工数を使ったが、1ヶ月を費やして完成させ、出荷した。
  (3) 1人日の工数で、1日のうちに作って完成させた後、倉庫に1年間保管して出荷した。

この時、会計上は、(1)(2)(3)とも原価は同じで差はつきません。なぜなら、正味作業時間は変わらないので間接費配賦が同じになるためです。(材料費は同じ)「会計の素人」が考えると、(1)(2)(3)の順で価値がある(コストは安い)と感じると思います。これは、「正味作業時間が同じでも時間が経てば、経済価値が下がる」と直感的に感じているからだと思います。この経済価値は、キャッシュフローと置き換えても構いません。

原価を考える時、時間の概念を取り込むことは非常に重要です。例えば、タクシーの運賃を考えてみて下さい。走っている時間は勿論ですが、止まっている時間もチャージされています。1995年 トヨタ自動車の張副社長(当時)の企業指導における発言の中に、以下のようなものがあります。「皆さんは、モノが機械で加工されている時間が大事だと考えているかもしれないが、機械の傍で、モノが寝ている、待っている時間も同じように大切なのですよ」

1962年に公表された原価計算基準では、間接費の配賦基準として、直接材料費、直接労務費の金額基準や、直接作業時間、機械運転時間の時間基準が示されています。配賦基準としてリードタイムは否定されていませんが、継続的に測定できることが条件になります。その当時、現在もそうですが、リードタイムは測定できていません。結果として、直接作業時間などを採用しています。

市場の需要変動に対応するために、現場ではリードタイムの短縮、作りすぎの防止を徹底しています。これらの現場力を正確に(正当に)評価するのであれば、リードタイムをベースとした原価計算を採用すべきです。但し、現在の財務会計を否定するのではなく、現場と本社の壁を崩し、シームレスな連携を実現するために、「正味作業時間」と「リードタイム」の2つを切り替えて管理することが必要です。

現場がよくなったことが浮かばれる経営システムが必要です。具体的には、時間の概念を持ち、利益視点からキャッシュ視点に変更することです。

第10回「利益視点からキャッシュ視点へ(1) ~リードタイム短縮と付加価値~」へ→

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