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モノづくりIoTコラム

中村敏

第2回「成長のサイクル」(2016年10月13日公開)

中村 敏 (なかむら さとし)プロフィール
【所属】NECソリューションイノベータ株式会社
      イノベーション戦略本部 兼 IoT事業推進室 エグゼクティブエキスパート

【略歴】NECで主に中堅製造業向けのシステム提案、コンサルティングに従事
      現在、中堅製造業向け モノづくりIoTソリューション事業責任者
      日本マーケティング学会、一般社団法人 日本生産管理学会
      日本TOC推進協議会、NPO法人ものづくりAPS推進機構
      一般社団法人 持続可能なモノづくり・人づくり支援協会 会員

【第2回】成長のサイクル

中堅製造業を取り巻く環境は、大きな成長が期待できない中、サステナブル(sustainable)な時代といえます。そんな中、成長し続けている企業もいます。今回は、製造業の成長のサイクルについて考えてみましょう。

この図は、製造業の成長のサイクルを示しています。
(出典:柊紫乃 山形大学、上總康行 京都大学名誉教授 ものづくり管理会計研究会 「生産現場の改善と原価計算 改善の見える化」 2015.10.16)

図:生産現場の改善と原価計算 改善の見える化

まず、「(潜在的な)受注」 から出発します。 一般に、需要が供給を上回ることは少ないと考えられていますが、そうとは限りません。確かに、現実の受注は少ないかもしれませんが、価格がもう少し安ければ、納期がもう少し早ければ、品質がもう少し良ければ、より多くの受注が見込めるでしょう。このように潜在的な受注があるにもかかわらず、「こなせない仕事」として見過ごされている(潜在的な)受注残は数多くあります。

見過ごされている(潜在的な)受注残を獲得するためには、対応するリソースが必要になります。その為に現場改善が行われます。その結果、生産能力は増大し、余剰のリソース(人、金、設備)を獲得することができます。余剰のリソースを抱えていることは、度々、稼がないリソースを抱えていると考えられ、機会損失と判断されることがあります。その結果、従業員の流動性が高い欧米では、従業員の解雇が行われます。

しかし、これは非常に大きな勘違いです。むしろ、現場改善により、新たなリソースを生み出し、新たな機会収益を上げるチャンスを得たと考えるべきです。新たに得たリソースを使って、新たな事業、新製品、既存事業の新たなビジネスモデルを展開し、受注を拡大します。 リソースを有効に活用することにより、機会収益を得ることができ、利益が拡大し、更なる「受注」が増えていきます。これが、製造業の「成長のサイクル」です。

従業員の流動性の高い欧米で現場改善が定着しない理由は、雇用に対する考え方の違いにあるのかもしれません。現場改善により余剰のリソースを創り出すことは自らの首を絞めることになりかねません。また、新たな事業を始める場合は、必要なリソースを外部から調達し遂行します。

この考え方の違いが、IoT(Internet of Things)に対する期待効果についても明確に表れています。
(出典:アクセンチュア「グローバルCEO調査2015」)

IoTがもたらす期待効果

IoTがもたらす期待効果として、海外の経営者の約60%が新たな収益源の創出に貢献すると考える一方、日本企業の経営者の大半はオペレーションの効率化や、生産性向上のツールとして捉えています。このことは、新たな収益源に貢献しないという考え方ではなく、新たな事業を始める上で余剰のリソースを創り出すことが重要であり、まず、そこから始めるべきだと考えているのではないでしょうか。

TPS(Toyota Production System)も、TOC(Theory Of Constrains)も、リストラに関しては、非常に強く反発しています。創り出した余剰リソースを有効に活用できないのは、経営戦略の問題であり、かつ、成長できるチャンスを自ら潰すことになります。安易なリストラは、成長のサイクルを断ち切ることであると強く認識すべきです。 但し、中堅製造業では余剰のリソースを抱え続ける余裕はありませんので、現場改善と経営改革(新たな収益源の創出)を常に同時に行う必要があります。

次回は、成長のサイクルの両輪の一つ「現場力」について掘り下げていきます。

【第3回】「グローバル能力(現場力)構築」の時代へ →

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