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【コラム】 第4回 「経営コンサルタントから見たBPMの意義と知っておくべきこと(前編)」

アビームコンサルティング 日置様

アビームコンサルティング株式会社
プロセス&テクノロジー事業部
経営改革セクター デイレクター
日沖 博道 様

1.はじめに

個人的バックグラウンドとBPR

筆者は20年以上の長きに亙って経営コンサルタントの職にある(投資業も兼ねていた数年間は、投資先の社長または役員として執行役であった時期もあるが)。米国留学後に参画した米系戦略コンサルティングファームで、当時米国で一世を風靡していたBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の、日本での普及の初期段階においてプロジェクトを幾つか集中的に手掛けたのがBPRとの関わりの始まりであった。何せ先輩コンサルタントも経験がないため、米国の同僚が経験をまとめた社内資料を参考に、色々なアイディア開発・解決技法も組み合わせて、試行しながら最初のプロジェクトを進めたことを思い出す。筆者自身はその後色々なパターンのBPRを経験し、確立した手法をクライアントに提供するだけでなく社内でも指導するようになっていった。

しかしながら90年代後半からは少しずつ、BPRプロジェクトは、より単価の安い会計系コンサルティングファームが人数を掛けてさらっていくようになった(我々が5人掛けて行う提案に対し、12人掛けて価格が下回る提案をされて負けたことすらある)。特にERPパッケージ導入とBPRをセットにしてディスカウントする彼らの戦略は効果的で、パッケージのインプリを行わない戦略ファームにとって、「値崩れした」BPRプロジェクトは単独テーマではなくなり、戦略やリストラ方針を策定した後の「第二フェーズ」のテーマとなっていった。筆者にとっても、リストラクチャリングや戦略策定が主たる領域に戻っていった。

BPMに関与することになった経緯

2003年春、経営改革を進めようとする某SIベンダーの招きに応じ参画した筆者は、まず大企業向けソリューションのマーケティング責任者となった。主な対象であった第3者ソフトウェア製品を担ぎ続けるかどうかのリストラを進める役割と並行して、新しいソリューションのネタを常に探していた。

そんなとき紹介されたBPMツールと「継続的業務改革」というコンセプトは新鮮であった。そして、これは当時新設されたビジネスコンサルティング部門の武器として使えるのではないか、と閃いた。同部門に対し「業務コンサルティングを核とすべき」と提言していた筆者は結局、自ら業務コンサルティング組織を2004年春に立ち上げ、その差別化ポイントとしてBPMを旗印に挙げたのである。

それ以来BPMを活用したプロセスコンサルティングのプロジェクト実績を重ね、その成果も踏まえて書いた『BPMがビジネスを変える』[日経BP企画](外部サイト)は、ユーザーのみならずベンダーの人達にもよく読まれたようである。

その後アビームコンサルティングに移ってからは、ブログ「BPMを考える」(外部サイト)で考え方を伝えたり、社会人向けの日本工業大学専門職大学院(外部サイト)では客員教授としてBPRに関する授業を持ったりしている。

2.経営的観点からのBPM

BPRそしてBPMとは何者か

前章で長々とBPR/BPMとの個人的関わりを説明したのは、この後の主張の背景を理解していただきたい故である(それなりに体験・考察を重ねてきたことが伝われば幸いである)。

「BPMとは」という解説に関しては、今日ではウェブ上で検索すれば随分と登場するので、そちらに譲りたい。しかしながら、どうも解説が技術寄りであることと、BPRから一気にBPMツールやBPMシステムに話がジャンプするため、素人には敷居が高く感じられよう。

実はBPRからいきなりBPMに進化した訳ではない。一旦、BPE(ビジネスプロセス・エンジニアリング)という段階を経ているのである。簡単にいうと「BPRが技法化されたもの」である。

BPRは方法論としては確立していたが、誰がやってもそれなりにできるという性格のものではなかった。コンサル(しかも優秀な)でないと、「全体最適視点で抜本的な、プロセス起点の変革」という本当の意味でのBPRは実施が難しい。根本的な発想の転換がないとできない類の経営変革手法なのである(図1参照)。だからこそ失敗例も多いと批判されたのである。

BPRのイメージ図1:BPRのイメージ

それに対し、「そこまでの本源的な変革でなくてもいいから、業務改革をより確実にデザインして、しかもシステム化したい」というニーズが湧き上がってきたのは当然であろう。これに応えるべく、対象プロセスを小分けして分析し、改善案を繋ぎ併せて新プロセスをデザインし、システム化する技法が開発された。これがBPEである。

SIベンダーや会計系コンサルティング会社が実際に提供していたサービスは、実はこのBPEだったのである。特にERPパッケージの導入手法と渾然一体となっているケースが多い(コンサルタント自身もBPE という概念を知らずに、BPEまたは業務改革全般をBPR と「一般名称」化して呼んでいることが多いのが実態である)。とはいえ、エンジニアリング的発想によりBPRを技法化したBPEの功績には大きいものがあった。

ただ、BPEは「プロセスの現状把握・分析」→「新プロセスのデザイン」→「システム実装」という1サイクルで終わる考え方だったため、単発プロジェクトになり勝ちだった。この欠点をカバーしようと考案されたのがBPMである。つまりもう1ステップ、「モニタリング」を加えたのである。これによって最初の「プロセスの現状把握・分析」に戻るループが完成し、現在よく見る「BPMサイクル」が出来上がったのである(図2参照)。

BPMサイクル図2:BPMサイクル

BPMが何故今重要なのか

業務担当やIT設計・開発の現場から見たときに、BPMとSOAがどんな意義を持ち、如何に今日有効性を発揮するようになってきたかについては、ウェブ上で色々と解説されているし、このコラムでも他の筆者が懇切丁寧に解説されているので、ここでは割愛したい。

むしろ、経営的観点で見て何故今、企業はBPMを真剣に検討すべきかを考えてみたい。実際、親しい企業経営者の2割程度は「BPMの価値が判らない、したがって実践していない企業経営者は失格だ」と断言し、3割が「さっぱり判らない」と開き直り、残りは口を濁す(多分、頭では何となく理解するが実践していないのだろう)。

不況の真っ只中にある世界中の企業(その規模を問わず)にとって、従来のビジネスのやり方の延長では成長どころか維持すらできないというのが正しい認識であろう。では、大半の企業にとってどのような打ち手が現実的にあるのか(この点は今年初に予測記事を書いたので、そちらもご参照願いたい)。

こうした状況下、多くの企業がまず取り組むのがコスト削減であるが、それだけで成長に向かうことができないことは自明であろう。

では新製品または新サービス、新業態の開発はどうか。これはどの企業も不況であるとないとに係らず、取り組み続けているはずだ。変わるのは、その対象製品またはサービス・業態をより不況下に適したものにするという「仕様」の違いである。ただ、市場カテゴリーを新設するほどの新しい製品やサービスを開発し大ヒットさせることは10年に1~2度の話で、大抵は既存市場でのモデルチェンジやバリエーションの追加だというのが多くの産業の現実である。どちらも多大な努力を要しながらも、前者は成功の確率が極端に小さく、後者には収益貢献インパクトが小さいという悩みがつきまとう。つまり、やはりこれだけでは足らない可能性がかなりあるということである。

企業経営者の本音を言えば、競合が太刀打ちできない新しいビジネスモデルを開発して独占利益を得たいところだが、そんなに簡単に開発できないことも現実である。またはM&Aを含む業界再編のような力技が選択肢として有効なこともあるが、資金力と買収先候補の両方が揃わないと使えない手であるため、普遍的な打ち手とは言えない。

結局、大半の企業にとって既存市場の深耕を目指した、サービスの一層の洗練を含むビジネス(業務)プロセスの見直しというのが、現実的かつ効果的な打ち手であることが多い。例えば先の製品・サービスの開発プロセスそのものを改革することで、競合より早くサイクルを回すことができれば、成功確率と収益インパクトの両方を高めることができる。

但し、ビジネスプロセスの見直しに一過性で取り組んでも、競合との差別化の定着は難しい。(あり得ないことを承知で云うが)よほど潤沢な資金力があって高価な情報システムの導入をフルにできる企業ならともかく、どこも似たようなレベルの頭脳と資金力で競争してきたのであれば、1回の改革で引き離すというのは甘い。

しかしこれを継続的に行うとなると話は変わってくる。概念の理解はともかく、「継続的業務改革」を着実に実践する意志の固い企業は多くない。大抵は「XXXシステム導入プロジェクト」という期間が終われば、「やれやれ」とプロジェクトは解散してしまう。そして情報システムとそれに支えられた業務が陳腐化するまでは情報システム部門がお守りをすることになるのである。それに対し、ビジネスプロセス見直しを繰り返し、重要領域で徹底させていけば、その改革スピード自体により競合との差別化の維持も可能となるし、やがては「プロセス・イノベーション」といえるレベルに至ることもできよう。

では読者の会社がBPMを実践し、広範な範囲でビジネスプロセスをモニタリングし継続的に見直せるようにしたら、一体何が起きるのだろう。多分、各部門の責任者が評価される指標、いわゆるKPI(重要業績評価指標)が明確化され、見直されるだろう。結果系の指標(例えば生産高)に加え、リードタイムなどのプロセス系の指標が幾つか設定されるだろう。

それまではビジネスプロセスを管理していないため結果系の指標しか測定できないし、ビジネスプロセスを簡単に変えることができないため、結果系の指標にしか責任を負えなかったのである。ところがビジネスプロセスの途中のボトルネックも特定され、例えばそこを通過する業務の量とその単位時間当たりの処理量(つまりスピード)が全体の業務のアウトプットを左右することが判ってくれば、経営者はそれらに責任を持つ人を決め、継続的な改善を求めたくなるものである。するとプロセス系のKPIが相当程度増え、継続的な改善をするように仕組みが動く。結果として、会社のパフォーマンスを継続的に挙げるように組織が向かうのである。

後編はこちら

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