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佐藤 敏明

研究所の「知」をつなぐデザイナー

研究企画本部 イノベーションプロデューサー
佐藤 敏明 (さとう としあき)

2006年NECに入社し、デザインを軸にモバイル事業の強化を先導。現在はNEC研究所内外のブレインを集めた「企画創造グループ」で将来社会と技術のビジョンを描く。

最上流から課題を見つめる
デザイン思考から生み出すソリューション

私はこれまで30年以上インダストリアルデザインの仕事に携わっていますが、いまは中央研究所に籍を置いて活動しています。研究所のなかにデザイナーがいるというのは、NECとしても初めての試みですし、他の企業を見ても非常に珍しいケースなのではないでしょうか。
デザインというと、もしかするとみなさんはモノを美しくしたり、カタチをつくりあげたりすることだと思われているかもしれません。しかし、デザインは本来、記号を表す「sign」に否定的な意味を表す接頭語「de-」がついた言葉であることが示す通り、だれもがそれを見て理解する記号、つまり「常識」から離れる考え方だということができます。
NECはいま社会ソリューション事業へシフトしようとしています。そこでいまの私たちに必要となる考え方は「なぜ、何のために技術を開発するか」といった物事の本質から問い直す最上流からの思考です。たとえば、食べ物で例えると、みんなが「美味しいものを食べたい」と言ったとき、これまで私たちは美味しい食材、つまり製品を提供すればよかったわけです。しかし、いまの私たちには「なぜみんなは美味しいと思うのか」と社会の流れや人の動向をふまえて考えることが必要です。「美味しいものを食べたい」というニーズの裏には、当人たちはまだ気づいていないだけで、本当は「恋人と話をしたいから」だとか「ビジネスの場で会話が進む」といったニーズがあるかもしれない。こういった本質に気づいて解決策を提供していかなくては、真の社会ソリューションを生み出すことはできません。いままでの常識にとらわれず、新しい方策、仕組みを考え、時代を読んで変えていくというデザインシンキングは、エンジニアリングとはまた別に、社会ソリューションのために必要な考え方になっています。

デザイン視点から再構成する
社会ソリューションと価値共創

こうした考え方を背景に、2014年に開かれたNECの展示会では私が中心となって、新しいコミュニケーションを展開しました。従来のスタイルは各研究所の各部門、各チームがそれぞれの要素技術を展示するというものだったのですが、私が取り組んだのは、NECがもつ研究アセットによってどのような社会ソリューションが可能なのか一目でわかるような展示です。「2020年の東京を描く・創る」と題し、東京が2020年を迎えたときにNECが一体となって展開できる社会ソリューションを示した展示を設けました。注力したのは、なるべく視覚化し、技術の内容をなるべくプロトタイプとして出すことです。来場者からも「研究所が変わった」「研究所が社会ソリューションに対して真摯に向き合っている」といった声をいただくことができました。研究所が新しいステージに上がった感覚を得られましたね。
また、最近の事例としてはNECのバイオプラスチックを通じたソリューションの企画にも携わっています。これまではパソコンや携帯電話などといった自社製品への活用がメインでしたが、インダストリアルデザイナーとして培ってきた自動車メーカーやサプライヤーなどのネットワークを通じて、バイオプラスチックを軸とした共創を加速させています。第三者とコンタクトをとり、ディスカッションすることによって、これまで気づかなかったニーズや課題点も明確になるものです。もちろん研究者の方自身でも研究を真摯に進められてはいますが、外に視野を広げていくことは、研究成果のさらなるステップアップや次なる戦略に有効だということを改めて確認できた事例でした。

常識から離れる視点がイノベーションを生み出す

いまの時代、組織が人材に求めているのは歯車ではありません。自動車でいえば、エンジンやシートなどの、一通りの機能が既にそろっている状態で、どのような変化を起こせるかが求められているのです。たとえば、車にナビゲーションが加わったときには、ドライバーのストレスを軽減することができました。これまで車としては十分に移動し、機能していたところに生み出した新しい価値です。次の時代をつくるために、自分が会社の次の方向性をどうバリューアップするか。これはもう、デザインやエンジニアといった領域の話ではなく、一人ひとりが持ちあわせる必要がある考え方だと思います。ぜひ自分が好きなことを、会社の組織力や資金力をつかって、どうやって実現するかというくらいの気持ちで、取り組んでほしいですね。
デザイナーとして、研究者のみなさんにお伝えしたいことは、常識にとらわれないでほしい、ということです。常識というのは、言い方を変えれば、常に変わらない意識です。そこには当然、成長もないわけですよね。革新もない。ですから、イノベーションを自ら起こしていくためには、いかに意識を変えていくかが重要だと思っています。いまそこにあるファクトだけを見るのではなくて、日常からものごとの奥、その奥、さらに奥にあるものについてまで関心をもつこと。これが、結果的にイノベーションのトリガーになると思っています。

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