ページの先頭です。
サイト内の現在位置を表示しています。
  1. ホーム
  2. 企業情報
  3. 研究開発(R&D)
  4. NEC研究開発の最前線紹介
  5. 画像処理による効率的なインフラ保全
ここから本文です。

画像処理による効率的なインフラ保全

「外から中をみる」技術で、道路や橋の安全を守りつづける

画像処理による効率的なインフラ保全は、これまで高コストで手間と時間のかかった道路橋の点検作業を高効率かつ高精度に行うためのソリューションです。撮影した映像の解析によって、遠く離れた場所からでもコンクリート内部に潜んでいる異常を推定し、安全な運用を可能にします。

1.世界的に、橋や道路の安全品質の保全が社会問題化

高田 巡NEC
情報・メディアプロセッシング研究所
主任研究員
高田 巡

高田: 橋や道路などを中心とした社会インフラの劣化は、これからの社会が抱える大きな問題の一つです。特に橋の利用ができなくなってしまった場合には代替路が存在しませんし、経済損失はもちろんのこと、人命への影響もはかりしれません。アメリカでは1980年代に道路の劣化や橋の崩落が相次ぎ、「荒廃するアメリカ」とさえ呼ばれる深刻な事態が起こりました。

これは今後、他の先進国でも例外ではなく、日本においても現在運用されている橋の多くは建設ラッシュに湧いた1970年代に建てられたものが多いですから、あと数年で橋の一般的な耐用年数といわれている「50年」を大量の橋が迎えようとしています。また、途上国においては、せっかく建造された橋が耐用年数を待たずに崩落してしまうといった事態が起きており、工事品質の担保という課題を抱えています。

2.低コスト & スピーディーに、正確なインフラ劣化診断を実現

高田: こうした背景からも、橋の点検は非常に重要なのですが、効率的で高精度な診断技術がまだ存在していないということも事実です。橋へのセンサー埋め込みといった技術もありますが、まだコストが割高ですし、赤外線カメラによる診断であっても、観測時の天気や気温などの条件に左右されてしまうため効率的であるとはいえません。

そこで、現在では正確さを確保するために作業員が橋を直接叩いて、音でコンクリート内部の状況を診断する「打音診断」を行っていますが、このためには橋に直接触れるための足場を建てなければならないので、大きなコストと長い時間がかかります。診断中は橋の交通をとめなければならないことも、大きな負荷の一つです。また、特に日本においては高齢化が進行し、労働人口も少なくなっていますから、より効率的で汎用的な技術が求められているといった事情もありました。

そこで、足場を組まずに、橋の交通をとめることなく、離れた場所からコンクリート内部の状態を正確に、しかも効率的に診断することができないかと考えて開発した技術が、今回の画像処理によるインフラ劣化診断です。

3.光学式カメラによる画像解析で、コンクリート内部の異常を推定

高田: 今回開発した要素技術は二つあります。一つは「光学振動計測」です。これは、非常に細かい精度で被写体の動きをとらえるという技術ですね。通常のカメラの解像度でとらえられるレベルと比べて、およそ100倍の精度でとらえることができます。

た とえば、2m×2mの範囲を2000画素×2000画素のセンサーで計測しようとすると、2mを2000画素で見ることになるので、ちょうど1画素が 1mmのサイズになります。この状態で動きを追跡して1画素左に動いた、右に動いたというところまでは割と簡単に計測できるのですが、橋の微妙な振動は 10ミクロンですとか、そういった単位で動いていますから、1/100画素精度で動きを追跡することが必要です。つまり、0.01画素ぶん右に動いたとい うところまでわかるような精度で計測しなければならないわけです。今回の振動計測では、それを可能にしたという点が大きなポイントになっています。

もう一つは「内部劣化推定技術」です。振動のパターンからコンクリート内部の状態を導き出すという技術で、亀裂があるときや剥離があるとき、また、空洞があるときで振動のパターンが違うということを発見し、原理実証することに成功しました。

可 視化については、現状ではいちばん単純な方法でやっているので、左右の動きだけを赤と青のグラデーションで表現していますが、もちろん振動は上下にも動き ますし、回転もします。さらには、近づいたり遠くなったりもするものです。今後はこうした全方位の運動まできちんと表現していくことをめざしていきたいで すね。あとは、時間的な軸です。たとえば、空洞があるところは青と赤に変わるタイミングが異なるということもわかっていますので、こうした時間情報も使う ということも考えています。

NECが得意とする画像解析技術によって可能になった、インフラ劣化診断の新たなアプローチだと思っています。

リアルタイムに映像を解析

4.ビッグデータ解析によって、効率的なインフラ保全を実現

高田: 今回の技術における何よりのポイントは、低コストと正確な診断を両立できたという点ですね。これによって、点検が必要な膨大な量の橋があったとしても、ざっとスクリーニングをして危険な場所だけを見分けることができるようになるわけです。詳細点検をしなければいけない範囲を絞りこむことができます。

橋の損傷を放置することは人命にも関わるたいへん危険な事態ですし、もし崩落して大規模な修繕工事が行われることにでもなればさらに大きなコストもかかってきます。より手軽に診断することができるようになれば、安心・安全な社会を実現できるうえに、橋にかかるトータルなライフサイクルコストを削減することにもつながります。これは、人間の身体と同じですよね(笑) 定期的に健康診断を受けて適切な対策を講じていれば、大きな手術を受けるリスクを減らすことができるわけです。

こうした意味でも、今後は診断だけでなく、予防保全にも力を入れていきたいと思っています。特に、この技術によって得られる解析情報を蓄積し、さらにはお客様がもつ設計情報や交通量情報などとも連携していけば、私たちNECが得意とするビッグデータ解析によって、劣化進行の予測や保全計画の最適化まで効率的に行うことができるようになります。

そのために現在、さまざまなお客様と共創しながら実証に取り組んでいるところです。おかげさまで、建築会社や道路管理事業者、自治体の方々にはたくさんのお問い合わせをいただいていますし、その他にも、プラントのメンテナンスや製造ラインの製品検査などに活用できないかなど、多方面からの引き合いもいただいています。

道路や橋というのは、当然のことですが、本来人々と社会をつなぐ役割を果たすものです。ですから、診断の部分に大きなコストと負荷をかけるのではなく、「運用」の部分にこそコストや手間をかけることができる方が、本来の役割にかなった、私たちにとっても幸せな社会をつくることができるはずですよね。そんな社会をめざすためにも、さらなる技術強化を進め、インフラの安定的な運用を実現していきたいと思っています。

技術のポイントを動画で解説

ページの先頭へ戻る