Augmented Wisdom

人の知性をアシストする人工知能

次に、社会課題の解決には多様で複雑な社会専門知識を持つ専門家の助けが必要となります。現在のAI技術では、データを解釈して特徴量を抽出したり、そこから予測モデルを設計したりする作業にドメイン知識を持った専門家が必要であり、分析にかかるコストや時間が問題になります。大規模で複雑な社会課題を効率良く解決していくためには、このような分析作業を自動化し、最低限のスキルで短時間に問題を解決していくことが求められます。NECはこのような分析作業の自動化を実現する特徴量自動設計技術や予測モデル自動設計技術を今後もさらに強化していきます。

3つ目の課題は、前例のない未知の問題への対処や、過去の事例が極めて少ない希少事例への対処です。現在のAIは膨大な量のデータから学習することでその精度を向上させますが、社会課題の解決においてはそのようなビッグデータがない状況があります。例えば、高度化するサイバー攻撃への対処は未知問題への対処が求められる問題の一例です。サイバー攻撃は日々進化しており、過去の事例から得た知識をそのまま活用しているだけでは新しい攻撃へ対処できません。このような前例のない未知の問題に対処するためには、知性を持った人間が行うように、類推によって創造的に仮説を生成する能力がAIにも必要になるでしょう。一方、参照可能な前例があるものの、学習するために必要なデータが極めて少ない状況も多くあります。めったに起こらない自然災害の予測と対策立案がそのような状況の一例です。前例の少ない中で、AIを活用して有効な対策を立案するためには、物理現象などのモデルに基づくシミュレーション技術などを組み合わせ、少ないデータを補うアプローチが必要になるでしょう。NECは産総研との共同研究を通じてそのような少量のデータからの機械学習技術の開発にも取り組んでいます。

最後に、実社会の問題をリアルタイムに解決するためには、問題の起きている現場でAIを動作させるコンピューティング環境が必要です。例えば、車の衝突回避のアルゴリズムを学習したAIは、ネットワークを介して接続するクラウド環境ではなく、車の中で動作させる方が適切ですが、限られたスペースと数10W程度の電力でリアルタイムに動作させることは課題です。そのような新しい要件に基づくコンピュータは、AIを処理するための新しいアーキテクチャによって実現されていく可能性があります。

このような4つの課題に取り組むことで、AIは人の知性をアシストし、人との協働によって多くの社会課題を解決していくパートナーとしての役割を果たしていくでしょう。

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