Insightful Sensing

実世界を理解・予測するセンシング

このようにセンシングの能力や精度が高まっていくと、実世界の認識や検出に留まっていたセンシングの機能は、実世界の予測や対処を実現する機能にまで発展していくと考えられます。予測や対処を実現するためには観察対象をモデル化することが必要になります。センシングによる単一の観測データで得られる情報は限られていますが、観察データを蓄積して複数のデータを統計的に解析することにより観察対象のモデルが得られます。獲得したモデルを用いれば、観察対象がどのように変化するかといった推測や将来の予測が行えるようになり、さらには観察領域で起こると予測される問題に対して事前に対処を計画していくことも可能となるでしょう。

例えば、現在の人をセンシングする技術は人物の顔画像からブラックリストにある犯罪者を自動で特定することができますが、将来はセンシング技術の高度化により、カメラに映る人物の不審な行動を検知し、さらにその人の表情から心理状態を推定することで、犯罪の予兆を捉えることも可能になるでしょう。犯罪の予兆検知に基づいて警備を強化すれば、人が集まる場所での大規模な犯罪の未然防止にも活かせると考えられます。

また、モノをセンシングする技術は、構造物の外観から損傷を特定することに活用されていますが、センシング技術を高度化させることで、観察対象の正確なモデルを作り、構造物内部の劣化状態を推定することが可能になります。これにより、優先的に保守をすべき建造物を特定し、適切な保守計画を立ててインフラの長寿命化を図っていくことができるでしょう。

さらに、衛星画像などを利用した環境をセンシングする技術は災害時に被災地の状況を把握するために利用できますが、センシング技術を高度化させ、センシング情報から地盤のモデルを作ることにより、広域でのリスク推定や微細な変化の検知から災害予測に応用することもできます。これにより、災害後の状況把握から、災害前の個別の避難指示を実現し、災害による被災者を削減することも可能になるでしょう。

このように、センシング技術の進化によって実世界の観察対象の理解が深まり、様々な社会課題の解決に応用されていきます。さらに、解くべき社会課題が定まると、問題に対処するために必要となる情報が特定され、そのような情報を能動的に取得するためのセンシング技術が必要とされるようになると考えられます。目的を持ってセンサ自体が能動的にセンシングする情報を探索する技術はアクティブセンシングと呼ばれていますが、AIやロボティクス技術の発展と共に、アクティブセンシングの技術はさらに進化し、その応用が広がっていくと考えられます。例えば、センサ自体が動いて情報を取得する運動型のアクティブセンシングは、災害現場などにおいてヒトやモノを探索する用途にも活用されるでしょう。

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