Brain-Inspired Computing

脳に倣うコンピューティング

AIを用いた高度な知的処理を高い電力効率で実現する新たな計算機アーキテクチャとして、人間の脳の神経回路を模したコンピュータが注目され始めています。これまで計算機の処理性能向上を支えてきたムーアの法則による半導体の微細化が限界に近づいており、プロセッサ単体での処理性能の向上には限界が見えています。現在、Deep Neural Network(DNN)の学習処理など大量の計算処理の実行には、データセンタで多数のCPUをつなげて処理を並列化するスケールアウトのアプローチが取られています。しかし、スケールアウトによる高速化ではスケールに比例して消費される電力も膨大になっていく問題があります。データセンタによるDNNの学習処理では数100KWもの電力消費が発生すると考えられます。一方、人間の脳で消費されるエネルギーは高々20W相当と言われており、知的な処理を行うのに必ずしも大量の電力は必要でないことが示唆されます。人間の脳は、膨大なデータを用いた厳密な計算ではコンピュータにかないませんが、論理的思考や新たな発想をするといった高度な知的処理では優れた性能を発揮します。このような人間の脳の特徴に倣い、知的処理を効率的に実行する新しいコンピュータの開発が進められています。

これからのコンピュータアーキテクチャは、汎用の処理を厳密に行うCPUと、高度な知的処理などの専用の処理を効率的に行うアクセラレータとを組み合わせるヘテロプロセッサ構成が主流になっていくでしょう。さらには、高度な知的処理を実現するために脳の神経回路網(ニューラルネットワーク)や神経細胞を模倣した脳型コンピューティングへと発展していくと考えられます。

ヘテロプロセッサ構成は、汎用のマルチコアプロセッサに加えて、リアルタイム処理能力に優れたメニコアプロセッサ(GPGPUなど)やベクトルプロセッサなどを組み合わせた構成で実現されていきます。異なる種類の処理に適した複数のプロセッサを最適活用することで、電力あたりの性能向上を実現していきます。これはいわば既存のノイマン型アーキテクチャの究極の姿ともいえるかもしれません。

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