Cloud to Edge

エッジに広がるクラウド

次に、クラウドで行われていた分析や予測処理の一部がエッジにも移ることにより、クラウドからエッジやデバイスにわたるシステム全体の最適構成技術の重要性が高まります。クラウドに一極集中させるシステムに比べ、エッジを導入したシステムでは分散処理によるオーバーヘッドによってむしろリアルタイム性が悪化してしまう問題が起こり得ます。リアルタイム性の要件を満たすためには、そのようなエッジでのオーバーヘッドも考慮し、クラウドからエッジにわたるシステム全体の構成やデータの配置、処理の割り当てを最適化することが求められます。そのようなシステムの最適化を集中的に行うとスケーラビリティに限界が生じるため、将来は自律分散制御技術によって、実世界の変化に合わせて分散で適応的に最適化されるシステムが実現されるでしょう。これにより、IoTを利用するユーザはデータの置き場所や処理の実行場所を意識することなく、目的とする機能と性能を容易に獲得できるようになります。

3つ目に、エッジやデバイスの数が増加するにつれて、無線通信網の大容量化も課題になってきます。2020年にはIoTデバイスが100億台規模に拡大し、これらの多くは無線通信網によってクラウドやエッジに接続されるようになります。例えば2025~30年には、IoTデバイスによる無線トラフィックは全トラフィックの40%を占めると予測されています。今後増大するIoTデバイスの無線通信を可能にする上では、無線伝送方式の進化(周波数利用効率の向上や周波数帯域幅の拡大)と基地局設置の高密度化が重要になります。無線伝送方式の進化については、現在ピーク伝送速度が1Gbps級の第4世代携帯(LTE-Advanced、4G)のインフラ整備が進んでいます。2018年頃から10Gbps級のピーク伝送速度を実現できる第5世代携帯(5G)の試験導入が始まり、さらに2022年頃から100Gbps級を実現できる第2フェーズの第5世代携帯(5G+)が導入されていく見込みです。一方、特に都市部においては見通しの良いビルの屋上など、適切な無線局の設置場所を確保することが困難になっている問題があります。今後は、無線基地局の小型化技術によって、小さなスペースでも無線基地局を設置することが可能となり、無線基地局の高密度配置が実現されていくでしょう。

このように計算機の小型化や省力化、システム構成や処理配置の最適化、無線ネットワークの大容量化を実現する技術の進展によって、IoT時代のシステムアーキテクチャは集中と分散を柔軟に使い分けて最適化する構成へ変化していきます。

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