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ヒアラブルが切り拓く、新しいユーザーエクスペリエンス

千葉工業大学 先進工学部
知能メディア工学科 教授安藤 昌也
NEC古谷 聡

近年注目されているウェアラブルデバイス。NECは耳に着用するデバイス「ヒアラブル」を開発しました。新しいコンピューティングスタイルを実現するヒアラブルは、どんな可能性を秘めているのか。長年ユーザーエクスペリエンス(UX)の教育・研究をしている安藤昌也教授とNECの担当者が語ります。

安藤 昌也
安藤 昌也安藤 昌也 千葉工業大学 先進工学部 知能メディア工学科 教授
総合研究大学院大学文化科学研究科メディア社会文化専攻修了。博士(学術)。ユーザーエクスペリエンス、人間中心設計、エスノグラフィックデザインアプローチなどの研究、教育に従事。人間中心設計およびアクセシビリティの国際規格に関するISO/TC159(人間工学) 国内対策委員会委員。人間中心設計に関するJIS規格の原案作成委員長を務める。
古谷 聡
古谷 聡古谷 聡
入社以来、人とサイバーをつなぐ商品やサービスの企画、社会実装に取り組み、現在はヒアラブル事業統括として国内外における事業展開を担当。趣味は、オートバイでの一人旅。
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ヒアラブルが切り拓く、新しいユーザーエクスペリエンス

まず、ヒアラブルデバイスとはどんなデバイスなのでしょうか。

コンセプトは「ハンズフリー、ノールックなコンピューティングスタイル」です。ワイヤレスイヤホンのように耳に装着するため両手が自由になり、操作画面もないので視線を占有せず生活を妨げません。また、耳の音響特性を利用した本人認証や、継続的なインターネット接続が可能なので、特定のユーザーがどのような状態にあるのかを常にセンシングすることが可能です。 デバイスの内部はセンサーの塊です。マイクとスピーカーが内側に向いていて、装着するとユーザーの外耳道の音響特性を解析し、本人認証が行われます。モーションセンサーで、装着している人が座っているか、立っているかなどの姿勢の状況もわかります。また、GPSの電波が届かない建物の中や地下街などでも、高精度に位置を測位したり、光学センサーを搭載することで、血流や脈波などのバイタルデータも安定して測定できます。

今、音声インターフェースを使ったデバイスやサービスが流行っています。アマゾンエコーなどが普及し、アメリカで火が付いて、先日LINEのClovaのようなサービスが発表され、日本でも音声UXの時代がやってきそうです。

話すこと、聞くことをインターフェースとして考えるとき、「人によって慣れや文化が影響するのではないか」と考えています。このデバイスも普及するためにそういった文化ができていく必要があるのだと思います。一世を風靡したNECの二つ折りケータイ。あの形状は口元にマイクが来て「私は話をしています」ということを周囲に伝えるという文化的な作法に合致していたのだと思います。

最近では端末を耳に当てず、イヤホンとマイクで話す人も増えてきました。ヒアラブルデバイスが普及するための素地はできつつあるのかもしれません。

私自身は音声UXが好きで、メールの入力は音声で行うし、ニュースも音声読み上げ機能などで歩きながら聞いています。ヒアラブルデバイスによって生活そのものが変わる可能性がありますし、期待したいと思います。

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ヒアラブルデバイスがつなぐモノ・コト

ヒアラブルデバイスはどのようなUXを実現し、それはサービスをどのように変えていくでしょうか?

このデバイスを装着している人が誰で、いつ、どこにいてどんな状況なのかを捉えることができます。言ってみるとユーザーのコンテキストをセンシングし、適切なタイミングで情報を提供することができるので、生活シーン、ビジネスシーンにかかわらず、さまざまなシチュエーションでのサービス利用が広がると考えています。
その場合、センシングして状況把握しながら、「今だよね」というタイミングをはかることが大事だと思っています。提供される情報は、ありがたいときとありがた迷惑なときがあり、人それぞれ、その時々のコンテキストによって違いがあると思います。
このあたりを明確にするために、AIのアクティブラーニングという技術があります。これは対話しながらその人を学習する技術。ヒアラブルデバイスでも、チャットボットとの音声による対話からユーザーの好みを理解する技術が必要になるかもしれません。

先日学会で発表してきたばかりなのですが、ありがた迷惑の情報をテーマに、「コンテキストを読んだ上での情報の出し方、タイミングを変えるということができたときに、ユーザー側の特性によって受け止め方に違いがある」ということを研究するために実験を行いました。
わかったことは、コンテキストを読み取って情報をプッシュするだけではなく、その人の普段の行動に対する態度を理解する必要がある、ということでした。その点、ヒアラブルデバイスによるサービスは継続的に接続して、その人の行動特性を把握できる点で、すごく可能性が高いと思います。

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ヒアラブルデバイスが持つ可能性

ヒアラブルデバイスはどのような人が使うのか、どのように広がるのか、また将来的なビジョンについてお聞かせください。

まず、B to Bから広がっていきそうです。労働人口が減っていく現状で、人が身につけ、支援するシステムのなかにこのデバイスを活用してもらえると、従業員側のニーズと情報システム側のニーズがマッチすると思います。また、電動化、自動化に加えて、情報化が進む自動車においても、いわゆるコネクテッドカーを超えてコネクテッドドライバーへと進展していくなかで、ヒアラブルデバイスはフィットするのではないでしょうか。

すごく色々なところで使えると思います。サービス業ではインカムが一般的に使われています。インカムでは垂れ流しの情報が、ヒアラブルデバイスを使えば必要なタイミングでパーソナライズされた情報が得られるようになり、サービスのクオリティが向上するでしょう。

もう一つ屋内測位の機能に興味があります。今、私自身は「利他的UX」という人助けのためのUXについて研究しています。例えば高層マンションで、居住者の心停止などの際の緊急対応として助け合いの仕組みを考えたとき、GPSだけでは居住しているフロアが分からない。このデバイスはそのような問題も解決するかもしれません。

最終的には、実世界とサイバー世界をつなぐために最適化されたコンピューティングスタイルを確立したいです。電車の中で、うつむきかげんにスマホをじっと見ている光景は、ここ10年くらいの行動です。これが最終的な形ではないと思っています。今後、両手、両目が自由でありながら、継続的にネットワークにつながり、タイムリーにパーソナライズされたアシストをしてくれるスタイルと環境は、サービスやワークスタイルの革新を実現できると思っています。

ノートパソコンで何かしていて中断して移動しなければならないとき、我々はノートパソコンを半開きにして持ち運ぶことがあります。これはネット接続など、コンテキストを切りたくないという願望が表れていると言えます。ヒアラブルデバイスは、今のデバイスでは実現できていないリアルな行動のコンテキストとオンラインのコンテキストの微妙なズレを埋めてくれるものになるのではないでしょうか。

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