デジタルトランスフォーメーションで、
つなぎ・つくり・変革する

NECはデジタルトランスフォーメーションをどのように捉え、どのように課題解決に活かしていくのか。
NECの榎本亮と小玉浩に、国際的な評論活動を展開するシンクタンク・ソフィアバンク 藤沢久美さんが話を聞きます。

榎本 亮
榎本 亮
NEC執行役員 兼 CMO (チーフマーケティングオフィサー)
ビジネスイノベーション統括ユニット担当(副)
藤沢 久美
藤沢 久美
モデレーター シンクタンク・ソフィアバンク
小玉 浩
小玉 浩
NEC執行役員
エンタープライズBU担当(副)/
SI・サービス&エンジニアリング統括ユニット担当(副)/
サプライチェーン統括ユニット担当(副)
  • デジタルテクノロジーの力により、お客さまと共に社会価値を創造していきます。
  • お客さまの価値最大化、社会課題の解決のために、NEC自身も変わり続けます。
  • DXの先の未来を見据え、豊かで「安全」「安心」「効率」「公平」な社会を実現します。

デジタルトランスフォーメーションはステップアップする機会になる

昨年のNEC Visionでは「AI・IoT」の広がり、そして企業のデジタライゼーションにどう取り組むかについてお話をうかがいました。今年は「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」となり、キーワードの変化以上に世の中の変化のスピードが速いと感じています。まず初めに、NECはデジタライゼーションからDXへの流れによるビジネス環境の変化をどう捉えているかについてお聞かせください。

「Society5.0」というキーワードも出ていますが、このDXという変革の波は、過去に人類が経験してきた産業革命のどれよりも大きなものであり、かつこれまでにないスピードで進行しているものだと思います。このスピードのなかで各企業とも事業を創ろう、変革しようと躍起になっていますが、マラソンで例えると先頭集団とそれに続く後続集団が縦に長く伸びているような状態だと思います。DXのトップランナーたちは、DXによって新しいビジネスのルールをつくり、ゼロから市場を立ち上げています。NECとしては、お客さまとの共創を通じてお客さま自身の事業変革を支えていくとともに、自らも先頭集団の一人として事業創造にチャレンジしています。

デジタル化とはゲームチェンジそのものです。すなわち時間軸が変わり、ビジネスのルールが変わります。デジタルテクノロジーが整備され、あらゆることが短期間で実現できるようになっています。人と人がデジタルにつながることで、ビジネスの前提が突然変わり、新たなプレーヤーが新たなルールで市場をつくっていく、そういうことが起き始めています。私たちは、従来のIT化された領域に限らず、ICTが価値を発揮できる領域が大きく広がっていると認識しています。強いコンピューティングパワーとネットワーク技術を持つNECが、そうした領域でエコシステムをつくり、社会課題を解決していく。私たちにとって、このビジネス環境の変化は、まさにチャンスだと考えています。

世の中にとってよりよいルールへ積極的に変えていく

お二人の話を聞いていると、ルールが変わってきていることを強く感じます。今、ビジネスの世界は、例えて言うと、野球をプレーしていると思っていたら、いつの間にかパス回しが早いサッカーになっていた、という状況ですね。DXによってビジネスのルールが変わっていく時代に、NECはそのルールをつくる側に回るのでしょうか?

ルールに振り回されるのではなく、積極的に世の中にとってよりよいルールへ変えていくべきだと思っています。そのための提言をNECから発信するために、新しい組織「レギュレーション調査室」を立ち上げました。ビジネスのルールが変化していくときには、明文化された法律を守るだけでなく、世の中の民意に応え、社会的なコンセンサスを得ることが必要と考えています。社会にとってよりよいルールに変えていくために、もっとこうした方がよいのではないか、こうしたら効率的なのではないか、といったことを国や社会に提言していくことがNECの社会的責任だと思っています。

とても納得できます。トップベンチャーは新しいルールを提示するものの、必ずしも全員にとって受け入れられるルールではないことが多いですよね。それを調整するような存在がNECだということですね。

昔の話になりますが、一つのコンビニ店舗に1日あたり70台のトラックが商品配送に来ていましたが、そこに共同配送という新しいルールが導入されました。結果、1日あたりのトラックが7台に減り、店舗の負担減、配送会社の省エネルギー化の実現、ドライバー不足の解消、近隣の交通渋滞の解消という価値が生まれました。
このように、価値視点で考えるとビジネスのルールを変えるというのは自然なことです。人がつながり、システムがつながりやすくなった時代、NECは単なるICTベンダではなく、社会価値を創造する企業として、お客さまと一緒に価値視点でルールを変えていく、つくっていくことに積極的に参画していきます。

NECのように幅広い事業領域を持っているからこそ、より多くの業界に受け入れられるような視点でルールをつくっていくことができるのですね。ある種ルールは一つのインフラのようなものだと思いますが、DXを実現するためにどのようなインフラを用意すべきなのでしょうか。

インフラや基盤といった言葉は色々な意味合いで使われていますが、NECがいう基盤は、マイクロサービスと言われるようなアプリケーションの部品、実現するために必要な技術者やアーキテクトなど、お客さまの事業を一緒に実現するために必要なビジネス基盤を指しています。DXを実現するためにはこのような基盤が必要だと思っています。

ある意味、知的基盤をNECは提供しているということですよね。システム基盤ではなく、価値を創造するための基盤ということですね。

その通りです。価値を創るための効率的な手段として基盤があります。価値最大化のために、NECだけでなく、必要があれば他社と組んで、お客さまに最適な組み合わせを提供していきたいと思っています。

価値創造のためには、NEC単体で完結しようとするのではなく、必要に応じてパートナーと共創するということもしていくということでしょうか。

オープンなエコシステムのなかで、さまざまなパートナーと共創をしてきていますし、これからも、もっと広げていきたいと思っています。
もちろん従来から強みとしている部分も大事にしながら、エコシステムを組み合わせて総合的にお客さまの課題を解決していくための知見と経験を提供していきたいと考えています。

もう一つ、これからのビジネスにとって重要なのはセキュリティです。例えば、新しいビジネスを考えたときに、企業の基幹システムをインターネットにつないだ場合、お客さまのビジネスの継続性という点でリスクが生じます。セキュリティはNECの得意な領域です。NECなら安心というお客さまもいらっしゃるのではないでしょうか。

経営者の本気とデジタルネイティブ世代の可能性

今後、経営者がDXをどう捉え、そこに向けて何を準備すればいいかを教えてください。

DXによってルールが変わると言われ、頭では理解できても、人間は変革に対し抵抗するのが普通の感覚です。これからはこの変革をマネジメントすることが重要になると思います。このとき、経営者の本気が問われるのではないでしょうか。経営者が本気にならないと、社員はついていきません。変革を自社の強みにいかに取り込むかが重要です。DXは人によってはピンチですが、人によってはチャンスです。ピンチかチャンスかは事業環境により異なると思いますが、いずれにしても今は変革の潮目であると思います。

例えば、日本市場においては労働力不足に対してどう準備していくかは喫緊の社会課題です。企業としてデジタルを活用してどう社会課題を解決していくかということは、経営者自身が考えるべきテーマと言えます。その解決の手段としてAIやクラウドを活用し、どう課題と向き合い自らをどう変革していくか、現在は模索している状況といえます。私たちは、お客さまと一緒にその準備を進めていきます。

DXを実現するために、デジタルネイティブ世代に活躍の機会を与えるというのも大切なことだと思います。この世代に勇気を持って任せるというのは、結果的にイノベーションのスピードを上げることになると考えています。

実際NECでは、昨年、まさにデジタルネイティブ世代といえる入社1~2年目社員の組織を超えたチームをつくり、AIを活用したサービスのアイデアとプロトタイプを制作しました。
フランクなチームでアジャイルソフトウェア開発に取り組み、クラウド環境におけるAIやAR(※1)を活用したとても斬新なアイデアが生まれ、お客さまにも好評でした。
このような取り組みはすでにさまざまなプロジェクトで進めており、現在は40以上のスクラムチームが動きだしています。こういった取り組みを通して、デジタルネイティブ世代の柔らかい頭と、これまで蓄積してきた業務に対する経験と知見がバランスよく組み合わされることで、新たな価値を生み出すことができるようになると思います。

確かに世の中はデジタル化が進んでいるため、デジタルネイティブな世代に仕事を任せていった方がいいと思いますが、非デジタルネイティブな管理職の人たちをどのように位置付けていくべきなのでしょうか。

世の中に何かしらのインパクトをもたらしたことに対して、NECとしてどう責任をとっていくかということは、ビジネスに対して経験値を持っている人が入ってお客さまとコミュニケーションしなければ成り立たないと考えています。つまり、非デジタルネイティブな管理職は、デジタルネイティブ世代に自由度を与え、その一方で経験、知見を活かしながら事業やお客さまに対し責任をとっていくことが求められます。

今後はさらに、デジタルネイティブ世代のテクノロジーに対しての理解と、非デジタルネイティブな世代の業務に対する経験と知見がバランスよく組み合わされることで、新たな価値を生み出すことができるようになると思います。デジタルネイティブな部分の厚みを増すだけではなく、いかに組み合わせるかが重要なのです。

常に何でも新しいものを求めるのではなく、イノベーションとこれまでの経験や知見とのバランスのよい組み合わせが大事ということですね。


※1 Augmented Reality:拡張現実

NEC自身も変わり続ける

客観的に見てNECは幅広い業界での経験や知見といった実力は十分持っているものの、謙虚すぎると思うことがあります。お客さまから見ると不安を感じる部分もあると思うので、もっと実力をアピールした方がいいと思います。(笑)そういった点も含めてこれからNEC自身がどう変わっていくのか、についてお聞かせください。

私たちは社会課題の解決に取り組み、社会価値創造という新しい土俵で貢献していきます。従来のIT化された領域を超えて、ICTにより価値を創造していく領域はたくさんあります。NECは、それを実現するバックグラウンドとして、テクノロジーアセット、具体的には、AIやセキュリティ、クラウドという手段や、それをやりきる人材も豊富です。これらのアセットを組み合わせることで新たな価値を創造し、お客さまの課題、社会課題を解決していきたいと思っています。

NECも内部では相当変化してきています。ナレッジの流通という観点で言えば、これまでは全社ナレッジポータルに資料を置くか、同じ組織のなかでメールに添付して共有するということが通常の手段でした。これではスピードも出ませんし、社内のコミュニティが広がりません。それが最近は、テーマごとに有志が集まるといったコミュニティが社内に自然発生してきており、参加者の間では社内SNS上で経験値がそのままやりとりされています。資料化し形式知化してから共有するという手続きを経ませんので、鮮度という観点では絶対にこちらが有利です。ナレッジの拡散という意味でもコミュニティの広がりという観点でも、古い企業体質を変えつつあると感じています。デジタルというとテクノロジーの話が想起されがちですが、このように組織で働く人の意識を変えてくれるものにもなっています。

実際のセールス・プロモーションの場面でも、社員の意識が変わってきたと感じています。
これまでの製品紹介やソリューション紹介ではなく、お客さまが見たらどう思うのか、市場はどう思うのかの視点でプロモーションを考えています。プロモーションを検討するに当たり、こういった視点での議論を繰り返すことで、製品や技術視点ではなく、お客さまや、社会課題視点で物事が考えられるようになり、社員の意識が変わっていくと考えています。

昨年、これからのNECは「コト」をつくっていかなければならないとお話をうかがっていたのですが、実践されているということですね。

その通りです。そのコトをつくっていくための仮説の立案、実行、検証を早く回していかなければならないと思っています。これからは正解が分からないなかで、お客さまの課題や社会課題をどう解決していくのかを考えることが重要です。仮にその解が間違っていたとしても原因を突き詰めて修正していけばよいのです。変化に対応することが重要だと考えています。

まさに「NEC transformation」ですね。

ビジネスモデルを変え、社会を変え、人々のポテンシャルを引き出す

最後にNECが考えるDXで描く未来についてお聞かせください。

日本は課題先進国とよく言われています。人口減少の問題一つをとっても、日本は先行していますが、世界各国がいずれ直面する問題です。日本の税収が減るなかで、どのようにインフラを維持していくのかは重要な課題であり、NECも課題解決に取り組んでいます。超高齢社会、人口減少社会において高いレベルで安全・安心を維持できるというノウハウは、各国に輸出できるかもしれません。デジタル化によって知見や経験をコピーして活用できる時代には、そのようなことも容易にできるようになっています。ノウハウを輸出し、世界中のパートナーを巻き込んで地球全体の社会課題の解決につなげていきたいと思います。また今後、アウトカムベースのビジネスが主流になったときに、報酬なども含めた契約形態も変わっていくと思うので、ビジネスモデルのトランスフォーメーションも考えていく必要があると思っています。

社会課題の多くは矛盾から生まれています。例えば、全世界で廃棄されることになる3分の1の食料のために、エネルギーや労働力を使っている矛盾。かたや食料を得られない人々が存在している矛盾。こういった矛盾を多くの人たちの知恵とデジタルをつなぎ合わせ解決していくことに大きな意味があると思っています。こうした社会課題の解決に対し、人々が持つポテンシャルやモチベーションを引き出すのがデジタルの力だと考えています。すでに社内でも始めていますが、例えば「クラウドソーシング」のように、ある課題に対し、必要な知恵やスキルを持つ人がバーチャルに集まり、その解決のために能力を最大限発揮できる世界です。これも従来の組織の枠を超えた「働き方改革」の実現です。それによって働く人たちは常にモチベーションを高く持つことができますし、豊かな社会を継続的につくることができると思っています。
「人が生きる、豊かに生きる」ことを念頭において、「安全」「安心」「効率」「公平」で豊かな社会を実現するという姿勢は変わらないことだと考えています。

社会課題の解決はこれまでビジネスとして捉えづらいものだと言われてきましたが、これを解決してなおかつビジネスに変えていくことができる時代になるのだと思いました。DXだけでなく、DXの先にある未来を見据えたお話が聞けて、希望が湧いてきました。