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NEC iEXPO関西 2014 スペシャルセッション
ビッグデータ活用成功のために ~先進的な活用例と課題への挑戦~

2014年7月10日
「NEC iEXPO関西2014」より

大阪ガス株式会社
情報通信部 ビジネスアナリシスセンター 所長
河本 薫 氏
NEC 取締役執行役員常務 兼 CMO  清水隆明
モデレーター:
株式会社野村総合研究所
ICT・メディア産業コンサルティング部
主任コンサルタント 鈴木 良介 氏


ビッグデータ活用成功のために~先進的な活用例と課題への挑戦~


競争力強化や新たなイノベーションの創出を目指す企業にとって、ビッグデータの活用はきわめて重要なテーマです。しかし、ビッグデータ活用を収益やビジネス上の価値につなげていくためには、データ活用の方法や適用領域の選定など、解消しなければならない課題もあります。ここでは、データ活用の先進企業である大阪ガスの河本 薫氏、モデレーターにビッグデータ市場に精通した野村総合研究所の鈴木 良介氏をお招きし、当社 取締役執行役員常務 兼 CMOの清水とともに課題解消に向けた技術面、組織面でのアプローチ、さらにはビッグデータ活用の将来像について議論を交わしました(文中・敬称略)。


データを“価値につながる情報”に変えていくためのハードルとは


 

鈴木: ビッグデータという言葉が登場したのが2010年。すでに5年の時が経過する中で、 国内でもビッグデータ活用を中期経営計画の中に盛り込むなど、経営上のテーマに据える企業も出てきています。 もちろん企業の関心は、ビッグデータをいかに収益につなげていくかだと思います。しかしながら、 データを売上へとつなげていくプロセスには、いくつかの越えなければならないハードルがあります。

一般にデータを活用するには、得られたデータがどう役に立つのかという解釈を行い、データを意味のある情報へと変える。さらに、売上につながる情報とそうではない情報とで選別を行い、ターゲット(顧客)の振る舞いを変えるための具体的な仕組みを構築していくという流れとなります。この際、「データを価値につながる情報に変える」設計は特に重要かつ非常に難しいものです。

売上につながるまでのビッグデータの活用プロセス売上につながるまでのビッグデータの活用プロセス

ビッグデータ活用では、世の中の事象から生じる「データ」を、意味のある「情報」に変え、そこから人の振る舞いを変えることによって「価値」を導き、その結果としての「売上」へと進んでいくというプロセスをたどる。



そこで、まずは清水さんに「データを解釈して価値につながる情報に変えることがなぜ難しいのか」「価値につながる情報に変えるためにはどんな方法があるのか」についてお話しいただければと思います。

清水: 企業では様々なデータを持っています。しかしそのほとんどは業務アプリケーションで扱われる構造化されたデータです。それらの分析に関しては既存のBI(Business Intelligence)ツールなどで概ねカバーすることが可能です。

その一方で、音声や動画といった非構造化データについてはどうでしょう。ほとんどの企業では、まだまだそうしたデータを変換・分析して、価値に変えていくということができていない状況です。例えば、コールセンターでのやり取りについては、多くの企業がその内容を録音して音声データとして保存していますが、そのデータをビジネスにおいて積極的に活用しているケースは多くありません。

ただし最近では、そうしたデータをビジネス上の価値に変えるための効果的な手段も登場してきています。具体的には、音声を認識してテキストデータに変換。それをマイニングエンジンで解釈していくといった方法です。

例えば、NECのテキスト含意分析技術は、単語ではなく全体の文意を理解し、表現の違いに左右されず、より高度な分析や活用をすることができます。例えば「私はリンゴが好きだ」という文章と「私はリンゴが好きだという人を信じない」という文章では、その意味が明らかに違うわけですが、それらをちゃんと違う意味だと理解できるようになっているのです。

鈴木:なるほど。多様なデータからきちんと価値を生み出せるように技術が進化しつつあるわけですね。それでは技術以外の部分での価値を生み出すための仕組みや、支援の方法などについてはいかがでしょうか。

清水:データから価値を生み出すには、やはりお客様起点で企業のニーズなり、経営課題なりを理解していないと難しいでしょう。そうした観点からデータサイエンティストに対しては、単にデータを分析する以外の役割が求められています。

料理でいえばデータは食材に過ぎず、データサイエンティストはシェフ。お客様が何を食べたいのかということを、お客様に寄り添って理解することが一番大切なのです。つまり、データサイエンティストは、もはやコンサルタントでもあり、何が価値になるのかをお客様と一緒に探索していくことを考えなくてはならないのです。


データから価値を抽出するのに必要な「目利き力」


鈴木: 河本さんは、大阪ガスの中でデータ分析を実践し、そこで得られた知見をそれぞれの現場に提供してビジネス価値を生み出していくというお立場ですが、その活動のなかで特に着眼しているポイントはどこでしょうか。

河本:いろいろとありますが、データ分析にも成功しやすい領域と、しにくい領域があることを特に意識しています。例えば、データ分析は古くからトレーディングやマーケティングに適用されるケースが多かった。それはなぜかというと、これらの領域では、勝負に例えるなら100勝0敗でなくてもよかったからです。例えば51勝49敗でも、データを活用する以前の状態が50勝50敗だったならば「効果が得られた」と言えるわけです。

一方で人の生死にかかわる医療の現場や、一歩間違えば事故につながってしまうような工場などでは全勝でなければならないため、適用が難しい。これらは極端な例ではありますが、要するに適合性の高い部分をいかに見極めるかが非常に重要なのです。それを私は「目利き力」と呼んでいます。

さらに、実際に分析結果を適用する段階では、分析力で問題解決するプロセスにいかに現場を巻き込んでいくかが、最も重要なテーマになります。大切なのは「現場の方に役立つ分析ができたから使わせること」ではなく、「現場の方に関心を持ってもらうこと」なのです。

このように私たちが心がけていることは、現場の方々を中心に考えることです。データ分析者はどうしてもビジネスモデルの変革など、大きな絵図を描いてしまいがちです。しかし、そこはぐっと心に秘め、現場の方々が幸せになれるところから徐々に話を進めていきます。“分析屋”がボトムアップで進めていく際には、最初はサポーターがいない状態です。そういう意味では、現場にサポーターを一人、二人作っていくということが肝心で、まずは現場が喜ぶようなところから始めてみるのが、遠いようで近道だと思います。

鈴木:問題解決をしようとする意識が現場になければ、当然、その効果は薄くなる。そこで、イノベーションを自ら求めていくような組織風土や文化が現場から自発的に起こるような環境づくりを目指しているわけですね。

このように河本さんは、自社の中でイノベーションを起こしましょうという立場ですが、それに対し清水さんは、顧客がイノベーションを起こせるように支援していく立場にあります。

こうした観点から、清水さんに伺いたいのが「イノベーションを支援する人材像」についてです。社外からイノベーションを起こすことを支援する人材は、これまでSIerに求められていた人材とは違うように思います。そのあたりの取り組みについて教えてください。

清水:お話の通り、SIerに求められる価値が少しずつ変わってきたと思います。こうした中で、特に大きな課題となっているのは、「新規事業を進めていくための人材」をどうやって育てるのかという点です。そこでNECでは、「ビジネスモデルクリエイター」という人材像を定義し、それに準じた人材の育成にチャレンジをしています。

これは、ビジネスラインから優秀な人材を出してもらい、そうした人たちに今までまったくやったことのない新しいプロジェクト(新規事業)を任せるというものです。その際、大学教授など有識者のお知恵を借りたり、新しい北米の成功事例などを学びながら、新たなメソドロジーなり、アプローチの仕方なり、ビジネスモデルなりをどうやってクリエイトするかを学んでもらうわけです。こうしたプロジェクトに従事してもらうことによって、新規事業を興すとともに、新しい人材を育成していこうというプロセスを回しています。すでにその取り組み自体は1年半をすぎ、そのバージョンアップを現在進めているところです。


まずはチャレンジし、小さな成功を社内で積み上げていく


鈴木: それでは今後、ビッグデータ活用やデータ分析はどのように進展していくとお考えでしょうか。そしてそれに向け、企業はいかなる対応を行うべきなのでしょうか。

河本:今後、日本企業に求められてくるのは、データ分析を新しいビジネスやサービスの創出に生かすことでしょう。当然それは、これまでのようにデータ分析を業務改革や売上向上に役立てていくことに比べ、はるかにハイリスク・ハイリターンとなるでしょう。その際には、過去から脈々と続けられてきた企業文化がハードルとなることもあるかも知れません。

しかし、そうした過去の方法論を打破し、新しい方法にトライしていくことでしかイノベーションは生まれてきません。そうした意味で、ビッグデータ活用は企業にイノベーションをもたらす1つの契機となり得ると思っています。当社としてもそうしたチャレンジを通じて、日本の企業、社会の活性化に貢献していきたいですね。

清水:企業におけるビッグデータ活用の機運には、さながら滑走路から飛び立とうとしている飛行機のような勢いを感じます。すでに多くの事例も登場しつつあり、それらをお手本としながら自社の取り組みにチャレンジできる環境も整っています。

ただし、強調しておきたいのは「必ずしも高額のツールやエンジンが必要なわけではない」ということです。まず重要なのは、一にも二にもチャレンジしていただくこと。当初はスモールスタートで取り組みを開始し、小さな成功を社内で積み上げていく。順次、そうしたプロセスを回していくなかで、必要であればデータの対象範囲をひろげ、より高機能、高性能のツールを活用すればよいと考えています。つまり、無理をせず各企業のニーズや予算、期間に応じて思い思いの成長曲線を描けばよいのではないでしょうか。

そうしたお客様のビッグデータ活用を支援するためにも、NECでは活用プロセスを支援する体制や人材の育成、オンリーワン/ナンバーワンの技術の開発など、多岐にわたった展開を進めていきます。