2015年3月19日
日本電気株式会社
NECは、光集積化技術であるシリコンフォトニクス(注1)を活用した小型・低電力な光スイッチモジュールにおいて、光信号の低損失化を実現することで、世界で初めて、ネットワーク規模に応じて入出力数を柔軟に拡張できるシリコン集積光スイッチ技術を開発しました。 今回、光スイッチ内のシリコン光回路と光ファイバ間の結合部分において、サイズが異なる光のビーム径(スポットサイズ)を変換してつなぐスポットサイズ変換器(注2)を新たに開発し、光の損失を従来比約1/10(注3)と大幅に改善しました。これにより、結合前後で光を減少させることなく大容量な光信号を分岐できるため、スイッチモジュールを追加することで、光スイッチの入出力ポート数を従来に比べ約10倍まで拡張可能となり、次世代の光ネットワークへの適用を可能にします。
NECは社会ソリューション事業に注力しており、高速・大容量な光ネットワークを実現する技術開発を進めています。今後も本技術の開発を継続強化し、ICTを活用した高度な社会インフラの実現に貢献していきます。 |
背景
近年、スマートフォンの高機能化やクラウドサービスの普及など、ネットワーク需要の拡大と多様化は速いペースで進み続けています。快適なネットワーク環境の提供に向けて、ネットワーク資源を効率的に利用し、低電力で需要変動や障害に対応できる光ネットワーク技術が求められています。
光ネットワークでは、需要増や障害が発生した場合に繋ぎ替えが必要となることから、大容量の光信号を光のまま効率良く切り替えできる、光スイッチの導入が進み始めています。しかし、従来の光スイッチ技術では、ネットワークの規模拡大に向けて光スイッチのサイズや消費電力の増大が課題となっています。今回開発した技術は、需要変動や障害に強い光ネットワークの構築を可能にする光スイッチを、シリコンフォトニクスを活用して小型・低電力で実現するものです。
新技術の特長
シリコン集積光スイッチ技術を用いて実現したモジュール
- 世界初、光ネットワークに適用可能な低損失な光スイッチモジュールを開発
微細なシリコン光導波路を用いて、シリコン光回路チップ上に小型・低電力な光スイッチ機能を高密度に集積。光回路とファイバでサイズが異なる光のビーム径(スポットサイズ)を変換する、NEC独自のスポットサイズ変換器を新たに開発し、シリコン光回路チップと光ファイバの結合における光損失を従来技術に比べ約1/10と大幅に改善。これにより、従来から実現している偏光無依存(注4)・高消光比(注5)などに加え、低損失なシリコン光スイッチモジュールを実現。
- 光スイッチの容易な規模拡張を実現
シリコン光回路上で光信号の経路切り替えを行う多数の微小な熱光素子(注6)の配置を、NEC独自のノウハウにより最適化し、素子間の熱干渉やチップの温度変動依存性を抑制。これにより、従来、熱光素子ごとに異なっていた制御電流値をスイッチシステム全体で一つに共通化。従来に比べて制御回路面積を約1/2に小型化するとともに、調整作業を大幅に削減し、制御回路を大型化することなく光スイッチモジュールを増設して容易に光スイッチ入出力ポート数を拡張可能。
このたびの開発した技術の一部は、2011年からNECが参画している、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が委託する「光トランスペアレント伝送技術の研究開発(λリーチ)」の一環として進めてきたものです。
なおNECは本技術に関して、本年3月22日(日)から3月26日(木)まで、米国・ロサンゼルスで開催される「OFC2015」において、3月23日(月)に発表を行います。
URL:
http://www.ofcconference.org/en-us/home/?r=true NECグループは、「2015中期経営計画」のもと、安全・安心・効率・公平という社会価値を提供する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進のICT技術や知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
(注1) シリコン基板上に各種の光デバイスを集積する技術。標準のCMOSプロセスを用いることで大口径ウェハに集積度の高い光回路を形成でき、低価格で大量生産が可能となることが期待されているため、技術開発が世界的に活発化している。
(注2) シリコン光回路チップへの入出力光のスポットサイズ(光が閉じ込められている円形領域の直径)をファイバのスポットサイズに合わせるため、光導波路の入出力部断面形状を変換するデバイス。光ファイバはスポットサイズが約10umと大きいのに対し、シリコン光回路内部のスポットサイズは1um前後と極めて小さく、そのまま接続してもわずかな光しか結合されず大きな損失が発生する。
(注4) 回路を伝搬する光の電界の向き(偏光)が変わっても損失や伝搬速度などの特性を等しくすること。回路に入力される偏光は環境に応じて変動するが、この変動に対してシステムが安定に動作する必要がある。
(注5) 光スイッチを信号通過の状態にしたときと信号を遮断した時のパワーの比。光の遮断が十分でないと光の干渉による雑音が発生するため、この値を大きくとる必要がある。
(注6) 光素子の一部に熱を加えて材料の屈折率を変え、信号経路を切り替える素子。本開発では、入力信号を2つの出力で切り替える構成としている。
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