2012年11月26日
日本電気株式会社
NECは、インターネットやモバイル通信網(3G/LTE)において、変動する通信可能速度(通信スループット、
注1)を、アプリケーションソフトウェアで高精度に予測する技術を開発しました。
インターネットやモバイル通信網などのベストエフォート型のネットワーク(
注2)は、他のユーザの通信状況や電波状況により通信スループットが時々刻々と変化します。このため、特にクラウドサービスにおいては、通信の遅延や画像の劣化など、サービス品質に影響を与えます。
このたび開発した技術は、ネットワーク上に新たな通信装置を追加せずに、アプリケーションソフトウェアだけで、3分後まで通信スループットを高精度に予測するものです。これにより、通信装置を持たないクラウドサービス事業者でも、予測値に応じて即座にデータ通信を制御することで、高品質なクラウドサービスの提供が可能になります。
本技術を利用することで、インターネット上のコンテンツ配信事業者は、予測した通信スループットに応じて映像や音声の品質を制御し、途切れのない安定した視聴を実現する映像配信サービスを提供できます。また、予測した通信スループットに合わせて画像サイズや表示コンテンツを調整することで、応答性の高いWebサービスを実現できます。
このたび開発した技術の特長は、次のとおりです。
- 通信スループットの状態を判別し、予測に活用
通信スループットには、安定的に変動する状態(定常状態)と不安定に乱高下する状態(非定常状態)が複雑に混在することを解明。時系列データの分析手法である単位根検定(注3)を用いて、現在のスループットの状態(定常/非定常)を判別。
判別したスループットの状態に応じて定常モデルと非定常モデル(注4)を混合し、現在から3分先までのスループットの予測モデル(混合モデル)を作成して活用。これにより、時々刻々と変動するスループットの状態に応じた、高精度な予測をリアルタイムに実現。
- アプリケーションソフトウェアだけで予測可能
開発した混合モデルは、過去のデータ通信量(通信スループット)の履歴のみを利用して予測が可能。このため、ネットワーク上に新たな通信装置を追加することなく、アプリケーションソフトウェアだけで予測が可能。
- インターネットやモバイル通信網で、予測精度約80%を実現
通信スループットの変動幅の確率分布を求めて予測に利用。これにより、従来の方式では決められた数値を活用していたため低下していた予測精度(注5)を改善し、3分先までの通信スループットの変動を、約80%の高精度で予測できることを実証(注6)。
NECでは今後も、様々なクラウドサービスへの応用が可能な通信スループット予測技術の研究開発を進めるとともに、製品開発に積極的に取り組んでまいります。
以上
(注1) 単位時間あたりに通信できるデータサイズ。単位はbps(bit per second)。
(注3) 時系列分析手法の一つ。時系列が非定常か定常かを検定する手法。
(注4) 定常/非定常の状態における変動を表す数学モデル。
(注5) 従来技術では、予測値の10%以内に収まる確率が50%程度。
(注6) インターネット、モバイル通信網(3G/LTE)で収集した通信スループットを用いてシミュレーション。
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