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マネジメントフォーラム

マネジメントフォーラム2010 in 北海道 〜異業種交流で広げよう新しいネットワークとビジネス〜

春日 一仁 氏

Management Forum Interview

Kazuhito Kasuga

ちょっとだけ、ウラ話! 講師 春日一仁氏にお聞きしました。

 

プロフィール

1953年 松山市生まれ。NEC 宇宙システム事業部 主席技師長。
放送衛星「ゆり」に始まり月周回衛星「かぐや」の開発まで、30年以上にわたり、宇宙開発事業に従事。

 

 月の起源と進化を解き明かす人工衛星として話題となった「かぐや」システム開発のまとめ役として、プロジェクトを成功に導いた春日一仁氏。マネジメントフォーラムでは、衛星が私たちの身近な暮らしにどう役立っているのか、また、宇宙開発と利用の将来はどうなるのか、などについて、わかりやすくお話しする予定です。その講演を前に、宇宙に憧れていた少年がそのまま大人になったような、宇宙開発のスペシャリストに話を聞きました。

宇宙に興味や関心を抱いたきっかけや理由は?

 初めて宇宙に興味を持ったのは小学生だった1961年、「地球は青かった」の言葉で知られるガガーリンの人類初めての宇宙飛行のニュースでした。その当時は多くの子供たちが宇宙に憧れ、宇宙飛行士になりたいという夢を持っていました。私自身も、もちろんその1人でした。ところが、視力が弱い人は宇宙飛行士になれないということを知り、残念ながらあきらめざるを得ませんでした。
 その2年後には、ケネディ大統領の銃撃事件が発生。ショッキングな映像だけでなく、時をおかずダイレクトに送られてくる衛星中継のテレビ放送そのものに大きな驚きを感じました。さらに1968年、日本時間の深夜に行われていたメキシコオリンピックの開会式の映像を見た時、この映像を世界中の人たちが同時に見ているのだと感動しました。その時、宇宙技術は人類に一体感を感じさせるということを実感し、人工衛星を作る仕事につこうと思ったのです。

宇宙開発事業に関わることの楽しさややりがいは?

 楽しさは何と言っても、子供の頃から夢だった人工衛星を作るという仕事に就き、長年にわたってその好きな仕事に携わってきたこと自体にあります。地球の外に目を向ける宇宙開発が、環境や平和、快適で便利な暮らしなど社会貢献につながることも、我々開発者の大きなやりがいとなっています。
 月の神秘を明らかにする月周回衛星「かぐや」の開発は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)殿を中心に、さまざまな分野の科学者、研究者の方々や多くの企業が参加した大きなプロジェクトでしたが、NECは主契約者として参加し、NECグループの約1000名の方が衛星システムや搭載機器の開発に携わりました。みんなが一体となり1つのゴールを目指したことによって、プロジェクトが無事成功した時には、悔いのない仕事ができたといううれしさと満足感で胸がいっぱいになりました。

衛星開発におけるモノづくりの工夫やこだわりは?

 衛星開発では、さまざまな条件をクリアしなければなりません。ひとつは、宇宙に向かうロケットの振動やGの衝撃に負けない耐久力。さらに1日の温度差が−100〜+200℃にもなり、一度打ち上げたらメンテナンスも行えない宇宙空間で、確実に役割を果たす確かな信頼性も要求されます。そのため、部品ひとつひとつの検査から、衛星システム全体の組み上げまで、細心の注意を払います。
 衛星は電子部品の塊ですが、特に重要なのがLSIなどの部品の品質保証です。LSIなどはひとつひとつ入念なチェックに加えて、動作テストを徹底的に繰り返します。また衛星の開発・製造では、手造りの作業も数多くあります。衛星の機体を覆う金色や黒色の断熱シートなどは、まるでオーダーメイドの洋服のように衛星や搭載機器のボディに合わせて手縫いで行うのです。破れなどのチェックも、ルーペを使って人間の目で丁寧に行っています。さらに「かぐや」では、月を観測する機器が微かな変化も逃さないよう、衛星が出す電気的な雑音を極限まで低くする工夫もしています。

今回のセッションの「聴きどころ」は?

 宇宙開発技術は、携帯電話やテレビと同じように、人々の普段の暮らしに様々な形で役立っていることを、是非知って欲しいと思います。たとえば、衛星を使ったGPS(全地球測位システム)もそのひとつです。衛星から送られてくる情報を手にした携帯電話で直接受信することで、自分がいまいる場所がわかるなど、暮らしを便利に変えています。地球の陸地を観測する衛星「だいち」では、地震によって変化した地殻の様子を観測して、その情報をすばやく伝えることにより、地震によってできた自然堰(ダム)の崩壊や土石流による被害から人々を守るなど、2次災害の防止にも役立っています。また、不法な森林伐採や不審車・不審船の発見など、安心・安全な社会への貢献についてもお話ししたいと考えています。

いま取り組んでいるテーマや、今後取り組みたいテーマは?

 宇宙開発技術は、人々の暮らしにさまざまなカタチで役立っていますが、まだまだ十分とは言えません。その課題のひとつとしてあげられるのが、衛星の数です。多くの観測衛星は、高度1000km前後の高さの軌道で、地球の周りをぐるぐる回り続けますが、地球も自転していますので、衛星が1台しかないと、地上の同じ地点を観測できるのは12時間毎になります。現在の衛星の数では、ある地点で何かアクシデントが起きたとしても、すぐに衛星で見る、というわけには行きません。こうした課題は、衛星の数を増やせば解決できます。衛星が増えれば、観測の空白時間が少なくなって、必要なときに確実に情報が得られます。アクシデント発生が素早く察知できるため、その対策をスピーディに行えるようになります。衛星は放っておいても地球の周りをぐるぐる回り、世界の全ての国々、人々を見守ってくれます。たった一つの国で使うのはもったいない。世界中の国が多くの衛星を共有し、人々の生活の安心安全、船や飛行機の安全な航行、山、海、森林、湖、河川、田畑や牧場、地球環境の保全などに役立てる、そんな社会が実現できるといいなぁ、と思っています。
 それと、もうひとつ。衛星をどうやって使っていくか、みんなで一緒に考えていきたいということです。携帯電話が利用者によってどんどん使い方が進化したように、衛星も利用者によってもっと進化すると考えています。開発者の視点だけでなく、利用者の視点によって、衛星の活用の可能性が広がって行くことが、これからの願いですね。

開催概要
日程 平成22年6月4日(金)〜5日(土)
会場 札幌プリンスホテル
申込受付は締め切りました。
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