オープン系プラットフォームによるバンキングシステムの構築
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T.システム導入の背景
全国信用協同組合連合会(以下「全信組連」という。)では、全信組連の取引先である信用組合(以下「信組」という。)の経営力強化に寄与し、信組の期待と要請に答えるため、収益力・経営体質をより一層強化し、金融環境の変化へ柔軟に対応することが喫緊の課題であった。これらの諸課題に対応するには、抜本的な事務の合理化・効率化策としての「事務改革」が必要不可欠であったが、従来のシステムは、その保守・運用が複雑で「事務改革」への対応が難しく、またメインフレームのリース契約期限切れ、バンキング端末機の磨耗・劣化といった問題も含んでいた。

U.システムの目的
本システムは、「事務改革」の主要な機能目標である「生産性の向上」と「サービス向上」を実現するため、シンプルかつ経済性を追求したシステム構築を目標とした。具体的には、全信組連・信組・外部機関を包含した総合ネットワークを構築し、信組が直接電子取引を行うことによる事務の合理化・効率化および全信組連と信組間の情報共有化を実現することを狙いとしている。

V.システムの概要
本システムは、「勘定系」「グループウェア」「情報系データベース」の各業務サービスを提供しており、バンキングシステム機能に加えて、限定された取引先、少量多種かつ非定型取引の割合が高いといった全信組連の特性を反映したシステムとなっている。ハードウェアは、基本OSにWindows2000、端末ブラウザにインターネットエクスプローラ、ネットワークプロトコルをTCP/IPに統一し、サーバ間の連携・機器構成の追加・変更へ柔軟に対応できるようにした。基幹サーバはオープン系サーバ22台で構成されており、パソコンを端末機として利用することでバンキング専用端末を廃止した。なお、基幹システムと併せてネットワークも全面更改した(概要図参照)。

W.システムのポイント
1.オープン系プラットフォームの採用
システム選定当時は、Windows2000サーバが発表された時期であり、またオープン系プラットフォームでのバンキングシステム構築事例がなかった点から、オープン系採用を疑問視する声もあったが、システム選定から4年以上経過した現在でも、メインフレーム利用時と比較にならない拡張性、機能性等に富んだシステムとなっている。
2.システム移行
データ移行は、別途作成した移行スケジュール計画に基づき、テスト・リハーサルを実施することで、問題点の把握、移行精度の向上を図った。また、新システムでの操作習熟を図るため、システム稼動までの2ヶ月間、全信組連・信組参加による総合運転試験を繰り返し実施したことで、稼動直後の混乱も発生しなかった。
3.安全対策
セキュリティ対策は、ICカードを利用した本人確認、専用回線や閉域性の高い通信サービスの利用および通信データ暗号化によりデータ盗聴・漏洩を防止している。 また、信頼性向上対策として、基幹サーバ等の主要機器の二重化、バックアップ回線・機器の二重化および回線切り替えの自動化等により、基幹業務に影響を与えないようにしている。さらに災害等の対策として、遠隔地にコールドスタンバイ方式によるバックアップセンターを構築している。
X.評価
1.信頼性の評価
システム稼働後1年以上経過したが、ハードウェア・OS等に起因するシステム障害は皆無であり、人的要因によるシステム障害が数件しか発生していないことから、オープン系システムそのものに対する信頼性の低さは感じていない。
2.事務合理化・効率化効果
営業店事務は約6割の削減効果があり、2割強の人員が削減された。システム要員は、従来のシステムで約30人必要であったが、開発・運用・保守を全面的にアウトソーシングした結果、約3分の1となった。これらにより、人材の有効活用、システム要員の教育・育成にかかる時間・費用等の削減が可能となった。
3.システム運用費用の削減
ハードウェアのリース費用や通信費は、従来のシステムと比較して、約22.2%削減された。これは、ネットワーク拡大に要した通信費の増加以上に、オープン系プラットフォームの採用でハードウェアのリース費用が低下したことによるものである。
4.業界内ネットワークによる情報交換の実現
信組業界内のネットワーク構築により、信組業界内において迅速かつタイムリーに情報の提供、データの交換が可能となった。

Y.今後の課題と方針
ソフトウェアのライセンス管理、バージョンアップ時の動作検証作業等の負荷を軽減することや、開発・運用・保守に関する手続き、マニュアルの整備等およびアウトソーシング要員の管理が今後の課題となっている。また、システムが安定稼動期に入ってきたため、今回構築したインフラを活用し、より一層の事務合理化・効率化を推進し、各信組へより良いサービスを提供していことが求められている。