WebOTXを活用したイントラシステムとしての
生産管理統合システムの構築

(PDF文書,352KB)


1、 背景
1989年に稼動したACOSを中心とした生産管理システムの現場端末が寿命を迎えた為、システムの更新が必要となったが、下記のような目標を同時に実現するため、システム全体の再構築を実施することとした。
(1) 現場でのリアルタイムデータの入力・照会を可能とし製造現場のアウトソーシング推進に貢献する。
(2) 製造現場の変化に柔軟に対応し、システム部門のトータルコストを抑えるオープンシステム対応。
(3) 製造設備・監視/制御装置との連携を強化し、オペレータの負荷を軽減し、品質安定化を図る。
(4) インフラとしての全社ネットワークの有効活用。

2、 要件と目標
製造部門オペレータの担当業務として以下のような業務をシステム化することが必要であった。
(1) 班長による運転計画立案。
(2) 場内専用車両[Aタイプ]による前工程〜後工程への中間品の運搬。
(3) 後工程での加工のための設備運転条件の設定と製品ラベルの現場印刷。
(4) 場内専用車両[Bタイプ]による製品の倉庫への入庫および出荷。
ここで、(2)および(4)では無線端末の利用が不可欠であり、(3)を達成するためには制御機器やシーケンサーとのデータ連携が必要となった。今回のシステム化においては、SS無線によるイントラネットブラウザ対応携帯端末 WebHandy 、電計機器とのインターフェイスを持ち、javaに対応している NetJacs、などユニークな機器構成をとることにより、全てのプログラムをjavaで統一することとした。
また、既存システムでは 生産計画・進捗管理・在庫管理・品質検査の各業務が広い工場エリア内で分散して配置していたので それぞれが別々のサブシステムとして作成され、データの連携が不十分であった。再構築においては、全体を1つのシステムとして設計しデータの連携を強化することで、作業負荷を減らすとともに、規格アウト品の出荷、品名・数量の誤出荷、設備の条件設定ミスなどを未然に防ぎ、品質の向上に貢献することを目標とした。

3、システム概要
システムの主要部分をjava言語で統一し、DBMSとしてOracle8i、アプリケーションサーバーとしてWebOTXを導入した。事務所での利用者はPC、場内車両A利用者は特別に作成した車載無線端末MIU/PC 、工程運転条件・実績データ交換用としてはNetJacs、場内車両B利用者は WebHandyを通じて共通のJavaプログラムを利用する。これらの特殊端末は概してThin-Client であるが、APサーバーの活用により比較的良いレスポンスを得られた。

4、キーポイント
(1) フォールトトレラント対象工場が24時間連続運転であり、新システムが工程への運転条件の提供や、製品ラベルのリアルタイム印刷を実施することから、システムの停止は工場の停止を意味する。これを可能な限り防ぐため、次のような対策を実施した。
・APサーバー、DBサーバーをまとめて、Express多重化システム Cluster-Pro上で運用。
・製品ラベル印刷部分および設備とのデータ連携部分のクライアントを二重化し、1台が故障しても運転継続可能とする。
・ネットワーク・無線トラブル対策として、サーバーとの通信が不能になった場合、データを端末に蓄積し、通信復帰時に蓄積データを自動的にサーバーに反映する。
・強い振動にさらされる車載端末は、運転台数と同じ数の予備機を準備し、交換は現場オペレータが簡単に行える構造に設計した。
(2) javaによる開発
今回のシステムではオープンシステム達成と運用のトータルコストを抑えるために有効なjava言語を採用し、開発・保守コストを抑えるために、全体の約半分を内作する事となった。しかし社内にはjava言語による開発経験者がいなかった。そこで javaによるCORBAアプリケーション構築用のプロトタイプとして OpenMeisterEnterprise(以下OM)を採用した。OMは、クライアント画面遷移、サーバープロセスでのデータベースIO処理、データ交換仕様、マスター検索などを数パターンに標準化したプロジェクト基底クラスを提供するものでこれを全員が使用することにより、開発者はビジネスロジック部分のみを開発するだけでよく、java言語の習得にも役立ち、高い生産性を達成することが出来た。
(3) データ連携の強化  オーダー・製造条件・生産計画・中間製品管理・在庫管理・品質管理のデータを有効に連結し、工程管理の高度化、品質向上に貢献するため設計に際しては業務データの分析を入念に行い、DOA手法によりデータベース外部設計から行った。またデータベース外部設計からアプリケーションの概要設計までは外注SEを含めた全員で行い、詳細設計以降で開発を分業する開発方法をとった。このため、優先度を下げて後から開発された部分を含めてデータの取り扱いについてはシステム全体の一貫性が保証されており、高い保守性が確保されたと同時に、生産実績のトレーサビリティが飛躍的に向上した。

5、プロジェクト推移
共通
要件定義構成決定(1999年9月〜12月) DB・外部設計(2000年1月〜5月)工事( 2000年6月〜9月)
生産計画/工程管理/倉庫
詳細設(2000年4月〜7月)製造・テスト(7月〜12月) 総合テスト・教育(2000年10月〜2001年2月)リリース (2001年2月〜)
品質管理
詳細設計(2001年3月〜4月)製造・テスト(2001年4月〜6月) リリース(2001年5月〜)

6、評価
連続運転している現場での制御機器との動作確認や、車載端末の電源仕様変更など総合テスト時に困難な問題が多く発生したが、ほぼ納期どおりに全機能をリリースできた。 ユーザーのPCへのシステムのインストールは、WebOTXのダウンローダを利用して、オペレータによって実施され、システム部門の負荷は小さく抑えられた。 生産計画と中間品の発生状況などが車載端末などからリアルタイムに参照できるので、従来ベテランにのみ可能だった前工程から後工程への中間品の運搬作業が一部外注化できるなどアウトソーシング推進にも貢献している。 品質検査結果を個別の製品にリンクし、不良品の誤出荷も確実に防げるようになった。リリース後半年程度は、バグやネットワーク機器の不調、サーバー故障などにより、何度かシステムの一部が機能不全を起こすことがあったが、システムに付与した数々のフォールトトレラントの仕組みのおかげで、すべて1時間以内にシステムの動作は回復し、その間のデータ修正も最大3時間以内で完了することが出来た。 当初から懸念されてきた車載端末の振動による故障は当初深刻な問題であったが、内部構造の変更と車体への取り付け部分の緩衝器具を改良し、改善が見られており、現在さらに新しい緩衝材を検討している。
今後はシステムに蓄積されたデータのユーザー開放を促進し、更なる管理負荷軽減、製品の品質向上に貢献していきたい。また、このシステムの対象業務を広げ、すでに構築されたパターンを有効に活用して、周辺工場への水平展開を図ってゆきたい。