聴覚障害者対象パソコン研修の運営
(PDF文書,661KB)


【要旨】

1.目的
当社では、パソコン操作能力のレベルアップを図るために、定期的にパソコンオープン研修を開催している。平成7年度より住友海上火災保険株式会社※人事部から依頼を受けて、聴覚に障害を有している社員に対しても、研修の機会を設けることを決定した。人事部を主管とし、関連部(チームWITH(障害者職場定着推進チーム)とパソコンインストラクトチーム)合同で、毎年1〜2回開催。研修内容は通常の研修とほぼ同様で、習得した技術を速やかに業務へ反映させることを目的としている。
(※2001年10月1日三井住友海上火災保険株式会社となる)

2.概要
研修を開催するにあたり、人事部とチームWITHを通して、日時と受講者からの希望カリキュラムを決定する。準備期間には、テキスト及びレッスンプランなどの補助教材の作成、手話通訳者の手配を行う。また、当研修においては受講者に音声を使って合図を送れないため、各人の視点を一定のタイミングで講師もしくは通訳者に向けることが円滑に研修を進めるポイントとなる。これを実現するため、研修開始前に必ず「研修の進め方」についての説明をしてから操作に入る。研修最後にはアンケート入力を依頼し、回収する。主な内容は以下のとおり。
<研修場所> 社内OA教室
<研修時間> 7時間(休憩1時間40分)、1〜2カリキュラムを実施
<受講人数> 約10名
<使用機材> プロジェクター(講師用PC画面)、29インチモニター(補助資料画面)、ホワイトボード
<スタッフ> 手話通訳3名(1名:住友海上火災保険株式会社社員、2名:東京都手話通訳派遣協会)
       講師1名、サブ講師2名
<補助教材> (1)PC専門用語の手話一覧
ドラッグ、クリックなどのパソコン専門用語の手話をあらかじめ決めておき、紙ベースで受講者に配布する。
(2)キー一覧表
テキストに表記されているものを抜粋し、紙ベースで配布する。キーボード操作に慣れていない受講者に入力の際参照してもらう。
(3)PowerPointを利用したスライド
研修テキストの内容に沿って、使用するキー、クリックするボタン名、テキストの参照ページ、要点などをまとめる。(1カリキュラムあたり約200枚程度)
(4)レッスンプラン:通常研修の約2倍の操作時間を目安に作成。
<研修の進め方> 「講師の説明」→「手話通訳」→「モニターまたはホワイトボード参照」→「メモを取る」→「受講者操作」このパターンを繰り返す。

3.キーポイント
<ボタン名や要点をまとめたPowerPointスライドの導入>
他社主催の聴覚障害者対象PC研修を参考にして、29インチモニター1台にPowerPointで作成したスライドを映し、ボタン名や要点を説明する方法を取り入れた。従来は、紙パネル(A4版)やホワイトボードを利用して補足説明を行っていたが、モニター一台にまとめることによって受講者の視点が広範囲に移動することのないようにした。また、講師にとっても研修を進めやすい体制となった。

4.計画
<平成12年度の場合>
開催日時起案(研修2ヶ月前)
 ↓
受講カリキュラム調査
 ↓
カリキュラム決定
手話通訳者の手配
教材、補助資料(スライド)、レッスンプラン作成
 ↓約3週間要
リハーサル1回目
 ↓
受講案内送付(研修1ヶ月前)
 ↓
リハーサル2回目
 ↓
教材事前配布
 ↓
研修当日
 ↓
アンケート集計

5.評価
初回開催から「受講の成果:普通37%、やや大きい〜大きい59%」という評価を受けている。特に平成11年度のモニター1台にスライドを映す方法を導入してからは、「モニターの利用はとてもよかった」という声も多数あった。また、スライドがあれば通常の研修を受講することも可能ではないかと感想を述べる受講者もいた。
スライド導入前は、操作の度に使用するボタン名のパネル提示やキー表記、テキスト参照ページ、要点の板書など講師の動作が慌ただしかった。特に要点を板書する際は受講者に空白の時間を与えてしまうなど、スムーズに研修を進めることが困難であった。しかし、スライドを導入したことによって、説明を中断せずに補助教材を瞬時に提示でき、効率的に研修を進めることができるようになった。受講者にとっても、手話を見逃してしまった場合にスライドを確認することができるので、有効な方法であったと認識している。
研修開催以来、「開催数を増やして欲しい」「レベル分けをして欲しい」という要望も出ているが、これは研修の成果により業務でのパソコン使用頻度が増えた結果であると分析している。今後は開催数を増やす、上級編カリキュラムの構築などが課題となっている。