WEBシステムを利用したLinuxとJavaによる気象情報システムの構築
(PDF文書,617KB)


【要旨】

1.目的
九州地区は、一般に温暖な地域であるが、地域や場所によって気温や降水量が大きく異なり、積雪や霜なども観測されるように変化に富んでいる。各地域ではその地域の特色を生かした農業が営まれているが、農業を営む上で大きな影響を及ぼす要因として気象情報が挙げられる。この気象情報を正確にかつ迅速に提供することが、近代の農業生産性を左右する。
従来のシステムは、EWS4800を使って分析を行っていたが、従来のシステムではいくつかの問題点があった。
・分析系のグラフ・地図表示は、EWS4800のX−Windowを使用して表示させていたが、サーバでのみの表示が可能でクライアントは数値データの表示しかできない。
・出先機関用のソフト・ツールが必要である。
・閉じたネットワークではあるが、出先機関や普及所とLAN内の端末の操作が統一されていない。
こうした課題に対して新たに『農業気象情報システム』の再構築の検討が行われた。具体的には、全ての端末に、農業生産にもっとも直接影響を与える気温・降水量・日照時間に関する気象要素及び試験研究面でニーズの高い風速を数値データだけでなく地図上で表示させること。また、各気象要素を県市町村界の地図上に経緯度法に基づく1km格子毎に推計し、推計値をカラー階調表示することとした。これにより、実測値・平年値(30年間の平均値)・推定値及び予測値(最低気温等の予測値)を迅速に提供することで、試験研究の普及・効率化及び省力化を進めるとともに農業技術情報の有効活用を図ことができる。

2.概要
 本システムで利用する気象データには、大きく分けて実測値と推計値の2種類が存在する。実測値は、時間値として毎時送られてくるアメダスデータとその時間値データから生成される日値・半旬値・旬値・月値・年値及び平年値がある。アメダス地点では、色々なデータが観測されているが、今回利用する気象要素は、気温・降水量・日照時間・風向・風速の5要素である。また、実測値であるアメダスデータと最低気温等の予測値を基にその他標高等の情報から気象データを計算で求める推計値がある。ユーザは、これらのデータを各クライアントマシンのインターネットブラウザを使用して検索することができる。
本システムでは実測値と推計値から気象データを検索でき、Javaアプレットを利用してグラフィカルな地図表示、グラフ表示を可能にした。また検索データをテキストでダウンロードできるようにしているためクライアント側で気象データを2次利用することが可能である。

3.キーポイント
今回のシステム構築におけるキーポイントは、以下の4つがあげられる。
(1)WEB形態を利用
インターネットブラウザを利用することによりクライアント側に特定のソフトウェアをインストールしなくて よく、各地に散らばっている出先機関のクライアント管理の軽減を図った。
(2)OSにLinuxを採用
Linuxを採用した理由は、(1)安定した動作 (2)安価 (3)優れたパフォーマンス (4)開発ツール群・商用RDBMSの充実 (5)UNIXで構築された旧システムの資産継承 (6)各メーカのサポート体制の充実 (7)将来のインターネット公開へのスムーズな移植が挙げられる。
(3)Javaアプレットを利用したウインドウシステム
Javaアプレットを利用した簡単なウインドウシステムを作成した。ウインドウはクライアント側で自由に移動させる(アプレットエリア内)ことができるためサーバ側で画像を生成する方式よりも効率よくデータを表示できる。ウインドウ位置はクライアント側のクッキー情報として保存できるためユーザ毎のカスタマイズも可能である。
(4)JavaアプレットとJavaScriptの連携
 JavaアプレットとJavaScriptを連携させることにより、ロジック部(Javaアプレット)とビュー部(HTML)を分離させることができるためデザイン変更が発生した場合でもロジック部の修正はほとんどない。また、Javaのオブジェクト指向によるコンポーネント化により、生産性の向上・既存オブジェクトの再利用による品質向上を目指した。

4.計画
本システムは、大きく2つのフェーズに分けられる。日本気象協会から送信される気象情報アメダスの受信機能とそのデータの分析・加工データのWEB機能である。
(1)アメダス受信に代表されるサーバ機能構築
開発期間:平成11年9月から平成11年12月
(2)WEB機能による表示系の構築
開発期間:平成12年1月から平成12年4月
システム環境は、以下の通りである。 (1)ハードウェア
Express5800/120Lc(PentiumV:500MHz メモリ:512MB HDD:8GBx3(RAID−5))
(2)ソフトウェア
OS:TurboLinuxServer1.2(日本語版)
DB:Oracle8 for Linux(WorkGroupServer版)

5.評価
全ての端末に画像情報を提供することで、気象情報の分析力が向上し、気象条件による農業技術への判断材料として有効に活用されている。また、メッシュ情報として1km格子毎に任意の地点の最低気温等の推定値を迅速に提供することで、各地域におけるより細かな農作物への対応が可能となった。
今後の課題としては、一般の農家からも自由にアクセスできるようにするために、インターネットを使った情報提供を行うことと、サーバ側はCGIを使ってJavaアプレットとの連携を実現しているが、サーバのモジュールもJavaで構築することでマルチプラットホームの対応を行い、サーバとクライアントの親和性を高めることで、より使いやすいシステムの構築を目指す。