コミュニケ−ション支援システム(Toyonet_ACE)の活用による大学教育の改善
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【要旨】

1.目的
近年、大学教育のあり方について多方面から改善を求める声が上がっている。たとえば、授業に関しては以下のような指摘がなされている。
・教員から学生への一方向的な情報伝達の授業が多い。
・学生が授業時以外の事前・事後学習を行わない。
・授業内容を理解できない学生が多い。
1998年に出された大学審議会の答申においても、授業の「単位」は教室での授業と事前・事後の学習を合わせて授与されるべきであり、そのための指示を行うことが教員の務めであると強調されている。
そこで、このような問題の解決の糸口として、まず教員と学生とのコミュニケーションを促進することが重要であると考えた。そして、「教室」という限られた場所、「授業時間」という限られた時間帯を越えたコミュニケーションを実現するためには、インターネットを利用した情報システムの活用が有効であると考え、NECと共同で開発したのがToyoNet-ACEシステムである。

2.概要
きめ細かいコミュニケーションを前提とした教育を実現するには、個人の特定は必須である。そこで、システム開発にあたっては、ユーザー認証の導入を出発点とした。さらに、授業の場を考える場合には、学生の側からは自分が履修している授業、教員の側からは自分が担当している授業を特定する必要があるが、これらの情報は大学の教務データベースから得ることができた。その結果、学生がインターネットから認証を受けてシステムにアクセスすると、自分が履修している科目の時間割表が表示され、教員が同様に認証を受けてシステムにアクセスすると、自分が担当する科目の時間割表が表示され、互いにサーバー上での授業の場を共有することができるようになった。
時間割表の授業名からのリンクで、教員は講義内容、講義予告、講義結果、レポート課題、授業評価等のアンケートを登録することができ、学生はそれらの閲覧やレポート提出、アンケートへの回答ができるようになっている。さらに、ゼミなどでは掲示板やホームページも利用できる。学生が自宅からアクセスする場合を想定すると、講義予告は事前学習、講義結果は事後学習のためのもので、またレポートは書いたその場で提出することができ、ゼミでの議論を掲示板上で展開することもできる。
システムには連絡メッセージ機能も含まれており、教員から受講者への連絡や資料配布を行えるほか、事務職員からの個別の連絡にも利用できる。事務からは「休講情報」も登録されていて、学生は自分が履修している科目の休講情報を選択的に見ることができるようになっている。

3.キーポイント
3.1コミュニケーション促進の意義
現代社会においては、コミュニケーションの形態が多様化し複雑化する中で、コミュニティ意識の希薄化が随所で指摘されている。家族、組織、地域など、さまざまな人間活動の場において、コミュニケーションのあり方を問い直す必要に迫られているが、大学教育の場も例外ではない。本システムの開発にあたっては、そのような社会心理学的な問題提起を背景に、教育改善のために必要な意識改革や、知識共有の場としてのコミュニティ形成、そのためのコミュニケーション促進を目指すことにした。

3.2教務データベースとの連携
大学組織の中では、多くの場合に教員の業務と事務局の業務が乖離しており、教育の現場に事務データを活用することが困難になっている。本システムの運用には教務データの活用が必須であり、事務局の積極的な協力を得られたことが成功の大きな要因となっている。

3.3学生、教員、事務職員の利用推進
最終的な成否の判断基準は利用者数である。学生に対しては、入学直後におこなう全員参加の講習会、PCの推奨販売、相談窓口の開設などの利用推進活動を行っている。教員に対しては、教員向け講習会や利用の手引きの配布などを実施している。事務職員には、学生サービスの視点と業務効率化の視点の両面から、システムへの理解と活用を促している。

4.計画
東洋大学がNECと提携して、教育用インターネット接続サービス「ToyoNet」を開始したのは1997年11月で、社会学部ではこれに合わせて学生向けのホームページ「infoSoc」を開設した。このページの機能拡張提案がシステム開発の発端である。1998年1月から打合せを開始し、テスト運用をくり返しながら、1999年6月に時間割表と休講情報を基本としたシステムの本格運用を開始した。メッセージ機能は、2000年6月より運用開始した。2001年度は、携帯電話への対応を実施する計画である。

5.評価
学生にもっとも受けがよいのは、言うまでもなく「休講情報」である。事務連絡のための「メッセージ機能」は、従来の「掲示板」上の紙による掲示よりはるかに伝達効率を上げている。教員の積極的利用者を増加させるように、日常的な努力を続けている。

キーワード・参考文献
大学教育の改善、コミュニケーション支援、ユーザー認証
大島 尚・宇都宮京子(1999) 教育用マルチメディア・ネットワークにおけるユーザー認証の活用. 東洋大学情報科学論集,30,69-82.