業務変化に強い生産情報システム
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【要旨】

1.目的と背景
(株)エス・アール・アイ システムズは、親会社である「住友ゴム工業株式会社」とそのグループのコンピュータシステムの開発及び運用保守を行っている。「住友ゴム工業株式会社」は、1995年の阪神淡路大震災によって神戸工場が被害を受け、翌年にゴルフボール製造等の一部を市島工場へ新築、移設した。しかし、生産設備の立ち上げが優先で、コンピュータシステムは事務系を中心にした必要最低限に止まり、他工場に比べて工場のコンピュータ化が遅れた。
現在は1名の常駐体制で、ネットワーク管理、機器管理、情報システム化(以下、IT化)の提案、開発、運用保守といった業務を行っている。
従来、工場の役割は「品質の良い物を大量に安く生産する」ことであったが、昨今ではスポーツ用品市場の消費低迷が続く中で、顧客ニーズに対する「ビジネスのスピード」が強く要求されている。そこで、「品質・性能・サービスの向上」を図るために、基幹情報である「工場生産情報(以下、生産情報)を柱に工場全体のIT化を図る事を指針として、紙で管理している帳票をデータベース化、共有化する「ゴルフボール生産情報システム(以下、生産情報システム)」の開発に取り組んだ。又、生産情報には本社技術部門のゴルフボール設計情報の参照が必須である。これらの情報をデータベース化する「ゴルフボール設計支援システム(以下、設計支援システム)」の開発を同時期に行う事となり、両システムのデータを連携させる事により情報伝達の高速化を図る事にした。

2.概要
先ず、設計支援システムのデータベースには設計情報の標準値を保有している。
配合標準データ
ゴルフボールを構成する部品は、原材料を配合して製造され、これら部品の原材料名と配合量を保有する。
設計標準データ
各製品の生産工程順と工程で使用する部品、加工条件、設備条件、規格などを保有する。
生産情報システムは、設計支援システムの情報を基に製品の生産情報を登録し、各種生産指示書(以下、指示書)を作業現場へ発行するものである。

2.1 配合指示書
配合標準データを参照し、作業員や生産設備の条件を考慮した工場の配合指示書を発行する。

2.2 工程別生産指示書
設計標準データを参照し、より詳細な生産情報を付加した30種類の指示書を発行す る。
開発工数は、設計支援システムが12人月、生産情報システムが11人月である。又、両システムともサーバはNEC Express5800/Windows NT4.0、クライアントはノートパソコン/Windows95/98、データベースはOracleを使用した。

3.キーポイント
生産情報は様々な要因によって常に変化するものである。そこで、"業務変化に強いシステム"を真剣に考え、システム運用要員がその都度システム本体を修正するのではなく、次に示す各種定義を利用者が変更する事によって指示書の発行ができる仕組みをとった。

3.1 生産情報項目の定義
データベースの項目定義を従来の"横"から"縦"へ発想転換し、必要な項目を任意に追加し、その項目の属性を定義することで本体への修正を不要にした。

3.2 設計支援システムとの関連付け
設計支援と生産情報システムは、1日1回、夜間に共有情報の同期合わせを行っている。生産情報システムから設計支援システムのデータを参照するには、参照するテーブル名と項目名を定義するのみである。

3.3 データベース抽出支援ツール(以下、汎用ツール)の使用
30種類の指示書を固有帳票として開発すると、開発および稼働後の修正コストが膨大になると予想された。そこで、記載情報を汎用ツールで抽出後、Excelに張り付けるという簡単な方法により大幅な生産性向上とコスト削減を図った。

4.計画
1999年 10〜12月
生産情報システムの開発を検討し、投資費用を抑制するため、ハードおよびソフトは全て既存環境を使用することにした。
                生産情報システム  設計支援システム
  2000年 1月 開発着手
        2月                開発着手
        6月 開発終了
        7月  単独で稼働開始       開発終了
        8月 設計支援システム連携開始   稼働開始

5.評価
本番稼働後間もなく生産方法の変更が発生したが、業務変化に強いシステムの設計思想が功を奏し、利用者自ら各種定義変更するだけで対処している。その結果、本体への修正は一度も行わず利用者からはシステムの柔軟性に高い評価を頂戴している。 本社と工場の情報伝達スピードは、従来社内メールであったが3日を1日に短縮した。また、大半が一覧形式の指示書であったが、一品一様形式を10票足らずから30票へと大幅な指示書発行が実現できたと同時に、汎用ツールにより新規帳票の開発生産性も従来の4倍に向上した。
最後に、たった1名というシステム運用要員が、既存システムの運用はもとより今年度に予定されている生産管理システムの構築を積極的に推進できる事が最大の成果としたい。