3階層システムにおける処理分散の効果
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【要旨】

■目的
タイヤ設計部門(約250名在籍)では生産するタイヤに合わせて10数グループに分かれており、各グループにはパーソナルコンピュータ(以下、PC)をクライアントとして使用するオープン系の業務システムが多数導入されている。そこで基幹系システムとして使用されているタイヤ設計支援システム(FRIENDSシステム)は設計部門のほとんどのグループで使用されているため、レスポンスの維持と運用コスト(TCO)の削減をどのようにして実現するかが課題であった。システムのレスポンスを左右するクライアントPCについては同一時期に導入されたものではなく、ハードウェアスペックも多種多様であるため、3階層アーキテクチャを採用し、低スペックのPCであっても一定レベルのレスポンスの維持を設計指針として開発に取り組んだ。

■概要
FRIENDSシステムは、タイヤの設計書やテストの依頼書などの作成を支援するシステムであり、文書作成機能(業務アプリケーション(以下、業務AP))ならびに文書承認機能(承認AP)などを備えている。担当者が業務APにて新しい文書の作成を行い、上長がが承認APを使用して承認を実施する。

FRIENDSシステムでは、クライアントPCには画面表示するためのVisualBasic(以下、VB)ランタイムモジュールのインストールと使用するObject Linking and Embedding(以下、OLE)の定義を行う。実際の業務APは全てAPサーバにインストールしておき、登録データのチェックや他のデータの呼び出し及びデータベースへのアクセス処理をサーバ上で行っている。データベースのアクセス部分については、テーブル毎にVisualC++(以下、VC++)を用いてDynamic Link Library(以下、DLL)を作成しており、レスポンスの維持と排他処理を実現している。

■キーポイント
1)レスポンスの向上
クライアントとして使用されているPCは多機種にわたっており、下位クラスはPentium75MHzから上位クラスではPentiumV500MHzを越えるものまで存在している。3階層アーキテクチャを実現することで、最も負荷のかかるデータベースアクセス処理をAPサーバに一任することができ、クライアントPCの負荷分散が可能となった。これにより下位クラスのクライアントPCでも十分なレスポンスを実現することができた。

2)投資コストの削減
システムの機能拡張に伴い、高スペックのPCを新たに購入することなく、従来通りのレスポンスを維持できるのでハードウェアへの投資(PC新規購入、メモリ増設など)が削減できる。

3)運用コスト(TCO)の削減
プログラム変更はAPサーバに対してのみ実施され、各クライアントPCには影響が及ばないためクライアントPCへの設定変更作業は発生しない。
システム環境設定の変更が発生した場合(OLE変更時に必要)には、WINDOWSスタートアップに登録されている設定変更プログラムが自動的に起動し、各クライアントPCの環境が更新される。これらの仕組みにより、プログラムの変更等が自動的に行えるので、システム担当者は新規PCへの導入作業(動作環境の初期設定)を行うだけで、以降の変更作業が不要となるため、運用コストの削減が実現できた。

4)クライアントAPの安定性実現
複雑な業務処理の大部分をAPサーバに代行させることで、クライアントPCのフリーズ(ハングアップ)発生を減らし、PCの動作の安定を実現した。これらのことからユーザへのサービスアベリティの向上に寄与した。

■計画(実績)
1996年:設計・開発に着手
FRIENDSシステム第1次リリース(運用開始)
1997年:FRIENDSシステム第2次リリース
・対応するタイヤ設計書を追加(業務AP機能追加)
1998年:FRIENDSシステム第3次リリース
・タイヤ製作で使用される材料の設計書を追加(業務AP機能追加)
・製作したタイヤのテスト結果の報告書を追加(業務AP機能追加)
・工場展開(本社以外でのシステムの使用を開始)
1999年:FRIENDSシステム第4次リリース
・データベース一括変更(タイヤの材料変更により設計書の内容を一括して変
更する機能)2000年対応
・データベース(Sybase)のバージョンアップ
・全プログラム(約60本)の調査
2000年:レスポンスの一層の向上を予定
・サーバの変更(Express5800 (マルチCPUモデル)への対応)
・サーバOS(WindowsNT)のバージョンアップ
・開発言語のバージョンアップ(VB6.0, VC++6.0)


■評価
ホストコンピュータのダウンサイジングからシステムリリースまで約1年かかったが、期待通りのレスポンスの確立は達成できた。但し、3階層アーキテクチャを用いて開発を行ったため、システムの開発初期はシステム検討や調査・分析で、通常のクライアント/サーバシステムに比べて約2割程度の開発コスト増加が発生した。その後、処理分散によるレスポンスの確保や低スペックのクライアントPCの活用による新規投資費用の抑制ができたことにより、当初の開発コストの回収が行えた。また、システム運用担当者の設定変更作業を大幅に削減したことによる運用コストの削減もシステム全体のコスト軽減に大きく貢献している。
 ホストコンピュータの時よりもユーザインターフェースが大幅に向上したためユーザ側のデータ入力作業工数が減少し、またレスポンスの維持や高い安定性を達成したことによりユーザから高い評価を頂いている。

以 上