大規模災害に備えたメインフレームのバックアップシステムの構築
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【要旨】

a)目的
1995年1月の阪神・淡路大震災において関西方面の住民や企業が甚大な被害を受けたことは記憶に新しい。我が社においても奇跡的にハードの損傷は無かったものの、当時大阪本社にて集中管理されていたメインフレームを数時間にわたり稼動させることができず、企業活動に多大な支障を及ぼした。
事態は近年希に見る大災害であり企業も多大な損害を被ったが、万一の事態においても被害を最小限に食い止め、迅速な対応がとれる体制を常に整えておくことが企業活動における社会的責任であるという教訓を得ることができた。この経験を風化させることなく不測の事態にも迅速な対応ができるバックアップシステムの構築が急務とされ、災害対策システムの構築に至った。本システムでは平常時のメインフレームである大阪本社が大規模災害等で機能しなくなった場合を想定し、縮小規模での基幹業務の運用を東京本社で代行できることを目的としている。

b)システム概要
 弊社においては平常時は大阪本社に設置されているPX7800を本番機、東京本社のPX7500を開発機として運用している。本システム稼動時には、通常PX7800をメインフレームとして構成されているネットワークを、規模を縮小してPX7500をメインフレームとしたネットワーク構成に切替え、機能を限定した基幹業務システムの代行運用を実現する。

以下にその内容を記載する。
@機能限定版基幹業務システムの構築
現在社内基幹業務として稼動しているシステムの中から、最低限営業活動に必要とされるものを取捨選択し、機能を限定して規模を縮小した業務システムを構築。対象とした業務システムは受発注、在庫管理、出荷の3種類。
Aデータの更新、および保管
切替え運用の際に必要となるデータは大阪本社(PX7800)での夜間バッチ処理で作成。作成されたデータは東京本社に自動転送される。このデータは最低限の営業活動に必要なものが東京・大阪両本社で同じレベルで保管されるため、災害時のみならず通常のバックアップデータとしても利用できる。データの保持については容量が大規模になるため、ファイル単位で圧縮をかけPCサーバーに保管。圧縮および転送といった汎用機とサーバー間のインターフェイスには(株)帝人システムテクノロジー社製のデータ転送ソフト『DELIVERY』を使用。
B代行運用時ネットワークの構築
平常時は東京−大阪間を専用線で結び、両本社から各営業拠点に向けてネットワークが結ばれているが、代行運用時には大阪本社ネットワーク機器にも支障が及び、停止状態になることを想定して、各拠点から直接東京本社に接続する、非常時用のネットワーク構成を構築。

c)キーポイント
@緊急事態への迅速な対応
緊急事態発生時には当システムへの切替え運用により、営業活動の最短時間での復旧が可能になり、システム、およびネットワークの切替えに要する時間は最短で5時間程度。
A汎用性
当システムの切替え運用手順は大部分が自動化され、人的操作が介入する部分についてもマニュアルが完備しており、最低限の操作に関する知識さえあれば誰でもが対応可能である。
B安価な開発費用
当システムの開発は大部分を内策で行い、資源についても通常時には開発機として運用しているPX7500を利用、またネットワークについては通常時には社外とのデータ交換に使用しているISDN回線等を転用するなど新規の設備投資は極力抑えることで、最低限の費用での開発を実現した。
C既存システムの有効活用
Bで述べたようにメインフレーム・ネットワーク共、通常時にはしかるべき目的に使用されており、またデータの保管にはPCサーバーを利用し資源を有効活用している。

d)計画
【総合シミュレーションまでのスケジュール】
98.7 ’98.9 ’98.10 ’99.11 ’98.12 ’99.1 ’99.2 ’99.3
システム構成作成 システム概要設計 拠点環境整備 プログラム修正 構内テスト 総合シミュレーション ネットワーク環境整備
【システム開発に関わる人員】
当社担当 3人
NEC殿担当SE 2人(東阪各1名)
【使用機器】
・メインフレーム ACOS/PX7500
・データ保管用PCサーバー SV98
・ネットワーク構成機器 TA:iZ5100等
回線:ISDN

e)評価
全社的な取り組み課題であった危機管理対策の一環として当システムの構築を実行したが、通常業務において使用されている機器等を有効活用していることで、災害時のバックアップシステムとしての機能に限定されず、システム運用の課題でもあるデータの保全という点においても汎用性の高いシステムとして構築することができた。また開発、運用等の費用面から見ても費用対効果の高いシステムになったと思われる。今後の課題としては定期的なシステムのメンテナンス、メインフレームのリプレース等にも対応できるシステムの標準化があげられる。