携帯用座席確認システム「セキダス」の構築
−業務の軽減とCS向上の実践−

(PDF文書,557KB)


【要旨】

1.目的と背景
小田急電鉄の特急ロマンスカーは、全席座席指定で新宿から箱根湯本・片瀬江ノ島・ JR東海沼津駅ま
での区間で、一日100本以上運転されており、観光やビジネス、通勤に一日平均約4万人のお客様が利用されている。また、収益面、イメージ面でも小田急電鉄の看板列車である。
従来、この特急ロマンスカーの特急券の検札方法は、乗車時に駅係員が乗車口で特急券を確認する方法を取っていた。
この方法の問題点として
・乗車口が少なく、お客様にご不便をおかけしている。
・乗車口に駅係員の配置をしなければならない。
・乗車口確認と車内検札の二度手間になることがある。
などがあり、検札方法の見直しが課題となっていた。
こうした課題を解消すべく、今回開発した「携帯用座席確認システム」では、従来行われていた検札方法の変更から検討が始まり、システム設計がなされた。具体的には座席発売情報を車内で車掌が取得することにより、正規の特急券を持っているお客様に対しては検札を行わず、正規特急券をお持ちでないお客様に対してのみ検札を行うことを可能とする機能を具備することとした。
本システム構築の最終目的は、こうした機能を活用することにより、お客様への便利で快適な車内空間の提供はもとより、駅係員の削減、車掌業務の軽減を図ることである。

2.システム概要
本システムは、特急ロマンスカー車内の携帯端末からNTTDoCoMo DoPa網を利用して、座席管理を行っている新宿のホストコンピュータNEC ACOS S3500に接続し、車掌が車内で座席発売情報の取得ならびに指定座席の発売等を行う機能を開発したものである。
本システムでは、車内携帯端末を特急ロマンスカー座席管理システムの「一端末」と位置づけ、駅業務で取扱っている端末の機能の改修を行い、これを流用した。そのため、元来持っていたファイル情報を使用することができ、ホスト側の改修を最小限にすることを可能とした。また、ACOS S3500がLANプロセッサーを搭載していないため、同汎用機とルータの間に、TCP/IPのプロトコル変換、通信制御を行う中継機を置き、汎用機への影響を極力抑えた。

3.キーポイント
《携帯通信環境》
小田急全線を網羅する通信方法については、通信エリア、安定性、ランニングコスト、通信速度などの面を勘案し、システム導入当初は、NTTDoCoMo 800Mz帯の携帯電話を使用することでスタートした。
しかし、当初の目標であった通信時間1アクセス30秒をクリアすることが出来ず、エリアの問題で先送りしていた「パケット通信」が、その後の普及で利用可能になったことから、これを採用することとし、通信時間を1/4の約15秒まで短縮させた。また、ランニングコストについても2/3にすることが可能となった。
なお、クローズのパケット通信にすることにより、携帯電話の決められたID以外からのアクセスは、
NTTDoCoMo側の交換機でアクセスできないようセキュリティー対策を行った。
《携帯端末》
小田急の特急ロマンスカーは車両タイプが4種類あり、停車駅も煩雑なために、車内で取得する情報量は少ないものではない。これを携帯端末に取込むために、画面を号車ごとの座席配列イメージにすることで、ビジュアル的に確認をすることを実現した。また、カラーの携帯端末を使用することにより、座席の区間情報や大・小人別、検札済みの確認など文字は極力抑えて色別できるようにし、車掌のヒューマンエラーの防止と負担軽減等を図った。

4.計画
本システム開発にあたっての計画は、現場のヒアリングを含む運用設計、通信環境の整備、携帯端末の仕様、ホスト・中継機の設計と大別して4つに分類された。
仕様決定から納期までの日程が短かったため、各作業それぞれ独自に開発設計等を行い、その後全体の調整を行うこととした。
(1)1次開発 平成11年1月から平成11年7月
発売状況照会(座席の情報を表示)
検札システム(検札を行ったかどうかチェックする)
接続案内(接続列車のデータをあらかじめ登録して表示)
(2)2次開発 平成11年7月から平成12年1月
座席割当(座席指定特急券の発売)
通信方法の変更(NTTDoCoMo800Mzからパケット通信へ変更)
ダウンロード機能(パソコンから携帯端末へプログラム変更時使用)

5.評価
2次開発リリース後、パケット通信を採用したことにより、通信スピードならびに接続性が向上し、本システムは安定稼動している。
これは、バックグラウンドにモバイル通信技術の急速な発展が大きく寄与しているほか、ハードウェアについては、NECを始め各メーカの協力を頂き、ほとんど市販の商品を使用し、費用対効果が大きかったことに起因している。
本システムはエンドユーザを始め、他の鉄道会社からも評価を得ており、当社では今後とも特急ロマンスカーを利用されるお客様へ、より一層のサービスの向上を図るための提案を行っていく。