デジタルフォトコンテスト特別企画フォトレッスン2013

出会いの感動を人に伝える 光と影をとらえる写真術 語り手:吉村和敏さん

「Peggy's Cove」/『BLUE MOMENT』(小学館)より
代表作でもある写真集の表紙になった作品。空の絶妙な色合いが見る者を魅了する。

生きてきた証を写真に込めて

― これまでカナダで撮影された写真を集めた『プリンス・エドワード島 七つの物語』をはじめ、20点近い写真集を出版され、写真展も好評の吉村さんですが、写真との出会いを教えてください。

中学3年の夏、家にあったコンパクトカメラをいじり始めたのが最初で、その時は写真というよりカメラそのものに惹かれました。そこからオリンパスの一眼レフを手に入れて撮り始め、高校では写真部を創設しました。当時はよく雑誌のフォトコンテストに応募して、賞金稼ぎをしていました。その賞金でフィルムやレンズをそろえて地元の風景やクラスメートを撮ったりするのが面白かったですね。

― 20歳で初めてカナダに渡った時は、どのような想いだったのでしょうか。

写真

『吉村和敏 PHOTO BOX プリンス・エドワード島 七つの物語』(講談社)より
写真家としての原点ともなる、この豊かな自然に囲まれた島の四季を追いかけた。

高校卒業後、2年ほど東京で働いたのですが、やっぱり好きなことをやりたい、自分の力で生きていきたいと考えて、とにかく日本を出ようと。もう完全に勢いでしたね。行き先はいろいろ考えたのですが、故郷の信州とも似て自然が美しい、森と湖の国・カナダにしました。中古でそろえたカメラとレンズを持って、片道航空券で旅立って、向こうで買った中古車で大陸横断しながら、ロッキー山脈、ナイアガラ、ケベック……とたくさんの風景を見て。数ヵ月かけて大西洋まで出て、「赤毛のアン」で有名なプリンス・エドワード島にたどり着いた時、島の美しさに感動して、ここで写真を撮ろう、と決めました。

― 吉村さんが感じる写真の魅力とは何でしょうか。

旅をして、見たり聞いたり体験したりした感動を形にしていける、そしてそれを多くの人に伝えていけるということですね。旅は自分の生きてきた証のようなもので、それが一つの本として形に残っていくっていうことはやりがいもありますし、楽しいです。

― 写真の知識はどうやって得たのですか?

基本的には独学です。カメラは一眼レフから4×5インチの大型カメラまで使っていますが、特に大型カメラの知識は、当時フィルムを買っていたカメラ店の店員さんから教えてもらいました。写真学校の卒業生が多くてカメラにもすごく詳しいんです。質問すると親身になって教えてくれましたよ。

― デビュー当時と今とで、写真に対する姿勢や考え方は変わりましたか?

変わりましたね。技術や構図の変化はあまりないのですが、被写体に対するとらえ方が変わったと思います。だから昔の作品を見て、同じ被写体でも今だったらこう撮るなって思うことはよくあります。モチベーションもずいぶん変わって、当時は「自分は風景カメラマンだから人物は撮らない」「自分が撮りたくないものは撮らない」というスタンスでしたが、今は人物もすごく面白いし、何でも撮りたいと思っています。

― 撮影のテーマはどのように決めるのでしょうか。

写真

「工場全景」/『CEMENT』(ノストロ・ボスコ)より
圧倒的な規模感で存在を主張するセメント工場。硬質な被写体だがどこか温もりを感じる。

常にリサーチをしていて、テレビや本で気になるものがあればメモをします。人と会うことも大事にしています。詩人の谷川俊太郎さんに詩をつけていただいた写真集『あさ/朝』『ゆう/夕』も人との出会いから生まれた企画です。『CEMENT』という、セメント工場を撮影した写真集は、講演会でたまたま訪れた北海道のある街の工場から着想を得ました。不意に目に飛び込んできた見たことのない世界と建物の造形美がテーマになりそうだと思い、すぐにセメント会社に許可をとって撮影しました。切り口を決めれば、それを求めようとする心がありますから、幅広い視点で写真を撮れるようになるのです。

 

― 『BLUE MOMENT』、『MAGIC HOUR』など、自然の色が美しく染まる瞬間を収めた作品が注目されていますが、特にこうした時間帯にこだわられる理由を教えてください。

写真

「Canada-Annapolis Valley」/『LIGHT ON EARTH』(丸善出版)より
まさに「劇的な朝 焼け」とでも言うような絶景。赤や青と、一言では表現できない色彩。

刻々と空が色濃くなったり、夕焼けが鮮やかになったりと、映像を見ているかのように豊かに移り変わる色彩が一番の魅力です。写真家はすごくときめくと思います。撮り始めた頃から、このような日中には絶対にない色彩が出る時間帯を発見して撮っていました。夕焼けのシャッターチャンスは実は曇りの日なのです。太陽の方向に雲の切れ間があると、斜めから光が差し込んで上空にある雲が全部染まります。劇的な夕焼けや朝焼けになりますよ。空の色がベストの状態になるまで長い時で1時間くらい待ちますが、できれば数多くの写真を撮りたいので、いろいろな角度から撮れるように移動をしながら撮っています。

― 日本の風景も多く撮影されていますね。

30代までは興味がなかったのですが、改めて日本の風景を見てみると、海外と違っていろいろなものがごちゃまぜになっていて、日本にしかない景観があることに気づきました。『Sense of Japan』で撮ったような軽トラックや、看板や、綺麗すぎる道とか。そうした日本ならではの個性に気づいてからは、すべてが被写体に見えてきて、今は日本の風景を撮るのが楽しくてしかたないです。

― 人物を撮る時はどのようなことを意識されていますか? また、モデルの方とはどのようにコミュニケーションをとっていますか?

写真

『RESPECT』(丸善出版)より
友人に対するような自然な笑顔が引き出せるのも、写真家の手腕のひとつかもしれない。

僕は風景を撮る時も「人の気配」を撮っていますし、逆に人物を一つの風景としてとらえることもあります。風景写真と人物写真で特に意識を分けていることはありません。旅先で出会った人を撮る時は、会ってすぐに撮り始めます。時には会話しながらファインダーを覗かずに。特に、欧米の方は人懐っこいので、初対面でもフレンドリーに接してくれます。言葉が通じない国でも、敵意はないというのが伝わるらしく、なんとかなっちゃうんですよ。

― 吉村さんの眼には被写体はどのように映るのでしょうか。あくまでも画面を構成する要素としてなのか、もしくはその奥に見える人間ドラマや、自然の目に見えない力などを感じ取っているのでしょうか。

感性に響いてきたものが自分に合った被写体だと思うのですが、僕の場合は、カメラによって一つの絵を切り取るという感じなので、どちらかというと造形美を重視します。ただ、豊かな自然であっても無機質な工場であっても、そこには必ず人が手を入れた感じがありますし、作った人の気持ちなど、人の気配は入れたいと思っています。

上達のための5つの方法

写真:吉村和敏

最近もっともよく使うという愛機はPENTAX 645Dと
Canon EOS 5D Mark III(写真) という。

プロフィール

吉村和敏(よしむらかずとし)
1967年、長野県松本市生まれ。東京を拠点に世界各国を巡る旅を続けながら、意欲的な撮影活動を行っている。自ら決めたテーマを長い年月、丹念に取材し、作品集として発表。絵心ある構図で、光や影や風を繊細にとらえた叙情的な作品は人気が高く、定期的に開催している個展には、全国から多くのファンが足を運ぶ。
2003年 カナダメディア賞大賞受賞
2007年 写真協会賞新人賞受賞
http://www.kaz-yoshimura.com/

 
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