デジタルフォトコンテスト特別企画フォトレッスン2013

出会いの感動を人に伝える 光と影をとらえる写真術 語り手:吉村和敏さん

「Peggy's Cove」/『BLUE MOMENT』(小学館)より
代表作でもある写真集の表紙になった作品。空の絶妙な色合いが見る者を魅了する。

1 [何でも撮る、たくさん撮る]

とにかくこだわりを持たずに、何でも撮ればよいと思います。景勝地に行ったら、いかにもという名所だけでなく、そばにある橋や道や車を撮るとか。デジタルカメラならお金のことを気にせずに何枚でも撮れますから、できるだけ数多く撮ること。人物を撮る時は特にそうです。たくさん撮るためには、できるだけ長くフィールドにいるということが大切です。そうすると絶対に被写体に出会いますし、たくさん撮れば意外とよいものが撮れていたりするものですよ。

2 [「撮るのだ」と決意する]

撮影ポイントまで行って、何かを探すのではなく、何かを「撮る」と決めて撮影に出かけてみてください。普段撮りたいと思わない場所でも、撮ることを決めて意識するだけでたくさんの写真が撮れます。

『Sense of Japan』(ノストロ・ボスコ)より
田園風景の軽トラックにかわいらしさを感じてレンズを向けたという。

 

3 [人と違う写真を撮る]

コンテストに出品する場合は特に、人と違う写真を撮る努力をしてみましょう。例えば、晴天の写真が多い中で、曇りや雨の写真というのはすごく響きます。もしくは構図やアングルを変えてみる。僕の作品でも石仏を背面から撮った作品があります。正面からの写真はたくさんありますが、こうした意外性のある写真は面白みがあるので、挑戦してみてください。

4 [プリントしてみる]

デジタルの時代になって写真をプリントすることが少なくなりましたが、自分の癖や改善点など、プリントしてみることで気づくことがたくさんあります。街のDPE店でプリントしてもいいですし、プリンターをお持ちの方は、ぜひプリントして、撮った作品を形にしてみてください。新しい発見があると思います。

5 [人の真似をしてみる]

好きな写真家がいたら、その人の撮り方を真似てみましょう。そうすると自分の技術も向上していきます。積極的に写真展に足を運んだり写真集を見たりして、他人の写真を見る感性を磨いてください。

万治の石仏の後ろ姿/『Shinshu』 (信濃毎日新聞社)より
観光スポットとして名高い「万治の石仏」を背面から。目が釘付けになる斬新な構図だ。

 

フォトコンテストの応募者へメッセージ

自分の伝えたい想いをはっきりさせることが大切です。そうすればその想いが審査員や見る人達に伝わりますよ。自分が感じたことをそのまま見る側にも感じさせることは難しいですが、経験を積むことで可能になっていきます。感動を形にしていくという写真の魅力を感じながら、素直な気持ちで取り組んでみてください。

コラム 〜これも聞きたいQ&A〜

― デジタルカメラとフィルムカメラではどのように使い分けをされていますか?

樹木など緑の色彩が多い風景や、グラデーションを出したい時、深みを表現したい時はフィルムで撮ります。その他の風景や人物写真、スナップ写真はデジタルで撮影しています。

― 最近はコンパクト・デジタルカメラのユーザーが増えていますが、一眼レフや大判カメラとの一番の違いは何でしょうか。

写真

「グランド・リバーの丘」/『吉村和敏 PHOTO BOX プリンス・エドワード島 七つの物語』(講談社)より
突き抜けるような空の青さと、静かにたたずむ教会が溶け合う一枚。

やはり映りこむ情報量の違いだと思います。画像データもコンパクト・デジタルカメラだと3〜4MBですが、大判だと一枚で50〜60MBになります。サイズ的に扱いにくくはなりますが、大きいカメラの方が空気感が伝わります。だからもしすごく撮影したいシーンに出会った時に手元にコンパクト・デジタルカメラしかなかったとしたら、どうやって伝えようかと結構悩みますね。

― フィルムもネガとポジの両方を使われているのですね?

はい。やはりネガだとディティールやシャドウ部が全部映ります。露出計を使わずに勘で撮っても、ラティチュードの幅が広いから失敗しません。写真集でもその違いはわかります。

― カメラ以外でこだわりの機材はありますか?

僕はストロボもフィルターも使わないのですが、カメラバッグにはこだわっていて、シンクタンクというメーカーのものを使っています。移動が多いので、腰に固定できて手ぶらになれる物が重宝します。レンズもできるだけ軽いものを求めます。あと、最近GPSユニットを使うようになりました。撮影地が記録できて非常に便利です。

― 画像処理はされているのですか?

処理は一切しません。フィルターも使わないですし。ただ、デジタルカメラの画像はそのままのデータでは使いにくいので、実際に見た記憶を頼りに、より自然な表現となるようなレタッチはします。

― 写真集を多く出されていますが、印刷の再現性にもこだわりがあるのでしょうか。

もちろん印刷にはこだわります。用紙もたくさん試しますし。印刷会社に頼んで、細かい部分まで調整してもらいます。うるさく注文するので、嫌われてるんじゃないかなぁ。

― 何枚もの写真から作品集に使うものを選ぶ時は、どのような基準でピックアップされていますか?

写真

「North Rustico-Canada」/『BLUE MOMENT』(小学館)より
カナダで働く漁師の船を撮った作品。暗闇の中に鮮やかな赤、黄が浮かび上がっている。

デジタルの場合はモニターで見た時に適正露出で一番美しい一点を選びます。デジタルを始めてから露出のわずかな違いを意識するようになりました。フィルムの場合も同様で、ライトテーブル上で比べて最も露出が適正だと思うものを作品として世に出しています。選ぶ時はすごく悩みますよ。以前に比べると露出はアンダー目が好みになってきています。

― プロを目指す人へ一言アドバイスをするとしたらどういう点ですか?

一点勝負ではなく、構成を考えて撮影をしてみたらどうでしょうか。我々プロカメラマンは、写真展や写真集というまとまりを意識して撮影をします。技術のある方が一連の流れを考えて作ったら、素晴らしいものができると思います。

 

生きてきた証を写真に込めて

写真:吉村和敏

最近もっともよく使うという愛機はPENTAX 645Dと
Canon EOS 5D Mark III(写真) という。

プロフィール

吉村和敏(よしむらかずとし)
1967年、長野県松本市生まれ。東京を拠点に世界各国を巡る旅を続けながら、意欲的な撮影活動を行っている。自ら決めたテーマを長い年月、丹念に取材し、作品集として発表。絵心ある構図で、光や影や風を繊細にとらえた叙情的な作品は人気が高く、定期的に開催している個展には、全国から多くのファンが足を運ぶ。
2003年 カナダメディア賞大賞受賞
2007年 写真協会賞新人賞受賞
http://www.kaz-yoshimura.com/

 
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