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第3回SP研コラム

「みんなでつくる日本の技術」
写真:高林 徹 様
SP研会員の皆様、本田技術研究所の高林と申します。現在SP研の委員をやらせていただいております。

皆さんもよくご存じだと思いますが、二酸化炭素による温暖化や燃料枯渇の問題があります。日本では若者の自動車離れもあって車が売れなくなってきていますが、世界的に見ると、これから自動車が普及していくと予想される地域がまだまだたくさんあり、需要の伸びが予測されます。地域の自動車の普及率と病気の子供の生存率は相関があり、病気になった子どもをいかに素早く病院に運ぶことができるかが生存率に大きく係わっているようですが、このように生活に必要な自動車が世界中を見渡すとまだまだ十分には行き渡っていません。従って自動車は増えるが二酸化炭素は減らさなければならないため、走行に必要なエネルギー消費の効率を上げ、一台毎の車が出す二酸化炭素の量を大幅に減らしていく必要があります。従って、今後の自動車には革新的な技術の投入が不可欠で、この技術開発にはシミュレーションによる物理現象の深い観察が必要であると考えています。

私は今、自動車技術会のCFD技術部門委員会に参加させていただいております。自動車技術会には技術要素毎にいくつもの委員会が設置されており、そのひとつがCFD技術部門委員会ですが、各自動車会社や大学・研究機関の専門家が集まり、日本の自動車技術の向上のために、企業間の垣根を越えて、最新技術の情報交換や現在および将来の技術課題に対しての討議や共同研究を行っております。このCFD技術部門委員会内では、車体の周りの空力やエンジン等のグループに分かれ活動をしております。私の所属するエンジンの分野では、エンジンに出入りする速い流れや燃料の噴霧、そして燃焼と、多くの複雑な物理現象を相手にしなければならず、課題が山積みです。しかも、これら複合された現象は、10〜100分の1秒という極めて短い時間の中で起こっているため、エンジン自体もハイテクですが、それを計算する技術も難易度が高く、計算方法の研究はこの世からエンジンが無くなるまで続くのではないかと思ってしまいますが、二酸化炭素低減のためには継続的にやっていかなければなりません。現在までに行われてきた技術に関しては、それぞれの企業で資金を投じてやってきたこともあるためオープンにできない部分もありますが、将来を見据えた技術に関しては、共通の悩みとして協力して解決するための議論がなされています。

昨年の9月にこの委員会でSXやクラスターコンピュータ等を作っているNECの甲府工場を見学させていただきました。委員会のメンバーは計算が専門ですので、NECの技術者の方々の説明に興味津々でしたが、それよりも説明されていた技術者の方々が目を輝かせて楽しく自慢げにお話をされていたのが印象的でした。非常に高いモチベーションで技術開発を行っていることが分かり、今後のコンピュータの性能向上は間違いなしと思いました。自動車は速ければいいというものではないですが、CPUの速度は速いことに超したことはなく、より大規模な計算ができれば今まで考えてもみなかった違った世界が見えてきます。

日本は石油や貴金属が取れるわけではないので、今後も日本人が幸せに暮らしていくためには、技術をなりわいにしていくしかありません。金融で繁栄していた国もありましたが、お金を転がしてもそれ自体何も生み出さないので、いずれもろく崩れます。私は日本の基幹産業である自動車やコンピュータの技術が、企業間、産学間の垣根を越えてもっとお互いに協調し合い発展させ、日本の技術力を今後も今まで以上に高めていく必要があると思います。日本での技術研究は、各企業、各研究機関が同じような研究をばらばらにやっていて、大きな力となっていないように思えます。「競争」という緊張感で個々の技術力を高めていくことや自由に研究を行って新しいものを見つける事も必要ですが、学会やこのSP研など民間の研究会を足がかりにして、大きな枠組みの中で一つの目標を決め役割分担を定めて、共同で系統だった技術開発を行っていく必要もあると思います。ヨーロッパなどではコンソーシアム等で上手くやっているのに、日本では何故上手くいかないのでしょうか?レベルの高いシミュレーションとそれを高速で計算するコンピュータを日本の代表的な技術の一つとするのが私の望みであり、一介のサラリーマンが少しでもお役に立てないかと考え、いろいろな技術会合に参加している次第です。日本では欧米で作られたシミュレーションなどのソフトを当たり前のように買ってきて何の疑問も抱かずに使っていますが、電機製品や自動車のように海外にも押し出すことができ、日本のもの作りにも役立つシミュレーション技術をみんなで協力してつくっていきませんか!

最後に宣伝です。5月20日〜22日にパシフィコ横浜にて自動車技術会の春季大会が開かれますが、22日(金)にCFD技術部門委員会が企画をしたフォーラムとセッションが行われますので、自動車技術へのCFD技術の応用にご興味のある方は、是非ご参加下さい。
http://www.jsae.or.jp/2009haru/
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