文学散歩

第22回 「村上海賊の娘」 ゆかりの地 愛媛県 今治市

史上最強の海賊と称された村上水軍ゆかりの地を訪ねて
散歩した人:日本食研ホールディングス株式会社 実業団トライアスロン部 石塚祥吾さん・長谷川大輔さん・川島えりさん

トライアスリートと行く『しまなみ海道』

戦国時代、織田信長方の水軍を破り史上最強の海賊と呼ばれた村上水軍。その海賊王の娘である景姫が大活躍する痛快時代小説「村上海賊の娘」。

今回の文学散歩は、海賊たちが暴れまわった瀬戸内海の島々を結ぶ『しまなみ海道』を日本食研実業団トライアスロン部の石塚祥吾さん、長谷川大輔さん、川島えりさんと一緒に訪ねました。西日本唯一の実業団トライアスロン部で活動する3人は、国内トップクラスのトライアスリートです。「目指すはリオ、そして東京オリンピックです」と石塚さんは目標を話します。今治を拠点に活動する3人ですが、意外にも『しまなみ海道』を訪れたことはほとんどなく、今回の文学散歩を楽しみにしていたそうです。

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瀬戸内海を一望できる絶景スポット

最初に訪れたのは糸山公園展望台です。小高い山にある展望台からは、全長4105メートルの来島海峡大橋を望むパノラマビューが楽しめます。展望台の階段を登りきった瞬間、目の前に広がる絶景を前に3人は思わず嬌声をあげました。「橋がすごく近くにあり、海峡を行き交う船も見え、とても印象的な場所ですね」と川島さんは感激した様子です。ひとしきり絶景を楽しんだ後、3人は来島海峡大橋を渡り、大島へ向かいました。

くねくね曲がる山道を抜け、目指すは標高307.8メートルの亀老山。頂上には、著名な建築家の隈研吾氏が設計したモダンな展望台があります。構造物の大半は地中に埋まり、コンクリートと木で組まれた回廊がかけられたモダンなデザインの展望台。デッキに立つと360度視界いっぱいに瀬戸内海の美しい景色が広がります。「はじめて訪れましたけど、本当に素晴らしい景色ですね。来島海峡やたくさんの島々、水平線まで見えて、まるで瀬戸内海の中心に立った気持ちになります」と石塚さんは感想を話します。

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写真左: 糸山公園展望台から来島海峡大橋を望む。写真中央:亀老山頂上からの絶景

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亀老山展望台で瀬戸内海の景色を楽しむ3人(写真左から川島さん、長谷川さん、石塚さん)

天下に名をとどろかせた村上水軍ゆかりの地へ

続いて訪れたのは「今治市村上水軍博物館」。ここには村上水軍に関わる古文書などの資料がたくさん展示されており、当時の海賊衆の実態を学んだり、甲冑や小袖を身に付けるなどの体験ができます。なお、小説の主人公景姫の活躍はあくまでフィクションで、実在したかどうか定かではないそうです。「瀬戸内海に海賊がいたなんてまったく知りませんでした。こうして歴史を学んだことは、視野を広げる貴重な機会になりました」と長谷川さんは博物館見学の感想を話します。

全盛期には能島(のしま)・来島(くるしま)・因島(いんのしま)の三家に分かれ、強い同族意識を持っていた村上水軍。その三家の中でも最強と言われ、どこの大名にも臣従せず独自の姿勢を貫いたのが能島村上氏でした。その能島村上氏が本拠とした能島を望む海岸線へ向かいました。全周わずか850メートルしかない能島、最強の海賊の本拠というには驚くほどの小ささです。もちろん、それには理由があります。この海域は伯方島(はかたじま)と大島が接近して急に狭くなっており、そこを堰き止めるように鵜島(うしま)という島が横たわっています。能島は、この鵜島と大島の間の極端に狭い水道にあり、干満時には最大10ノット(時速約18km)もの潮流が渦巻き、荒神(こうじん)瀬戸と呼ばれる難所中の難所です。能島村上氏は、天然の要害となるこの地形を最大限に利用し「海賊働き」をしていたのです。「この小さな島の海賊が、あの織田信長軍と張り合う勢力を誇っていたと知り、驚きました」と話す石塚さん、海賊たちが躍動した時代に思いを馳せていました。

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今治市村上水軍博物館で貴重な資料や復元品などを閲覧しながら海賊の暮らしを学ぶ

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写真左:潮流の激しい能島周辺。写真中央・右:バイクに乗り伯方島を目指す

 

絶景の『しまなみ海道』を走り終えて

3人は能島を望む海岸線からレース用のバイク(自転車)に乗り、軽やかにペダルを踏み伯方・大島大橋を渡って伯方島へ向かいました。「『しまなみ海道』をバイクで走ったのははじめてでしたが、橋の上から見下ろした瀬戸内海の景色は最高にきれいでした」と長谷川さん。さらに3人は、伯方島を縦断して大三島橋まで走ります。『しまなみ海道』は、全域にサイクリングロードが整備されており、全国からサイクリストがツーリングに訪れる自転車天国として知られています。

3台はきれいな隊列を組み、海岸線を走り無事目的地の大三島橋に到着しました。最後に文学散歩の感想を伺うと「村上水軍は小さな島の海賊なのに本州まで勢力を広げていてすごいと思いました。私たちのトライアスロン部は小さなチームですけど、これから世界に羽ばたけるようがんばりたいと、気持ちをあらたにしました」と川島さんが話してくれました。

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大三島橋から望む瀬戸内の景色

 

(2014年5月12日掲載)

作品紹介

『村上海賊の娘』 和田竜著

戦国時代に隆盛を誇った瀬戸内の海賊、村上水軍。海賊王の娘である景姫は、戦に駆り出され苦境にある留吉たちを救うため、たった一人で織田方の水軍に戦いを挑む。魅力的な登場人物たちが繰り広げる迫力満点の海戦を描いたエンターテインメント時代小説。全国書店員がいちばん売りたい本を選ぶ「本屋大賞」2014年大賞受賞作。

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発行元:新潮社

 

今回の散歩道

糸山公園展望台→大島→今治市村上水軍博物館→伯方島→大三島

<所要時間:約3時間>

糸山展望台

糸山公園内にあり、日本三大急潮のひとつ来島海峡と世界発の三連つり橋の来島海峡大橋が一望できる人気の撮影スポット。来島海峡展望館では三連つり橋の仕組みなどが紹介されている。

大島

今治と3連吊橋の来島海峡大橋で結ばれた芸予諸島の西の玄関口。島の北東部宮窪地域は、中世に村上水軍が本拠をおき、遺跡や言い伝えも多数ある。吉海地区には四国最大のバラ公園や瀬戸内海が見渡せる亀老山がある。

村上水軍博物館

戦国時代に瀬戸内海の覇権を握っていた村上水軍をテーマにした博物館。2階は古文書や近辺からの出土品、修復された甲冑などが展示された展示資料室、家中や小袖を着ることができるわくわく体験ルーム、水軍に関する豊富な資料を閲覧できる村上家記念室がある。伝統と現代建築が融合した外観で、3階展望デッキからは能島城跡をはじめ、美しい瀬戸の景色を見ることができる。

伯方島

しまなみ海道のほぼ中央に位置し、大三島と大三島橋で、大島とは伯方・大島大橋で結ばれている。戦国時代は村上水軍の城砦が置かれた。造船・海運・養殖・製塩業で発展し、自然塩「伯方の塩」で知られる。島北西部の開山公園の展望台には360度のパノラマが広がり、瀬戸内の多島美を楽しめる。また大三島橋下の鼻栗瀬戸や、伯方大島大橋付近の船折瀬戸では潮流や渦を見ることができる。

■ここでチェック

今治市村上水軍博物館

日本食研 実業団トライアスロン部

1998年に設立された西日本唯一の実業団トライアスロン部。日本食研が、単なるスポンサーとしてではなく選手・スタッフを社員として迎え入れ、万全のバックアップ体制を構築する国内トップチーム。現在、選手4名・スタッフ3名でオリンピック出場を目指して活動中。

 

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