全NUAユーザー事例論文:論文パル2005
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大型汎用コンピュータのOMCSマイグレーション事例
〜オープンサーバーを活用した基幹システムの処理スピードアップと運用コストダウンの実現〜
PDF(763KB)
 
【1】 背景・目的
 
ダイキン工業株式会社では、1998年より基幹システムの再構築を契機に、空調機の販売・物流システム、生産システム、修理保守システム等のオープン化を推進してきた。一方、大型汎用機(ACOS6)で集中処理される実績計上・月報処理や輸出業務、経理、人事システムについては、稼動プログラムが16,000本、オンライン1,000画面、バッチJOB数2,500本にも及び、約40の関連システムと連携を行う社内最大の基幹システム群であり、その規模と連携範囲の広さからワンポイントでの再構築が難しく、これまでは汎用機上で業務変更や決算早期化への対応を行ってきた。
しかしながら急速なビジネス拡大に伴う処理量の飛躍的な増加はオンラインのレスポンス悪化や業務帳票提供の大幅遅延をまねいていた。この為、会社が進めるスピード経営にIT面で十分対応することができず、社内からは早期の対策を強く求められていた。
一方、NECからは当該汎用機のサポート停止の通知があり、現行機への更なる投資やリソース増強も困難な状況となっていた。
こうした状況を受け、抜本的打開策の検討を重ねた結果、次世代オープンサーバへのマイグレーションの実施を決断した。空調事業のピークシーズンイン前に課題解決すること、本番切り替えには1週間を要すること、移行が早ければ早い程コストダウンによる経営貢献が図れること等の観点から、実施目標時期はリスクテイキングではあるが、’05年正月と定め、’03年秋より挑戦を開始した。
今回のインフラ改革の目標効果は、ユーザーサービスの安定・高品質化及びコストダウンの視点から以下の4点を会社にコミットした。

(1) 業務処理の短縮化…ピーク時でもオンライン・業務帳票の朝8時提供保障
(2) 決算処理サイクルの短縮…1週間→4日間
(3) コストダウン…コンピュータ運用費を中心に固定費の50%を削減
(4) 業務革新、意思決定スピードアップに寄与するインフラ構築…帳票の電子化によるペーパレス化と業務改革の推進、データベースのオープン化による情報活用の高度化の実現

   
【2】 概要
 
1)マイグレーション方式
納期と品質保障を最優先事項と捉え、オープンサーバ上に汎用機と同等の実行基盤を構築し、既存プログラムやファイル資産を新基盤上にトランスレーターを用いて機械的にワンポイントで移行するストレートコンバージョン方式を採用した。
2)システム構成
ハードについてはコストダウンの極大化を狙い、省電力・省スペース化が可能な統合型サーバ「NX7700i」とストレージ「iストレージS3300」を導入し、開発・本番・バックアップ環境を1筐体に収容。各システム基盤については運用管理・バッチ基盤「ウェブサム」をベースに、NECとの協業で汎用機同等のオンライン処理やバッチ制御ができるインフラ基盤を構築した。

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電子帳票については「Report Viewer」を導入し、作成から配布までのタイムラグの排除や保管スペースの極小化、必要な帳票が即時に探せないといった紙運用の課題解決を図った。

   
【3】 開発のキーポイント
 
超短納期・大規模移行を成功させるポイントは、『テストの徹底効率化』と『高品質な移行ツールの作成』にあると考え、開発・テストで様々な創意工夫を行った。以下に一例を紹介する。

(1)徹底したツール化

徹底した手移行の排除が品質確保につながると考え、業務プログラムは独自開発したツールにより100%自動変換した。自動変換に徹底的にこだわったことで変換精度が飛躍的に高まっただけでなく、システム凍結が不要となり、本番の一週間前まで既存システムのユーザーからのメンテナンス要請への対応が可能となった。

主なツール 機能 内容
プログラム移行ツール 言語タイプ毎にCOBOL85/Eに変換
(COBOL75/85/JIS,COBOL/S,IDLU)
COBOL/Sは変換機能をプリコンパイラとし、本番後もCOBOL/Sでの保守が可能。
データ移行ツール 登録したFILE属性、フォーマット情報を元に新基盤形式へ自動変換 抜出、転送、コード変換、新環境への登録の全工程を完全自動化
JCL移行ツール 汎用機JCLをUNIX標準Cシェルへ変換 共通手続きを部品化し、汎用機並の記述の簡素化と共通化を実現
JOBネット移行ツール 汎用機FIPS定義情報を変換し新基盤登録パラメータを自動生成 JOBコントロールはJob-Centerを採用
資産抽出ツール 過去1年の稼動実績より移行資産(メインと関連するサブ,COPY句等)を自動抽出 これにより、全資産の40%(約10,000本)のプログラムを整理できた。

(2)テストの超効率化

変換ツールは、5種類の言語(COBOL75・85・JIS、COBOL/S、IDLU)と5種類のファイル(ADBS、順編成、索引編成、RIQS、ISP)の組み合わせによる命令パターンやDML命令パターン、実行時非互換検査など約370パターンの機能テストによりツールの基本機能テストを実施した。
バッチ結合テストでは、汎用機処理とサーバ処理との比較チェックにはDBとファイルの自動照合ツールを作成し、照合の完全自動化により大幅な工数削減と時間短縮が実現できた。又、テストは機能網羅と業務保証の観点に立ち、全JOBをテストするのではなく、移行ツールの機能・難易度と業務の重要度から絞り込んだ約400のJOBをテストした。これは全体の17%に過ぎないが、6ヶ月の検証期間でツールの不具合と機能漏れを100%検証することができた。
約1,000本のオンラインは、ネットワーク上を流れる入出力情報を採取・編集し、画面入力と応答画面比較を自動で実行するオンラインシミュレータを開発し、効率化を図った。これにより、現行システムの本番データをテストデータとすることができ、完全自動化によってSEによる画面入力工数はZEROとなり、5ヶ月間で全入力パターンの検証ができた。
以上のような施策により、検証には利用ユーザーが全く参画せず、IT部門のSEだけで、マスタープラン通り全テストをやり遂げた。

(3)移行リスクの極小化

約40の関連サーバとのデータ連携機能については、周辺サーバ側のシステム対応を含めて同時に移行することは実現性に乏しく、事前に中継サーバ経由に順次移行する事で本番移行時の作業範囲の局所化と容易化に成功し、ワンポイントでの移行を実現可能にした。
   
【4】 評価
 
これらの施策を着実に実行し、次工程の段取りを事前に準備していくことで、他社例を参考にしての当初見積の約1/2という挑戦的な計画でのシステム移行を完遂し、品質面においても致命的なトラブルは全くなく、本番初日から安定稼動する事ができた。
コストダウンは公約通りハードや光熱費等のユーティリティ、運用人件費を含めて約50%の費用の削減を達成。処理スピードに関しても日次処理性能は2倍強(9H→4H)、月次販売請求処理に至っては8倍(48H→6H)の予想をはるかに上回る高速化を実現し、月次の売上見通しが4日→1日で提供できるなど、意思決定のスピードアップや決算早期化にも寄与できるインフラ環境となった。
又、SEの悩みの種であったリソース不足に起因する障害がゼロ化するなど、システムの安定稼動にも大きな効果を発揮した。
今後については複雑化したシステムを新サーバ上で正規化していくだけでなく、今回構築したインフラ基盤をベースに、これまで導入してきたオープンサーバ群の統合化やデータベース統合によるグローバルデータベース構築等の、更なる戦略的IT武装強化の取組につなげていきたい。


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