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サステナブル・ワークスを実践する最新オフィスビルにおけるIT基盤整備 PDF(816KB)
 
【1】 背景と課題
 


当社東京本店は、分散している事業所を集約し業務の効率化を図るために、東京都江東区新砂に新社屋を建築し、昨年11月に約2000名が新拠点に移転した。この移転計画においては、次世代のオフィスビルを目指して「高効率・高品質なワークプレイスの構築」、「環境負荷の低減」、「コストパフォーマンスの追及」を三本柱に、「サステナブル・ワークス」を実践することになった。「サステナブル・ワ−クス」とは、“お客様とともに環境と調和する空間創造を行うことを目指した建築への取り組み”として当社が提唱するものである。この「サステナブル・ワークス」をIT面で実践することが、IT部門であるインフォメーションマネジメントセンターの使命となった。
このために必要となるIT基盤について、最新IT動向の調査や利用部門の担当者を含めたIT適用ワーキングチームでの検討を実施し、

(1)コミュニケーション・コラボレーションの向上
(2)構築時、運用時におけるコストの低減
(3)激しく変化するIT環境や社内外の環境変化へも柔軟な対応を課題として設定した。
これらの課題を解決するために実施した事項について、以下に述べる。

   
【2】 概要
 
上記の課題を達成するには、単なるITの導入だけ、または新しいオフィスレイアウトの導入だけでは実現できない。我々は、この課題を最先端ITシステムとオフィスファシリティを一体のものとして捉え検討を進めた。この結果、IT面としては以下の5つの対策を実施することとした。

(1)通信関連コストの削減、席移動時などにフレキシブルな対応、音声・画像の統合活用によるコミュケーションの向上を図るためのIP電話システムの導入

(2)業務のスピードアップとお客さまへの迅速な対応を図るため、コミュニケーションコーナー、会議室、食堂など、館内どこでも自席と同様に業務遂行ができるワイヤレス環境の構築

(3)情報の共有化を実現するために部門個々に分散配備されているサーバの集約・統合

(4)メンバー全員が情報をビジュアルに共有でき活発なディスカッションを実現できる会議室のAV/IT装備

(5)情報セキュリティとビルセキュリティを強化するためのICカード利用

上記の対策を具現化するために、必要機能の詳細検討、利用者ニーズの確認、製品の選定、実機検証、詳細設計などの実施計画を策定し、ステップを踏んでIT整備を推進した。これに加えて、設計段階で建築・設備と協調した構築計画を行い、美観性・メンテナンス性も兼ね備えた機器配置やケーブル配線等を実現した。また、建築工事とIT整備の計画を事前に整合させることで、電源系と通信系の同時施工や効率的なケーブル配管などを可能とし、短工期化と工事費用の低減を可能とした。
上記のIT基盤整備は、2004年4月より構築を開始し、同年10月に構築と試験を完了、11月に2回に別けて移転を行った。この移転時及び現在に至り、安定的に稼動し業務に活用されている。
   
【3】 実施内容(キーポイント)
 


今回のIT基盤整備においてキーポイントとなった事例を以下に述べる。

事例1)IP電話システムの信頼性確保
IP電話の設計にあたっては、他社の導入事例を参考にし、データ系LANと同一の構成で接続する方式とした。その後詳細設計を行った結果、当初の方式では、スイッチなどのLAN機器の故障率が高く、システム全体としては「利用部門が要求するPBX並みの信頼性」の確保が困難であることが解った。特に多くの電話機を収容するフロアスイッチが故障した場合、長時間かつ広範囲に障害が影響することも判明した。また当社で必要な交換台機能、秘書電話機能、内線延長機能などが、ソフトスイッチのみでは実現できないことも判明した。このため以下のシステム構成を考案し、従来のPBXと同等の信頼性・機能を併せ持った電話システムを実現した。

(1)LAN故障により電話が影響されないようにIP電話機を接続するLANの構成を二重化し、フロアスイッチ等が故障時には自動的に切り替る機能を付加

(2)IP電話システムをソフトスイッチと小型PBXを連携して動作できる構成とし、当社で必要な電話機能を小型PBXで対応できる方式の採用

(3)より信頼性を高めるため、IP電話網の故障時に小型PBXを経由してアナログ回線でバックアップできるしくみの採用

事例2)変化に柔軟対応できるワイヤレス環境の構築
当初、どこでも業務遂行を可能とするように館内全域において無線アンテナを最適配備し、無線LANとIP電話システムによるIP携帯電話の利用を計画した。
その後、詳細設計を進める時点で無線LANは電波の伝搬調整が難しいこと、また、当時のIP携帯電話では安定利用が不可能であることが判明した。このため以下の対策を実施し、安定利用と今後の技術変化にも対応できるワイヤレス環境を構築した。

(1)携帯電話網を従来から安定利用していシステムで構築。但し、いつでもIP携帯電話に移行できるように、ケーブルをIP用にするなどの工夫を実施

(2)アンテナ設計時に建物形状と無線特性を考慮したアンテナの最適配備シミュレーションを実施、運用開始後も利用状況を計測して位置調整を実施

(3)容易に無線アンテナの調整や位置替えができるように新天井システムの空調ダクトにアンテナ設置スペースを設けるとともに、アンテナケーブルに余長を確保
また、アンテナをうまくスペースに隠すことで美観性を確保

上記以外にも、サーバ集約・統合のためのサーバ室整備、活発なディスカッションを実現するための壁面にスクリーン兼ホワイトボード素材の採用や照明制御を可能とした会議室整備、情報セキュリティとビルセキュリティの本人認証をICカードに一本化など、建築と融合化したIT基盤整備を実施している。

   
【4】 評価と今後の課題
 
今回のIT整備は構築段階で実機試験や障害対策リハーサルなどを繰り返し実施することで、大規模工事であるにも関わらず、移転時を含めてほとんど障害がなく安定的に稼動させることができた。課題であったコスト低減についても建築工事と協調し整備することで予算を大きく下回ることができた。またランニング費用についても通信費用が昨年実績よりも24%削減できるなど既に効果をあげている。今後は計画したIT環境がいかに活用されているかを評価するとともに、新たな活用方策にチャレンジしていく。





(株)竹中工務店 東京本店新社屋
 

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