建設業のEDI標準「CI-NET」に対応したASPシステムの共同開発とその運用
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1.背景 
建設業界は、公共工事の削減、民間設備投資のマイナス基調など、縮小する建設市場の中で熾烈なシェア獲得競争にさらされている。その中で各社とも受注の決め手となる工事原価の低減に向け様々な取り組みを行っているが、その一つにITを活用した取引業務の再構築がある。一方、建設業の電子化を促進するため、財団法人建設業振興基金は見積から請求までの一連の業務のEDI化を目的に、メッセージ等の標準化を進めてきた。その成果が実務利用可能なEDIの規約「CI−NET LiteS実装規約」となって実を結んできた。
ゼネコン4社(大林組、鹿島建設、清水建設、竹中工務店)は、当初、「CI−NET LiteS実装規約」に対応した電子商取引システムを各社個別に展開する予定であった。しかし、平成13年8月に、4社が共同で電子商取引システムを開発し、これをASPとして協力会社に提供することにより、業界全体のEDIの推進に寄与することに合意した。

2.開発の目的
建設業の取引は資材、労務等を発注するゼネコンと重層構造の協力会社から成り立っているが、協力会社は特定のゼネコンに従属せずオープンな受注形態をとることが多い。このような体質の中でEDIを進めるには標準化が不可欠であり、業界では早くからCI−NETとして作業が進められてきた。これまで、一部の協力会社はCI−NET対応の市販ツールを購入しEDIに対応してきたが、ツールの利用にはある程度の情報リテラシーが要求されることから、システム導入、利用、メンテナンスの面で協力会社側の負担が大きかった。
ゼネコン4社は、各社でそれぞれ数千社にのぼる協力会社に市販ツールを展開することは難しいと考え、ASPサービスに注目していたが、ASPサービスを1社で開発、運用する場合、その利用料が市販ツールより割高になることは明らかであった。そこで4社は共同でASPシステムを開発、運用することにより、中小の協力会社でも安心して加入できる安価で高品質なサービスを提供することにした。

3.キーポイント
(1)RFPの作成と競争入札
適正な費用で高品質なシステム開発を行うためRFPを作成し、複数ベンダーにシステム提案を求めた。
(2)プロトタイピング方式による仕様の確定
ユーザインターフェースを確認するため画面イメージを繰り返し作成した。また、これを利用して利用者となる協力会社も参加した評価会を実施し、仕様を絞り込んだ。
(3)情報共有によるプロジェクト管理
プロジェクト推進のための各種資料は一般の情報共有用ASPサービスを利用し徹底して情報の共有化を進めた。
(4)運用業務の委託とサポート業務の分散化
開発したシステムは、建設大手企業等が出資しているASPサービス会社に運用を委託し、さらに、利用に当たっての教育や支援の分散化を図るため、4社それぞれの情報関連会社とサポート業務を分担し、相互に協力しながら展開する方式にした。

4.評価
開発からサービス開始後の運用を振り返り、主なキーポイントを評価してみる。
(1)RFPでは、ベンダーから得意分野のソリューションの提示があり、それが評価ポイントに反映された。適切なソリューションを得る手段として有効であった。
(2)システム開発では、プロトタイピングが4社と開発ベンダーの迅速な合意形成に効果があった。また、情報共有用ASPサービスの利用も、関係者が足並みを揃え、迅速な意志決定をする上で不可欠なツールであった。
(3)システム運用では、ユーザー支援体制を分散化したことにより、導入手続きや利用教育、利用支援がASPサービス会社に集中することが避けられ、協力会社に十分なサポートを行う体制を敷くことができた。
平成15年3月末時点で、当サービスの参加企業は約1350社を数え、国内最大のCI−NET対応ASPとしてサービスを行っている。開発に携わった者として、スケジュール通りにサービスインできたことに安堵しているところである。