既存システムを利用したローコストなイントラシステムの構築
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1. 目的・背景
WWWのドラスティックな発展は、多くの企業において自社システムのアーキテクチャをインターネット技術と標準プロトコルを応用したWEBシステムに移行していく事を推し進める結果となった。しかし、企業システムのアーキテクチャは依然としてWindowsアプリケーションを使用したクライアントサーバシステムによる構成が中心となっておりWEBシステムへの移行は限定された範囲で実施されているのが実状である。これは、運用管理面だけで言えばクライアント側にブラウザを実装するだけで良いWEBシステムの方が明らかに優位ではあるが、一方で、Windowsアプリケーションのインタラクティブな操作性と帳票印刷等の機能性を必要とする業務がどうしても企業の基幹システムに存在する為、ユーザインタフェースについてはWEBではなくWindowsを選択せざるをえないのである。
弊社においても、ユーザからの要望により発行しているレポート及び付随する画像を閲覧できるシステム(以下、閲覧システム)を開発することになったが、システム開発にかけるコストは大幅に削減さ れた状況だった。このような状況の中で既存のクライアントサーバシステムを全てWEBシステムに再構築するのではなく、ローコストで開発し早期にシステムを立ち上げるべくWEBシステムと既存 のWindowsアプリケーションを組み合わせたシステムを構築する事を試みた。
当論文はそのプロジェクトにおいて多大な費用をかけずとも、既存のアプリケーション資源をそのまま有効活用し、継承しつつWEBシステムへ移行する事を狙いとした取り組みを紹介するものである。

2. 概要
閲覧システムは、タイヤのテスト状況や発行済みレポートの表示・印刷、解体されたタイヤの断面画像の表示・印刷、蓄積されたレポートデータのEXCEL出力、テストの統計出力などの機能を備えている。テスト部門(地理的に分散)の状況をテスト依頼元である本社設計部門がリアルタイムに状況把握できる事を目的にしている。
閲覧システムのH/W、S/W構成においては、データの集約先としてSQL-SERVER7.0(以下:SQLサーバ)を利用。タイヤデータの検索・表示・データ出力の基本処理はInternet Information Server5.0(以下:WWWサーバ)上で稼動するActive Server Pages(以下:ASP)を利用している。またグラフを含むレポート表示や画像表示及び印刷表示などの複雑な処理についてはActiveテンプレートライブラリ(以下:ATL)を使用した既存Windowsアプリケーション連動ツール(以下:W-Connect)と Visual C++(以下:VC++)を活用することでイントラネットシステムと連動する仕組みを構築している。以下に閲覧システムの全体イメージを示す。
 【概要図】

3. キーポイント
1)WEBアプリケーションによるシステム構築
  閲覧システムはWEBアプリケーションによって構築されている。従来のWindowsアプリケーションで構築した場合、本社設計部門の各クライアント約250台にデータベースアクセスの為のプログラムをインストールする必要があり、後々の運用コストの増大につながりかねない。
閲覧システムでは高機能化され肥大化したクライアント(Fatクライアント)を、WEBブラウザで稼動するシンプルなクライアント(Thinクライアント)へ移行することで、システムの初期導入コストやインストール等の付帯コストを削減している。

2)既存のWindowsアプリケーションをWebシステムで再利用
テスト部門の帳票は約40種類あり、細かな罫線により測定値や測定結果のグラフ及び画像等を巧みにレイアウトしてある。データについては電子化してあるがレポートを印刷して数年間保持する必要がある為、帳票印刷機能は必須であった。また、設計部門ではタイヤ解体後の断面図をチェックする必要がある為、画像の表示(任意の倍率での拡大、縮小)機能及び画像の印刷(実寸、縮小)はどうしても必要な機能であった。この部分を全てWEBアプリケーションで作成するとした時、フルコーディングする場合及びWEB用帳票印刷・画像処理コンポーネントを利用する場合の両方とも新規でロジックを構成していくことになり開発工数の肥大化が懸念された。そこでローコストでWEBシステムを実現する為に、既存のWindowsアプリケーションを機能別に分解しWEBシステム用にコンポーネント化して使用することにした。また、WEBシステムからWindowsアプリケーションに連動する為のツールを作成し、機能別に分解された各コンポーネントをフレキシブルかつ高速に連携させることにした。
これにより、イントラネット上で表示されたレポートのヘッダ情報からレポート詳細やそれに付随した複雑な画像表示や印刷処理を容易に実現、同時に開発コストを削減しローコストなイントラシステムを短期間に構築した。

3)コンポーネントの高速化と軽量化
軽快な操作性が利点でもあるブラウザに重いWindowsアプリケーションを連携させた場合レスポンス低下によるユーザビリティの悪化を招く懸念がある。そこで使用頻度の高い連携ツールのW-CONNECTに関しては、高速かつ軽量なDLLにする為にATLにて開発した。これによりスムーズで快適な操作性をブラウザ上で実現した。

4. 計画(実績)
2002年3月:要求分析
     8月:システム設計、開発に着手
    10月:閲覧システム第1次リリース
       →レポート表示・印刷、レポート一括印刷、添付画像表示・印刷コンポーネントリリース
2003年2月:閲覧システム第2次リリース
→解体断面画像のビューア(任意倍率表示、実寸・縮小印刷)コンポーネントリリース

5. 評価
運用面では、各クライアントのセットアップ作業が不要になり、システム運用担当者のコスト削減に貢献した。開発面では、既存システムのコンポーネント化を実施し再利用することにより、開発工数の増加を防ぎローコストなイントラシステムを構築できた。ユーザからは、WEBによる標準的なインターフェースと高機能なWindowsアプリケーションの使い分けにより設計部門とテスト部門の情報共有が飛躍的に向上したと好評を得た。