苦情対応態勢の強化を実現する企業内Webシステムの構築
(PDF文書,1,063KB)


1.はじめに
三井住友海上火災保険株式会社は、経営理念の一つとして、「保険・金融サービス事業を通じて、最高の商品とサービスを提供しお客さまの満足を実現します」を掲げ、CS(お客さま満足)No.1を追求している。CS No.1を実現するためには、全社員が積極的かつ真摯にお客さまの声に耳を傾けることが必要と認識している。特に、お客さまからの苦情を「市場を最も理解するための経営資源の一つ」と捉え、苦情対応態勢の強化を図ることは、自由化が急激に進展している保険業界において、勝ち組みとして生き残るために極めて重要な経営課題と位置付けている。
(1)「CS・苦情システム」構築の背景と目的
従来の苦情対応の事務フローは、苦情対応部署にてMS−WORD版の「お客さまの声受付票」に苦情申立内容・対応経緯・解決内容等を記載し、その都度、社内電子メールで関係部署に報告する、手作業の多い管理手法であったため、苦情の報告漏れや迅速な初期対応が行われていないケースが見られた。
こうした課題を解消し、苦情対応態勢の強化を図ることを目的に、全社の苦情を一元管理・苦情情報が共有化できる「CS・苦情システム」を社内イントラネット上に構築することを、経営会議体である「コンプライアンス・苦情改革刷新会議」および、「業務効率化委員会」に諮り、決済を受け開発を行った。

2.システムの概要
主な機能と特徴は以下の通りである。
(1) 苦情を広く確実に捕捉するために、「CS・苦情システム」の「受付入力」について、部署や役職に制限を設けず全社員が入力可とし、逸早い苦情内容のデータ化、苦情対応部署等の関係部署への伝達を可能としている。
(2) 情報管理の観点から、苦情案件の「更新・照会」は、所属・役職をキーに細かい制御を行っている。
(3) 苦情受付後の初期対応から解決までを迅速・確実に行うために、複数段階の認証を必要とするワークフローを採用し、苦情解決までの厳格な進捗状況管理を実現している。また、認証権限の代理設定機能により、営業・損害サービス部門の第一線の実態に合わせた経過・進捗状況管理を可能とした。
(4) 苦情の管理とともに、不祥事件のおそれのある苦情を確実に捕捉・調査を行い、コンプライアンス担当が認証する機能を設け、法令等遵守態勢の強化を図った。
(5) 第一線にて過去に発生した苦情情報を共有化し苦情の未然防止を図るため、および、本社部門にて商品・サービスの開発に活用するために、検索機能を設けた。代表的な項目による基本検索機能と細かい条件設定が可能な詳細検索機能の2種類により、目的に応じた検索を実現している。
(6) 確実なチェック体制を確保するために、苦情の入力時や解決内容入力・認証時に関係者および次認証者に対して、自動的に通知メールを発信している。さらに毎日夜間バッチ処理により、経過管理や対応の督促のための通知メールを発信している。

3.環境構築・開発
必要とされる性能(1月当たり200,000回のアクセス、1,000件の新規入力、5秒以内のレスポンス)とコストパフォーマンスを考慮し、サーバにはNEC社製Express(OSはWindows2000)を採用した。
基幹となるRDBはSQLServer2000を選択、IISとASPによるWEBアプリケーションとして開発した。
検討開始からリリースまで約3ヶ月という制約を考慮し、これまでのアプリケーション開発実績から判断して選定したものである。
利用権限制御は、ユーザ単位の権限管理ではなく「所属部署」+「役職」によるコントロールとすることで、ロジックの簡素化を図っている。
案件管理項目が200超と多いことからテーブルを5つに分割、各ASPから参照用にビューを作成・活用することでレスポンス向上に繋げている。
苦情発生通知及び進捗管理のためのメール機能はWindows系サーバ及びASPとの親和性からBASP21を採用している。
なお、ドメインに管理者用共通ユーザーを作成し、ODBC経由で各自の社内PCからMS−ACCESS等から参照、ダウンロードするための専用ビューを設けている。
ダウンロードしたデータは今後データマイニングツールの活用等による苦情要因分析を行い、商品・サービスへのフィードバックが期待されている。

4.評価
今回の「CS・苦情システム」の構築によって、全社の苦情が一元管理でき、苦情対応の事務フローが簡素化・明確化された。全国のブロック本部長や部支店長から、「管下の部署にて発生した苦情を定期的に検索し、解決に向けての取り組みを強化している。」「発生した苦情情報を共有化し、苦情発生の未然防止策を徹底している。」と報告されており、全社員の苦情対応に対する意識が向上し、苦情対応態勢の強化が図れた。
また、高い企業倫理や誠実な良心に基づいた企業活動が求められる時代において、不祥事件のおそれのある苦情がシステム的に捕捉され、コンプライアンス特命部長・コンプライアンス推進部が調査・措置内容を確認できる画期的な機能を付加することができた。
苦情を減少させることは、企業活動において永遠のテーマではあるが、継続的に苦情発生の原因分析を経営会議体である「CS委員会」、本社部門、営業・損害サービス部門等の全部門にて行い、最高の商品・サービスをお客さまに提供し、お客さまからさらに支持される企業を目指したい。