Webによる工場基幹システムの構築
−コスト削減と業務改革−

(PDF文書,844KB)


1. 目的
現在、当社は全社的に構造改革プロジェクトの一環としてサプライチェーンマネージメント(以下SCMと呼ぶ)を実施するために取り組んでいる。
期待効果としては、
(1)納期管理の充実化 (2)販売機会ロスの最小化 (3)物流在庫まで含めた全体在庫削減 (4)トータルリードタイムの短縮 (5)ローコストオペレーション 等が挙げられるが、今回は特に生産部分の整備、すなわち生産体制再構築を行うことでSCMの準備を図ることを最大の目的とする。

2. システム概要
当社の国内関連工場約20工場(独自資本〜50%以上の出資工場)では、NEC製オフィスコンピューター(以下オフコンと呼ぶ)によるシステム管理がなされてきたが、アプリケーション自体10数年前に開発したものである為、実際には現在の工場の流れに沿ったものでなく有高管理が中心になっていた。今回は、その10数年前に構築した従来の仕組みを根本から見直し、トータルシステムとして再構築を図った。資本が入っていない工場(以下協力工場と呼ぶ)からは、当社がアプリケーション・サービス・プロバイダー(以下ASPと呼ぶ)としてサービスを提供することで、インターネットを通して利用可能とした。
開発内容としては、生産計画〜材料〜仕掛〜機械装置管理〜売掛買掛〜物流まで個々のサブシステムが完全連動して成り立っており全体のアプリケーション本数は約300本の規模である。
ハード的には、信頼性が高くコストパフォーマンスの優れたExpressサーバがそれぞれWebアプリケーションサーバ・データベースサーバの役割を担っており、ソフト的にはWindowsNTサーバ上でInternet Information Server(以下IISと呼ぶ)− Microsoft Transaction Server(以下MTSと呼ぶ)− Oracle8i の構成である。
基幹系のシステムをすべてWebで構築したのは当社でもはじめての試みであり、色々と苦労した点もあったがその結果として、今後のWebアプリケーション構築の際のノウハウがかなり蓄積された。

3. キーポイント
業務改善・コスト削減・老朽化対策・全社情報共有化をキーワードに掲げ、今まで取扱いブランド・品種に応じて異なっていた全工場アプリケーションの統一化を図った。
業務改善を行った結果、特に帳票に関しては、従来予定していた帳票の半分以上を削減できた。
また、このシステムは次ステップでの海外関連工場導入を睨んで、各国(中国・ベトナム・タイ・インドネシア等)で利用可能なように配慮している。(例えば貿易関連業務や現行海外システムの踏襲、英語化等)

4. 計画
従来のシステム導入後5年経過し、リースアップが近い工場も多数存在し、それを考慮するとキックオフから導入までわずか9ヶ月のタイトなスケジュールを死守しなければならなかった。そのためには要件整理2ヶ月、設計3ヶ月、開発3ヶ月、テスト1ヶ月くらいの線引きでプロジェクト運営する必要があり、それに見合った人材を確保しなければならなかった。当社ではこの経費節減のおり多大な開発費を確保することが困難で、情報システム部門に常駐している他のプロジェクトメンバを一時的に動員せざるを得なかった。
また、必然的にプロジェクト自体もスピードに重点をおき、効率的に運営していくことが任務となった。

5. 評価と今後の課題
5.1 システム全体において
・工場内の個別業務の改革、及びトータル連動システムが実現できた。また、本社との連携、双方向での情報交換、コミュニケーションが積極的に行われるようになった。
・納期情報がリアルタイムに本社から参照できることにより生産管理者の業務改革となった。
・今後は店頭まで情報公開することにより、さらに販売機会ロス削減を図っていきたい。


5.2 開発において
・ Webアプリケーションの開発標準化を行うことにより開発工数がかなり削減できた。
・ 設計ドキュメントはすべてWeb経由で開発者誰もが確認でき、仕様変更やデータベース見直し等に迅速に対応できた。
・ 今後の課題として、さらに各種技術パターン・雛型を整備していき、他のプロジェクトでも効率的に開発できるように取り組んでいく必要がある。

5.3 テストにおいて
・ 現場の方にもテストに積極的に参加してもらうことにより、タイトなスケジュールをクリアすることができた。また、実際の運用に即した形のテストが効率的に行えた。

5.4 教育において
・ 電子マニュアル(概要説明、利用方法、項目説明、エラー発生時の対応方法等)を充実させることにより、各工場ともに全サブシステムで実質3日間という短期間の教育スケジュールで賄えた。
・ マウスをはじめて触る方のために、遊び心を取り入れたJavaApplet等によるマウス練習プログラムを色々と取り揃え、利用者がいち早く上達する支援ができた。
・ 今後の課題として、できるだけ印刷しないで画面確認を徹底し、ISO14001の観点からもさらなる用紙の削減を図っていきたい。

5.5 活用・運用において
・ 各工場サイドで管理者は独自にACCESS、EXCEL等を利用し、従来できなかったデータの参照・加工が可能となり活用範囲が著しく広がった。
・ 現場におけるトラブルを履歴情報として蓄積していたため、類似したトラブルが発生した時に迅速に対応できた。
・ 独自にデータ活用ができない工場で、最低1人システムを理解できる人を育成していくことが今後の課題でもあり、それが情報システム部のシステム維持管理負荷の軽減にもなり、しいてはエンドユーザーコンピューティングの実現になるであろう。

5.6 管理において
・ メンテナンスの度に各工場配信に手間がかかっていたが、アプリケ−ション一斉配信システムを構築(夜間タイマーバッチで全拠点に差分の一斉配信)することでかなり手間が削減できた。
・ 現場からの新たな要望の対応状況もリアルタイムで確認できるようにしたため、電話による進捗状況の問合せがなくなった。