「自動車のインターネット受注生産(BTO)への挑戦」
(PDF文書,926KB)


【要旨】

1.背景と目的
インターネットの普及は、お客様のご要望にあったクルマを、少量でもオーダーに合わせて作るオンデマンド販売への大きなチャンスと弊社では捉えている。昨年1月に開始したインターネット限定車販売などの経験から、インターネットで新車を購入するお客様の特性やニーズについて、以下の3つに集約されることを理解した。

1)商品説明から商談予約申込みまで、お客様が自分のペースで気軽に購入検討ができる。
2)カタログには無い自由な組合わせで"自分だけの仕様"を購入できる。
3)必要な装備のみ選択できるため、欲しい仕様のクルマをお求めやすい価格で購入できる

また、高額で各種公的手続きが必要とされるクルマの販売モデルはメーカ直販ではなく、販売店を通すことでお客様に安心して購入いただけると考えた。その為のシステム化にはWebと販売店との連携フォローが必須であった。
このような検討経緯を経て、2000年10月、国内自動車業界初のインターネット受注生産(BTO)プロジェクトが開始した。このプロジェクトは、商談までの販売店が行っている機能をWeb上でバーチャルに実現するという試みであった。具体的には、車両カスタマイズ、販売会社への見積もり請求とその回答、クレジット審査、下取り車の簡易査定、商談申込み、ご購入後の車両納期照会、販社見込客フォロー支援の機能がある。この機能の多さに加え、仕様検討を含め3ヶ月という超短期開発が求められた。これは、われわれIT部門にとって大きな挑戦的課題であった。

2.システム概要
本システムは、お客様へのレスポンスを確保するためBIGLOBEのデータセンタを活用した。センタと弊社間は専用線でつなぎ、社内システムのセキュリティを確保するためデータ通信はアクセスコントロールサーバを介して間接的に行うようにした。データセンタにはDBサーバ、Webサーバ、コンテンツやプログラムの履歴管理サーバを設置した。今回のシステムの機能を提供する上で、レスポンスを向上するために車両のカスタマイズ部分はクライアント側で処理し、その他の多くの機能は、サーバ側で処理する3層構造モデルでシステム機能を実現した。

3.キーポイント
3.1 インターネットを利用したシステム共同開発環境の整備
本システム開発を3ヶ月で実現するには、コンテンツ制作会社やソフト会社とのインターネットを利用した共同開発が不可欠であった。弊社では、お客様向けWebコンテンツを過去のいかなるバージョンでも復元できるようにCVS(Concurrent Version System)を採用し共同開発におけるソース管理に活用するとともに、Webリソースを直接編集しないことを開発者に徹底し、高効率な開発を実現した。

3.2 カスタマイズ機能の実現
車両のカスタマイズ機能をビジュアルに表示させるために、JavaScriptとスタイルシートを活用し、イメージの重ね合わせや先読みを行い、カスタマイズ時のレスポンス向上を図った。

3.3 生産・物流・販売システムとの連携  
生産・物流システムと連携して、お客様への納期照会の機能を提供するとともに、販売システムと連携して担当営業者がすぐにサポートできるような体制整備を行った。

3.4 顧客行動分析  
Web上に蓄積される大量のデータの中から、データマイニング技術により、お客様の行動分析やサイト評価に活用できるようなログ取得方法を検討した。

4.計画  
本システム開発に当たり、全社横断的なプロジェクト組織が発足し、運用整備、データ整備、システム開発が以下のように並行して走った。
1) Webデザインを含む仕様検討(2000年11月)
2) ネット上でお客様のニーズを再確認するためのアンケートを実施
3) ロードスター4160機種×8色、ファミリアSワゴン912機種×7色の販売車種マスタデータの整備(2000年12月)
4) 車両のカスタマイズに必要な画像準備(2000年12月)
5) システム機能開発(2000年12月〜2001年1月の約2ヶ月間)
6) 全国7ヶ所で販売店教育を展開(2001年1月)
7) 東京・広島にてパブリシティ開催(2001年2月1日)
8) Webサイト公開(2001年2月2日)

5.評価
本システム開発中にブラウザ問題やレスポンス問題が起こり、大きな仕様変更が発生したが、納期通り開発が完了した。サイト公開後は安定稼動を続け、国内自動車業界初ということもありメディアの反響も大きく、お客様からも稼動後2ヶ月でアクセス者数25万人、見積請求件数2600件と好評である。今後は、お客様からの要望が高い3Dコンテンツなど、さらに最新技術を駆使したWebサイトを構築し、お客様により一層魅力あるサービスを提供していきたい。